ITインフラの分野では、オープンなクラウド基盤を実現すべく、オープンソースソフトウェアとして「OpenStack」の開発が進められており、制御・管理のための業界標準APIも策定されている。OpenStackの開発やライセンスの管理は非営利団体のOpenStack Foundationで行われており、IBMも設立メンバーとして250人を超える社員が取り組むほか、Hewlett-Packard、Dell、Red Hat、Cisco Systemsといった170社を超えるベンダーが参加している。
「顧客のデータセンターは、ほとんどの場合、異種混在環境だ。IBMはOpenStackの開発に貢献し、より幅広いハイパーバイザー、ストレージ、ネットワークが連携できるオープンなクラウド環境を推進していく。それがわれわれのアプローチだ」とトーマス氏は話す。
IBMのSDE構想は、それだけにとどまらない。制御・管理を自動化するためには、アプリケーションのパターンとそれを稼働させるインフラのパターン、そして運用のポリシーなども記述されている必要があるからだ。
「ワークロードに最適なシステム構成や運用ための非機能要件などは、多くの場合、専門家の頭の中にある。これらをベストプラクティスとして抽出し、改善を重ねながら組織のナレッジとして蓄積していかなければならない」とトーマス氏。
通常、システムは複数のサーバを組み合わせて構築される。そのトポロジー情報や、負荷分散、自動拡張/縮退といった運用のための情報も、できれば標準的な手法で記述する必要がある。そうでなければ、クラウドをまたがる移行のハードルが上がり、顧客が最も嫌う「ベンダーロックイン」につながってしまうからだ。IBMは、こうしたアプリケーション層の「パターン」の記述では、OASIS TOSCAの標準規格策定に取り組んでおり、これに準拠したオープンなクラウドの構築と運用の自動化を支援する製品もいち早く発表している。
トーマス氏は、「われわれは、より多くのハイパーバイザーやストレージ、ネットワークをサポートするだけでなく、開発、テスト、限定運用、本格稼働というワークロードのライフサイクルにも着目し、顧客がパブリッククラウドの活用も含めた、ITインフラとワークロードの真の意味での最適化を図れるよう多くの時間を費やしてきた」と話す。
もちろん、多くの企業が、パターンと柔軟なITインフラの動的な組み合わせという理想郷へ今すぐ到達できるわけでない。ITインフラと同様、それを運用する情報システム部門の組織もサイロ化されているからだ。まさに「長い旅路」(Long Journey)だ。
「組織の変革は避けては通れない。先ずは、開発と運用の連携を深めていくDevOpsに取り組むのもいい」(トーマス氏)
モバイルやソーシャルでは不特定多数の顧客をユーザーとするため、Software Definedの出番となる。こうした新しいアプリケーションでは、いわゆる「要件定義」が難しいからだ。やや乱暴だが、仮説に基づいて取り敢えずコストを抑えつつサービス提供を始め、ユーザーの反応を見ながらより良いものへと短いサイクルで改善していく方が、ユーザーや市場のニーズをつかみやすい。
「システムごとに、さらにはストレージやネットワークに細分化されていた運用管理者を仮想化されたIT資源として統合的に管理できるように組織を見直すアプローチもある」
運用管理者のスキルアップにもつながるため、組織の変革としては取り組みやすい。
「今後は、ソフトウェアによって定義されたITインフラやクラウドに責任を持つ、新しい役割を担う人を任命することも企業は検討していくべきだろう」とトーマス氏は話す。
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