「デジタル化」で拍車がかかる顧客接点の争奪戦、それを勝ち抜くためのITインフラとは?(1/2 ページ)

ビジネスのデジタル化に伴って、情報システム部門への期待は、いやがうえにも高まっているが、取引を処理し、確実に記録してきた従来の情報システムとは大きく異なる要件が求められるだけに厄介だ。一斉に始まった顧客接点争奪戦を勝ち抜くためのITインフラとは?

» 2013年07月31日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 P.F.ドラッカー博士はその著作の中で「顧客はだれか?」と問うているが、これまでは一般消費財メーカーであっても必ずしも最終消費者がよく見えていたわけではない。だからこそ、コンビニエンスストアが良い例だが、POSデータなどによって狭い商圏ごとに顧客の嗜好をつかんでいた川下の小売りが、その長けた商才を生かす余地があった。

 しかし、いわゆる「デジタル化」によって、およそすべてのビジネスは大きく様変わりしようとしている。「モバイル」や「ソーシャル」の浸透は、日々、膨大な顧客の声を生み出しており、人の気持ちが瞬く間に大きなうねりとなって伝播する社会インフラが出現したといっていい。

 こうした仕組みや「ビッグデータ」を上手く生かすことができれば、メーカーも顧客と直接つながり、しっかりとした関係を構築することもできる。川上から川下というバリューチェーンがすぐになくなることはないだろうが、それぞれのプレーヤーによる顧客接点の争奪戦が一斉に始まっている。

 建設機械や工作機械のメーカーもデジタル化と無縁ではない。センサーデータを活用して、故障の予兆をつかみ、効果的なメンテナンスを行うことで競争力を高めている例はよく知られている。

顧客との緊密な関係を構築する「Systems of Engagement」

システム製品事業部門でSoftware Defined Systems戦略を統括するジェイミー・トーマスGM。ネットワークソフトウェア、WebSphere、Rational、Tivoliなど、一貫してIBMのソフトウェア事業に携わる

 ビジネスのデジタル化に伴って、情報システム部門に対する経営陣や事業部門の期待は、いやがうえにも高まってくるが、何しろユーザー数が桁違いに多いし、データも膨大かつ多様で更新頻度も高い。取引を処理し、確実に記録してきた従来の情報システムとは大きく異なる仕組みが求められている。記録に重きを置いた従来の情報システム「Systems of Record」に対して、顧客との緊密な関係を構築するための新しいシステムは「Systems of Engagement」と呼ばれている。

 先週、都内のホテルで「IBM Smarter Computing Forum 2013」を開催した日本アイ・ビー・エムは、従来とは要件の異なるワークロードを効率良く処理できるITインフラストラクチャーの重要性をアピールした。

 「既存のITインフラでは、モバイルやソーシャルといった新しいワークロードについていけない」と話すのは、IBMでITインフラ変革へのアプローチ、「Software Defined Environment」(SDE)戦略を統括するジェイミー・トーマスGMだ。

 ネットワークの分野から始まった「ソフトウェアによって制御・管理する」というSoftware Defined構想は、ベンダー各社がぶち上げているが、IBMのそれは、より包括的であるという点でユニークだ。

ITインフラを抽象化、プログラミングで制御・管理を自動化

IBMのSDEはITインフラの管理簡素化と即応性を高める新たなアプローチ

 「企業の多くのITインフラは、事業部門ごと、アプリケーションごとに固定的に割り当てられ、サイロ化されている。これをワークロードごとに臨機応変に割り当てられる共通の資源に変えていき、その管理も自動化する必要がある。こうした取り組みは、これまでにもメインフレームをはじめ、さまざまに取り組まれてきたが、SDE構想は最先端のテクノロジーに基づく新たなアプローチだ」(トーマス氏)

 プロセッサだけの仮想化にとどまっていたり、たとえストレージやネットワークも丸ごと仮想化できていても手作業で制御・管理していては、やはり即応性に欠けてしまう。仮想化によって抽象化されたIT資源全体をプログラミングによって制御・管理を自動化しようとするのが、Software Definedの本質だ。

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