一部の人だけのものではない 目指せ日本型テレワークサイボウズ流の働き方(1/3 ページ)

時間や場所にとらわれない働き方「ウルトラワーク」を実践するサイボウズ。同社とは異なるアプローチでテレワークを実践する企業での取り組みを、サイボウズのフェローを務める野水克也氏が取材した。

» 2013年04月04日 08時00分 公開
[野水克也,サイボウズ]

 前回までは、サイボウズ自身のワークスタイルを紹介してきましたが、最終回はサイボウズとは違うアプローチで時間や場所にとらわれない働き方を実践している会社の例を紹介してみたいと思います。今、日本でテレワークに関してもっとも詳しいと思われるテレワークマネジメント代表取締役の田澤由利さんに話を聞いてきました。

 田澤さんは、1998年にネット上でテレワークを使って仕事をする会社「ワイズスタッフ」を立ち上げ、テレワークでの仕事方法を確立してきました。そのノウハウを伝えるコンサルティング会社「テレワークマネジメント」も設立し、2社の代表として会社を取り仕切りながら、総務省や厚生労働省を始めとするテレワークなどに関する委員やアドバイザーとしても活躍しています。まさに日本のテレワークの第一人者です。

 筆者は田澤さんの会社でサイボウズ製品を使っているという御縁から知り合いになり、今回は一週間に1000キロ近く移動する猛烈なスケジュールの合間を縫ってインタビューの時間をいただきました。

ワイズスタッフおよびテレワークマネジメントの代表取締役を務める田澤由利さん(写真右)。「総務省 地域情報化アドバイザー」「北海道総合開発委員会参与」「北海道教育委員会委員」「北海道労働局雇用均等行政推進員」「奈良県 こども・子育て応援県民会議委員」など公職も多数務める。写真左はテレワークマネジメント東京オフィス所属の黒羽充さん

 ワイズスタッフは、海外を含む全国各地のテレワーカーであるスタッフ約150人とともに、50以上のプロジェクトを同時に運営しています。近年ではテレワークマネジメントを通じて、テレワークの普及啓蒙活動を続けています。女性はもちろん、地方在住者、高齢者、障がい者も「ネットで働ける社会」の実現をライフワークとしています。


野水 もともと「テレワーク」という時間や場所に縛られない働き方を田澤さんは啓蒙されてきたわけですが、近年のワークスタイル変革ブームで「ノマドワーカー」とかいろんな用語が出て来ましたね。

田澤 ちょっと整理してみましょう。国によれば、テレワークの定義は、「ITを利用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」となっていますが、これは相当に範囲が広いんですね。整理してみると、会社に勤務しながら働く「雇用型」と、自分で仕事をしている「自営型」に分かれ、さらにそれぞれが移動して働く「モバイル型」と、移動しにくいため家で働く「在宅型」に分かれます。

 ワイズスタッフは自営型テレワーカーを取りまとめてプロジェクトチームで業務をする会社で、テレワークマネジメントは雇用型テレワークのコンサルティングをする会社です。テレワークマネジメントの場合、社員の8割が在宅型テレワーカーです。そして、場合によっては移動しながら働く場合もあります。

(資料提供:株式会社テレワークマネジメント)

 勤務時間や場所にしてもバリエーションはたくさんあって、ずっと在宅で働く人もいれば、事業所で常勤という人もいます。たまに会社に来る人ももちろんいるわけです。時間にしても、短時間だけ働く人もいれば、9時から6時のフルタイムの人もいますし、時間帯の拘束ではなく細切れに都合のいい時間に働いて、合計で時間計算するほうがいい人もいます。

野水 つまり、事業所勤務と在宅勤務という極端な分け方ではなく、クラウド上のネットオフィスを使って、場所と時間は自由だけど、普通の会社と同様の仕事をしようという感じなのですね。

田澤 はい。例えば、コンサルティングの場合はクライアントのもとに実際に行くのは一日に2時間だけということがあります。それ以外の資料作成とかアポイントなどの段取りは、在宅勤務でもできてしまうわけです。コンサルタント業だからテレワークが無理というのではなく、コンサルティングの仕事の中でも、在宅でできる仕事は多いので、役割分担をしてチームで動けるような体制を作れば、普通の会社と何ら変わりなく働けますね。

野水 テレワークマネジメントは特別なものではなく、普通の会社と同じということですか。

田澤 テレワークの話になると、「これからは自由な時代になって、自分の実力で生きる」という論調になりがちなのですが、実は弊社の場合は逆でして、距離が離れていてもマネジメントはしっかりできるということを目指しています。

 たぶん仕事ができる人は、離れていても、そうでなくても仕事も自分もマネジメントできるのですが、10人のうちテレワークでバリバリ仕事できる人が2人だけで、それ以外の人たちがテレワークをできなかったら、会社としての総合力がダウンしますよね。

 10人のうち10人がテレワークであっても、ちゃんとマネジメントできる会社にしていれば、広く人材を確保できるだけでなく、災害などで全員が出社できなくても、いつものように事業を継続できます。テレワーカーを管理することで、最終的にはメリットを受けることができると考えています。

 テレワーカーの管理は一見面倒そうですが、今は業務予定の共有、成果物の管理、勤務時間管理、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」などをリアルコミュニケーション以上にガチガチでやっています。それをいかにスムーズにするかがテーマです。在宅勤務者がいるからといって、管理者の負担が増えては本末転倒です。

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