クラウドにオープンスタンダードを取り入れるIBM その狙いとは?

IBMは3月、クラウドサービスとクラウドソフトウェアにオープンスタンダードを採用すると表明した。その狙いや背景を日本IBMが説明。IaaSやPaaSにおける「オープン・クラウド」を推進するという。

» 2013年05月13日 20時04分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米IBMが3月4日に開催した年次カンファレンス「Pulse」の中で、次世代プラットフォーム担当CTO & GMのダニエル・サバー氏が、「クラウドサービスとクラウドソフトウェアにオープンスタンダードを採用する」と表明。その狙いや背景について、日本IBMが5月13日にメディアや業界アナリスト向けに説明した。

「オープン・クラウド」について説明する日本IBMの紫関昭光氏

 スマーター・クラウド事業部 理事 クラウドマイスターの紫関昭光氏によると、3月の表明の意図は、IBMのクラウドサービスにおいてオープンソースソフトウェア(OSS)を実装し、原則としてオープンソースのアーキテクチャに則ったものにしていくという。サバー氏は、カンファレンスの場で同社のIaaSにOpenStackを採用していくとも表明した。

 紫関氏は、その背景について主要なIaaSやPaaSのクラウドサービスにおいて、「サービス間のインターオペラビリティ(相互運用性)が確保されていない」ことがある。IaaSではある程度の利用モデルが定着しつつあるものの、企業がクラウド利用の本命とするPaaSによる業務アプリケーションの運用については、クラウドサービス側でAPIの公開などがほとんど進んでいないため、事業者にロックインされている状況という。

 「企業はクラウド環境でシステムをスモールスタートで利用し、利用規模が大きくなれば、プライベートクラウドなどの移したい、あるいは、開発から本番実装までのサイクルを早く回して、サービス拡充のスピードを速めたいと考えている。だが、相互運用性が確保されていないことでそれが難しい。オープンな仕組みを取り入れていく必要がある」(紫関氏)

 IBMは、同社のクラウドサービスにおいてOpenStackのほかに、DMTF OVM、OASIS TOSCA、OSLC/W3C LDP、OMG CSCCといったオープンな標準技術を推進する。

IBMが考える「オープン・クラウド」のメリット

 特にOASIS TOSCAは、PaaSに関する標準技術として、OASIS TOSCA テクニカル・コミッティーから3月に最初のバージョンがリリースされた。OASIS TOSCAではシステム全体の構成を示す「トポロジーテンプレート」と仮想マシンなどの構成を示す「ノードタイプ」から成る「サービステンプレート」によって、異なるクラウド環境へのシステムの実装、展開を容易にできるという。また、クラウド環境を管理するためのツールもサービスによって異なるが、OSLC/W3C LDPでの「Linked Data」を活用することで、ツールの差異を吸収できるようにしていくとしている。

 IBMは、5月からOpenStackへの対応を進めていくとしており、既に上述の標準技術の一部を導入して、同社のパブリッククラウドサービスやプライベートPaaS環境の基盤製品「IBM PureApplication System」との間で、アプリケーションシステムのインターオペラビリティを実現している。

IBMにおける「オープン・クラウド」の利用イメージ

 紫関氏は、PaaSのパブリックサービス市場ではいまだ主導権を握るサービス事業者が出現していないとみており、同社の表明が早期にサービス事業者間に広がることを期待する。だが、サービス事業者によってはPaaSを収益源と位置付けているところもあり、IBMの表明がどの程度受け入れられるかは不透明だ。「事業者によっては当社の考えにメリットを感じてくれるところもある」と紫関氏。PaaSに対するユーザー企業のニーズの高まりが、IBMの表明の支持につながるかどうかが鍵となりそうだ。

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