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» 2013年07月02日 08時00分 UPDATE

情シスの横顔:ビジネス成長の足かせではなく牽引役に DeNA・清川さん

世界10カ国以上で事業展開するDeNAは、グローバル全体でネットワークなどのシステム統合を図っている。そのプロジェクトリーダーとして奮闘するのが清川さんだ。

[伏見学,ITmedia]

企業の情報システム部門の現場で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー

 海外拠点の設立や現地企業とのパートナー提携など、ここ数年でグローバル展開を加速させているディー・エヌ・エー(DeNA)。それを情報システムの側面から支えるべく日々奮闘しているのが、経営企画本部 IT戦略室の清川哲也さんだ。

 清川さんは2009年9月にDeNAに中途入社。学生時代に航空関連の勉強をしていたことから、卒業後は航空会社系列のシスステム会社に入り、カスタマーエンジニアとして約4年間勤務した。その後、「IT分野に進みたい。特にこれからはモバイルだ」という思いから転職を決意、モバイルのWebサービス会社で情報システム担当として働くこととなった。

 ただし、ITの仕事は初めての経験。この会社のメインサーバはLinuxで動いていたが、これまでUNIXマシンを触ったことがなかったことに加え、一から丁寧に教わるような職場環境ではなかったため、先輩エンジニアの技術を目で盗んでスキルを身に付けていった。そして3年後、新たなフィールドを求めてDeNAへ入社した。

グローバル全体でシステム統合を進める

DeNA 経営企画本部 IT戦略室の清川哲也さん DeNA 経営企画本部 IT戦略室の清川哲也さん

 いわゆる情報システム部門にあたるDeNAのIT戦略室は、現在60人程度のスタッフが所属していて、その中で大きくOAチーム、戦略チーム、開発チームの3つに分かれている。OAチームは、社内PCのヘルプデスクやトラブルシューティングなどを担当、開発チームは、社内向けのITツール作成などを担当する。清川さんがいる戦略チームでは、新しい業務のスキームを作ったり、方針を立てたりと、主にプロジェクトマネジメントを行っている。「最近は海外拠点とのやり取りだったり、今後のDeNAのITをどうしていくのかだったりといった戦略的な面での仕事が増えています」と清川さんは話す。

 清川さんが入社して最初に携わったプロジェクトが、メールサーバのリプレースである。約10台のメールサーバを構築したというが、「実はちょうど今、自ら作り上げたそのメールサーバを壊しているんです」と清川さんは笑う。Googleのメールサービス「Gmail」を導入し、どこからでもアクセスできるようなメールシステム環境にシフトしているのだという。これまではあらゆるシステムをオンプレミスで運用していたが、徐々にクラウドへの移行を進めていて、メールサービスの採用もその一環というわけだ。

 そうした中で、2012年9月からメイン担当として携わっているプロジェクトが、海外拠点とのシステム統合である。具体的には、海外子会社とのネットワーク統合や業務フローの統一などだ。

 今までは各拠点でまったく業務が異なっていたため、別々のシステムを利用し、セキュリティなどのレベル感もバラバラだったという。「そこでグローバル展開を推進するためにも、最低限守るべき指針をIT戦略室で策定し、それを海外拠点に広げています」と清川さんは述べる。実際に海外拠点に行かないとシステム設定できなかったり、そもそもなぜ必要なのかという主旨を現地スタッフに説明する必要があったりするため、清川さん自身も韓国や米国、シンガポール、カナダ、中国など、世界を飛び回っている。

 このプロジェクトにおいて苦労している点は「文化の違い」だという。これまでのDeNAは外国人が少ない環境だったので、日本の価値観に基づいて業務設計や業務プロセスを作ればよかったが、グローバルでシステムを統合する上では、さまざまな国の文化の違いをすり合わせて、1つにまとめていくことからスタートしなければならない。清川さんは「思ってもみない質問や発想が出てきますし、どうしてそれをやるのかという認識合わせをしなければなりません」と話す。その中で心掛けているのは、いかに個々のポイントをシームレスにつないで相乗効果を生み出し、ビジネスを加速させていくかだという。

固定観念を捨てよ!

 これまでの経験を通じて、プロジェクトを円滑にマネジメントするためにこだわっていることは何だろうか。清川さんは「ユーザー視点で物事を見ることが大切です」と強調する。例えば、システム導入に関してどうしてもIT管理者目線になりがちで、自分が絵に描いたものを想像してしまう。しかし、システムを入れても、ユーザーはこちらが意図した使い方をしていなかったり、思ったほど業務効率が上がっていないことはよくある。「どれだけユーザー視点で物事を考えられるか、実際にシステムを使う人たちと密にコミュニケーションをとり、彼らが本当に求めているものは何かを深堀していくことが重要なのです」と清川さんは言う。

 ただし、ユーザー視点といっても、そう簡単に身に付くものではない。どのような工夫をしているのか。

 「IT戦略室にはヘルプサポート部隊もいるので、ユーザー部門からの課題を吸い上げる仕組みが整っています。ただ、ユーザーが困っていることを単にそのまま解決しても根本的な改善にはなりません。そもそもの業務プロセスを見直す必要があるかもしれません。ですので、何らかの要望をユーザーからもらうと、その根本原因をIT戦略室ではしっかり考えて、こちらから新たな提案するようにしています」(清川さん)

 このように、自らが仕掛けていくような動きがDeNAのIT戦略室に求められているのである。「攻めのITを推し進めていくべきだと考えています。DeNAのビジネスそのものがどんどん外へ向かって広がっているので、情報システムがその足かせになってしまってはいけないのです。よりビジネスを加速させられるシステムを提供する必要があります」と清川さんは力を込める。

 そうした際に重要なのは、固定観念にこだわらないことだという。業務スキームを一度作りあげてしまうと、同じことをルーチンのように繰り返してしまいがちだ。しかし、それが本当に必要とされているものなのか、まったく無駄がないのかなど、常に原点に立ち戻って考えるべきだとする。

「1年前に最適解だったものが、現在では時代遅れになっていることはよくあります。特にビジネススピードの速いDeNAではそうしたことが多々あります。システムを構築した側からすると『えー!?』と思うこともありますが、それを壊して結果的に事業が成長の軌道に乗るのであれば、柔軟な考えを持って最大限バックアップすべきだと思います」(清川さん)

新しい働き方の舞台を整える

 これから先、DeNAの中でどのようなことに挑戦していきたいのか。清川さんは「働き方そのものをがらりと変えたい」と意気込む。

 今後さらにクラウドサービスが普及し、デバイスフリーになれば、PCがなくても仕事ができるようになる。このようにワークスタイルが変われば、会社という場所の概念もなくなり、どこでも便利に仕事ができると考える。「そのための仕組みや環境を先行して用意しておけば、然るべき時にすぐ使うことができます。DeNAのビジネスが次のステージに移るときにもスピード感をもってITが対応できるのです」と清川さんは展望を語る。

 IT戦略室がDeNAの事業成長を下支えし、リードしていく。そのためにも清川さんのさらなる活躍が不可欠なのだ。

「今や企業においてITは水道みたいなもの。あって当たり前で、それ自体に感動されることはありません。ただ、それだけ必要とされているものだし、会社の事業スピードや働き方を刷新できる力を持っています。情シス部門は世界中のどの会社にとっても重要なのです」 「今や企業においてITは水みたいなもの。あって当たり前で、それ自体に感動されることはありません。ただ、それだけ必要とされているものだし、会社の事業スピードや働き方を刷新できる力を持っています。情シス部門は世界中のどの会社にとっても重要なのです」

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