異次元のEngineered Systemsがインメモリの恩恵をすべてのアプリにOracle OpenWorld San Francisco 2013 Report

Oracleが先鞭をつけた垂直統合型システム。今週発表されたハイエンドのSuperCluster M6-32は、Oracle Database 12cのインメモリ機能を最大限に引き出し、すべてのアプリケーションの処理速度を飛躍的に高めるという。

» 2013年09月25日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
Oracleでシステム製品を統括するジョン・ファウラー執行副社長

 米国時間の9月24日、6万人が参加する過去最大の「Oracle OpenWorld San Francisco 2013」は3日目を迎えた。午前の基調講演では、同社の垂直統合型システムである「Oracle Engineered Systems」にスポットライトが当てられた。2009年、OracleによるSun Microsystems買収が伝えられると、シリコンバレーで愛された同社とその技術が消えていくのを惜しむ声が聞かれたが、4年後の今になって振り返れば、それはコンピュータ業界変革の始まりだったのかもしれない。

 「SunがOracleに統合されて以来、われわれは(ソフトウェア製品の開発を統括する)トーマス(・クリアン執行副社長)とワンチームでEngineered Systemsを作り上げてきた」と話すのは、Oracleでシステム製品を統括するジョン・ファウラー執行副社長。彼はSunで15年近く働き、ハードウェア製品の責任者などを歴任したベテランだ。

 「Oracle Engineered Systemsは、単にハードウェアとソフトウェアを統合したものではなく、何千ものアプリケーションがより良く稼働するようにすべてのスタックをエンジニアリングした成果。それは新しいパラダイムの提案だ」とファウラー氏は胸を張る。直近の四半期では2000台のEngineered Systemsを出荷したという。

会期中、メイン会場のステージには常にEngineered Systemsが設置され、存在感を示した

 Engineered Systemsの狙いは、卓越したパフォーマンス、導入リスクの低減、そして効率性によって企業のITを簡素化することにある。システムのコア技術にしっかりと投資するのはもちろん、それらのコンポーネントを事前に最適構成し、テストも済ませ、さらにほかの顧客からのフィードバックも生かされて磨き上げられる。より高い性能を求めるユーザーの期待にこたえるだけでなく、より少ない台数やスペースで優れた効率性を追求することもできる。

 例えば、垂直統合型の先鞭をつけたExadata Database Machineは、Oracle Databaseにインテリジェントなストレージを組み合わせ、負荷の高いクエリなどをストレージに任せる「Smart Scan」や、データベースを圧縮する「Hybrid Columnar Compression」、ホットデータを透過的にSSDにキャッシュする「Smart Flash Cache」などの機能が搭載され、いわゆるデータベースを理解することで高いパフォーマンスとペタバイト級のスケーラビリティーをコストを抑えながら実現する。

 「決済サービスのPayPalでは、ペタバイト規模のデータでも100ミリ秒以下のレスポンスタイムが求められた。その要求にこたえられたのは、Exadataだけだった」とファウラー氏。

 また、専門家向けに学術情報などを提供するThomson Reutersは、ビジネスインテリジェンスを劇的に高速化するExalytics In-Memory Machineを導入、購読者からのインタラクティブなクエリ処理に活用し、そのレスポンスを100分の1に短縮できたという。

32テラバイトメモリを搭載する「SuperCluster M6-32」

 データベースとアプリケーションを1台に統合し、高いパフォーマンスを叩き出すSuperClusterは、Sunのテクノロジーを最もよく継承したものだ。SPARC/SolarisサーバにOracle DatabaseとWebLogic Serverを最適化し、Exadataも統合、さらにOracle VM Server for SPARCによるオーバーヘッドなしの仮想化を実現しており、高いRAS性能(信頼性、可用性、保守性)が求められるプライベートクラウドの基盤としてOracleは売り込む。

 急成長するインドの証券会社、HDFC securitiesは、SuperClusterでデータセンターを刷新、ピークの取引処理性能を4倍に引き上げながらもスペースは30分の1へと劇的に削減することに成功したという。

SuperCluster M6-32は、新しいSPARC/SolarisサーバにExadataを外付けした同社最速かつ最大の拡張性を誇るEngineered Systems

 Oracleは今週のOracle OpenWorldで新しいSPARC/Solarisサーバをベースとした「SuperCluster M6-32」を発表した。同社最速のEngineered Systemsは、3.6GHzのクロック周波数で動作するSPARC M6プロセッサを32基(コア数は384)、メモリも最大で32テラバイトを搭載する。Oracle VM Server for SPARCによる高い集積効率を誇るほか、インメモリプロセッシングに最適で、負荷の掛かる複雑なワークロードでも高いパフォーマンスを発揮する。

 初日にラリー・エリソンCEOが自ら発表したOracle Database 12cのインメモリオプションは、同じデータをインメモリにRowフォーマットとColumnフォーマットで格納し、アナリティクスを100倍に、OLTPも2倍に加速する画期的なテクノロジー。SuperCluster M6-32は、その機能を最大限に引き出すために開発されたと言っていい。

 ファウラー氏は、「Oracleのインメモリは、すべてのアプリケーションで透過的にその恩恵をもたらすもので、SuperCluster M6-32との組み合わせは、インメモリコンピューティングをさらに高い次元へと引き上げる」と話した。

 IBMのPowerプロセッサから攻勢を受けてきたSPARC陣営だが、今年に入って富士通が、データベース処理をハードウェアでアシストする機構を組み込んだSPARC64 XベースのSPARC M10サーバを発表し、メモリ容量を64テラバイトまで引き上げた。8月には次世代プロセッサ「SPARC64 X+」を発表、異なるシステム間でメモリを共有できるCoherent Memory Interconnect(CMI)機能も搭載する。Oracleも今年はT5、M5、そしてM6プロセッサと立て続けに投入しており、来年にはデータベース処理やJavaの処理をさらに加速する機構を組み込んだ次世代プロセッサ「M7」も控えているという。

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