Oracleの新サーバをめぐる2つの疑問Weekly Memo

日本オラクルが先週、新UNIXサーバを発表した。この動きには2つの疑問が浮かび上がる。その疑問とは。そして米国本社の製品戦略責任者が語った回答とは――。

» 2013年10月28日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

Oracleが半年でハイエンドサーバを刷新

 日本オラクルが10月23日、UNIX OS「Oracle Solaris」が稼働する「SPARC」プロセッサ搭載サーバ製品群の新モデルで、ハイエンド向けの「SPARC M6-32」サーバおよび同サーバをベースにしたエンジニアドシステム「Oracle SuperCluster M6-32」を国内で販売開始すると発表した。米国では9月下旬に開かれたプライベートイベント「Oracle OpenWorld」で発表されたものである。

 SPARC M6-32サーバは、前世代より処理性能を2倍に向上させた「SPARC M6」プロセッサを最大32個搭載し、最大32テラバイトのメインメモリを搭載。前世代機種とほぼ同等の価格ながら、アプリケーションとデータベース全体をインメモリで実行可能としたため、処理性能を大幅に向上させることができるとしている。

 また、Oracle SuperCluster M6-32は、Oracle Databaseの性能に最適化された「Exadata Storage Server」をSPARC M6-32サーバと統合しており、他社の競合製品と比較して5倍の価格性能比を実現しているという。

 会見に臨む米Oracleシステム製品戦略担当のデイビッド・ローラー シニアバイスプレジデント 会見に臨む米Oracleシステム製品戦略担当のデイビッド・ローラー シニアバイスプレジデント

 米国での発表に続いて日本市場でも満を持して販売を始めたM6サーバだが、この動きには2つの疑問が浮かび上がる。そこで、来日して発表会見に臨んだ米Oracleのシステム製品戦略を担当するデイビッド・ローラー シニアバイスプレジデントに、その2つの疑問を投げ掛けてみた。

 まず1つ目の疑問は、前世代機種である「SPARC M5」サーバが投入されてからおよそ半年しか経っておらず、ユーザーに混乱を与えかねないのではないか、ということだ。例えば、既にM5サーバを購入または注文したユーザーが、半年後に処理性能が大幅に向上した次世代機種が出たと知れば、誰しも怒り出すのではないか。

 ローラー氏はこの点について、「M6サーバの投入時期が前世代のM5サーバから半年後にすぎないというのは、当社としても計画より開発が早まったところがあるが、商品化できるのなら早くやろうということで決断した。M5サーバを購入または注文いただいたお客様には、M6サーバと筐体が同じなのでご要望に応じて中身をM6サーバにしていただくこともできる」と説明した。

 ただし、「内部構造の違いからM5サーバのほうがM6サーバより向いている用途もあるので、そこは用途別にきちんと説明してご理解いただけるように努めていきたい」とも語った。

 M6サーバの投入は、競争の激しいハイエンド市場でさらなる攻勢に打って出たいとのOracleの思惑が見て取れる。ただ、矢継ぎ早の製品投入でユーザーに混乱を与えないことが大前提となる。

どうなる?Oracleと富士通の協業関係

 そして2つ目の疑問は、Oracleにとってグローバルアライアンスパートナーである富士通との関係である。日本オラクルがこの日発表したM6サーバの主要販売パートナーの中に富士通の名はなかった。富士通は3年前にOracleが買収したSun MicrosystemsからSPARC/SolarisサーバのOEM供給を受け、長年にわたって国内で販売してきた。そうした関係に変化があったのか。

 実は、この話は今年1月に遡る。富士通が1月中旬、ハイエンド向けUNIXサーバ「SPARC M10」を発表した。同製品は従来の「SPARC Mシリーズ」の後継として、富士通とOracleの協業関係を象徴するものと見られていた。ただ、富士通主導で製品開発を行ったことから、発表時点では国内向けを先行し、グローバルの販売展開についてはOracleと調整を進めているとしていた。

 その調整の結果が明らかになったのは4月10日。両社ともにSPARC M10を「Fujitsu M10」の名称にして全世界で販売活動を始めると同時発表したのだ。ただ、日本国内ではその後も富士通がSPARC M10の名称のまま販売を続けている。

 一方、Oracleはこの時期、富士通との協業とは別に、自社の戦略製品としてミッドレンジ向けの「SPARC T5」とハイエンド向けの「SPARC M5」の両サーバを投入した。日本では日本オラクルが4月16日に発表したが、この時既に富士通の名は主要販売パートナーの中になかった。

 こうした経緯を踏まえると、どうやらOracleからすると、Fujitsu M10はSPARC Mシリーズの後継とは位置付けておらず、自らは富士通が開発した製品の販売パートナーに徹するとの立場のようだ。それでも富士通にとっては、Fujitsuブランドの製品をOracleのグローバル販売網を通じて広げられる可能性がある。ただ、ユーザーから見ると、同じハイエンド向けサーバであるSPARC M5とFujitsu M10の位置付けがよく分からないままだ。さらに富士通が日本でSPARC T5/M5をどう扱うのか、もしくは扱わないのかも、はっきりしないままだ。

 そうして半年が経ち、Oracleが「M6」サーバを投入する形となった。そこで、日本オラクルの会見でローラー氏に「M6サーバとFujitsu M10はどちらが高性能なのか」、そして「富士通との関係に変化があったのか」と聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

 「どちらが高性能かは、ワークロードによって違ってくるので一概には言えない。当社としては常に最高性能のサーバを提供できるように努めている」

 「富士通とはグローバルでの強力なパートナー関係にあることに変わりはない。Oracleでは自社製品と同様、Fujitsu M10もグローバルで販売している。ただ、日本市場ではそれぞれ自社製品に注力しているのが現状だ。両社でSPARC/Solarisサーバを広げていければと考えている」

 日本オラクルの幹部によると、「富士通との日本での製品の取り扱いについては引き続き調整中」とのことだが、どうやら、かつてのように富士通がOEM販売することはもうなさそうだ。果たしてOracleと富士通の関係は今後どうなっていくのか。

 9月下旬に米国で開かれたOracle OpenWorldでは、富士通の豊木則行 執行役員常務が基調講演を行い、Fujitsu M10のセールスポイントやロードマップも示した。また、山本正已社長もビデオメッセージでOracleとの二人三脚ぶりを強調した。こうした“特別扱い”からすると、両社の緊密なパートナーシップは健在のようだ。この関係をどう生かすか。両社の知恵が試されている。

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