ビッグデータ時代のICT基盤「M10」、Oracleと富士通の野心的プランが進行中Oracle OpenWorld San Francisco 2013 Report

6万人が参加する過去最大のOracle OpenWorld San Francisco 2013が開幕した。オープニングキーノートにトップバッターとして登場したのは昨年と同様、富士通だった。「Oracleと協力し、野心的なプランが進行している」と同社の豊木常務は話した。

» 2013年09月23日 17時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
ハワードストリートに特設された巨大なパーティー会場

 まだ残暑が続く東京からサンフランシスコを訪れると、薄着のせいか湾から吹く風が冷たい。陽が傾いてくると厚手の上着が欠かせない。米国時間の9月22日、今年で19回目となるOracleの年次カンファレンス、「Oracle OpenWorld San Francisco 2013」が夕暮れのモスコーニセンターで幕を開けた。例年と同様、モスコーニの北館と南館の間を通るハワードストリートを閉鎖、巨大なパーティー会場が特設され、世界各国からの参加者を出迎える。その数は昨年の2割増し、6万人に上るという。ダウンタウンの主なホテルはソールドアウト、全米有数の観光地も今週はOracleの派手なコーポレートカラーに彩られた真っ赤なバナーが至るところに掲げられている。

 「Oracle OpenWorldのためならほかのストリートも閉鎖したってかまわない」と話すのは、オープニングにゲストとして招かれたサンフランシスコ市長のエドウィン・リー氏。このカンファレンスの経済効果は1億2000万ドルに上ると見積もられている。

 19世紀半ばに始まった歴史あるヨットレース、アメリカスカップでも幸先の良いニュースが会場に飛び込んできた。前回覇者としてニュージーランドチームの挑戦を受けるオラクルチームUSAはここまで苦戦が続いてきたが、この日の午後、サンフランシスコで行われた2つのレースに連勝、Oracle OpenWorldの開幕に花を添えた。

ビッグデータ時代のFujitsu M10

 夕方から行われたオープニングキーノートにトップバッターとして登場したのは昨年と同様、富士通だった。同社は、旧Sun MicrosystemsのSPARCアーキテクチャーに基づき、さらにメインフレームで培ったRAS(信頼性、可用性、保守性)技術を盛り込み、SPARC64の開発を1990年代半ばにスタート、昨年には区切りの10世代目にあたるSPARC64 X(コードネーム:Athena)をOracleの協力を得ながら開発した。これをベースとした新しいSPARC/Solarisサーバも今年1月に「SPARC M10」としてデビュー、4月からは「Fujitsu M10」の名称でOracleも世界市場で販売している。

 M10では、RAS技術やスーパーコンピュータ「京」でも実証済みのパフォーマンス、最大1024コア/64テラバイトメモリまで本番稼働のまま柔軟にスケールできる拡張性に磨きが掛けられただけではない。富士通はSPARC64 Xにソフトウェア処理をハードウェアでアシストする機構を組み込み、モバイルやソーシャルメディア、さらにはセンサーデータのような、膨大かつ多様な「ビッグデータ」も効率良く処理し、「洞察」を得るための強力なICT基盤の構築を目指している。

富士通の豊木常務

 昨年に続いてステージに上がった富士通の豊木則行常務は、コンピュータで50万局を分析し、駒が形作る三角形に着目するという斬新なアプローチでプロ棋士を打ち負かした日本の将棋を引き合いに出しながら、「ビジネスはさらに複雑だが、ゴールは同じ。競合に打ち勝つことだ。価値あるデータを見つけ出すことができれば、例えば、精度の高い需要予測を基に製造や販売を行い、在庫も適正化できる」と話す。

 Oracleとの戦略的な協力体制で進められた、いわゆる「Software on Chip」では、「Compare」「Copy」「Crypto」「Hash」「Oracle Number」といったデータベース処理がハードウェアでアシストされ、Oracle Database 12cの最新パッチセットでは25%以上の性能改善が図られるほか、この日、Oracleが発表した、Row型とColumn型を最適に組み合わせた新しいインメモリオプションではさらに飛躍的な性能向上が期待できるという。

 豊木氏とともにステージに上がったOracleのデータベースサーバテクノロジー担当SVP、アンディ・メンデルソン氏は、「これまで新しいテクノロジーが登場するとそれに伴いデータベースも進化してきたが、大切なことはアプリケーションはそのまま性能向上を享受できるということ。インメモリを活用することこそ、データベースの次の未来だ」と話す。

システム間でメモリ共有できるSPARC64 X+

 富士通も8月下旬、IEEE主催のシンポジウム「Hot Chips 25」で早くも次世代プロセッサ「SPARC64 X+」を発表した。クロック周波数が3.5GHzに引き上げられるほか、異なるシステム間でメモリを共有できるCoherent Memory Interconnect(CMI)機能を搭載する。これまで同社のSPARC/Solarisサーバが得意としてきた垂直方向のスケールアップ性能だけでなく、横に台数を並べるスケールアウトでのボトルネックを解消するのが狙いだ。富士通では、将来の企業情報システムは、「基幹業務」「パッチ処理」「データウェアハウス」「ビジネスインテリジェンス」といった異なるシステムでデータを共有するインメモリ型のアーキテクチャーになり、桁違いのリアルタイム性が実現できるとする。

 「Oracleと富士通が協力し、野心的なプランが進行している」と豊木氏は話す。

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