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» 2014年02月24日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:国産PaaSが挑むグローバル展開の勝負どころ

サイボウズが先週開いた会見で、クラウド事業に一層傾注していく姿勢を強調した。特に同社のPaaS型サービスはグローバル展開にも果敢に挑む。その勝負どころはどこか。

[松岡功,ITmedia]

利益ゼロが示すクラウド事業への「覚悟」

 「リーマンショック以降、売り上げが伸び悩んでいたが、ここにきて成長の波に乗るチャンスが来た。これから10年、20年と成長し続けてグローバルで活躍できる企業になるために、今しっかりと投資しておきたい」

 サイボウズの青野慶久社長は2月17日、同社が開いた業績と事業方針に関する記者会見でこう強調した。

記者会見に臨むサイボウズの青野慶久社長 記者会見に臨むサイボウズの青野慶久社長

 青野氏が言う「成長の波に乗るチャンス」とは、同社がここ2年余り力を入れてきたクラウド事業が全体の売上高をかさ上げし、今後の右肩上がりの成長軌道が描けるようになってきたことを指す。

 2013年12月期の連結業績は、そのターニングポイントとなる結果だった。リーマンショック以降、40億円前後で推移していた売上高が一気に10億円ほど増えて約52億円になった。その上乗せ分はほぼクラウド事業によるものだ。2014年12月期の連結売上高は54億円と「堅めの見通し」(青野氏)だが、成長軌道への確かな手応えを感じているようだ。

 ただ、サイボウズの業績で最も目を引くのは、利益の急降下だ。2013年12月期の売上高経常利益率は5.1%と、前期の12.0%から大幅に低下した。しかも2014年12月期の予想については、営業利益・経常利益・当期利益ともにゼロとした。なぜ、利益がこれほど急降下するのか。青野氏の冒頭の発言にある「今しっかりと投資しておきたい」というのが、その理由である。

 「グローバルでクラウド事業を展開しているAmazon.comやsalesforce.comなどは、今も利益を度外視して投資を続け、事業規模の拡大に注力している。当社はこれからそうしたところと競争していかなければならない。今のところ財務基盤は盤石なので、当社も目先の利益を得るより、将来を見据えた投資をしっかりと行っていきたい」

 この発言に、まさしく青野氏の「覚悟」を感じ取った。ちなみに、投資はクラウド関連サービスの開発や設備増強、プロモーションに集中して費やすという。

 同社は中長期の事業拡大方針として、「パッケージからクラウドサービスへ」「中小企業から大企業向けへ」「情報共有アプリケーションから情報共有プラットフォームへ」「日本国内から海外市場へ」との4つを掲げている。ここから先は、この4つの方針の要となる同社のPaaS型サービス「kintone」に注目したい。

強力なエコシステム形成が勝負どころに

 kintoneは、サイボウズがこれまで培ってきたグループウェアのノウハウを基に、同社のクラウド基盤「cybozu.com」上で手軽に業務アプリケーションを構築できるようにしたサービスである。同社ではこれを単なるPaaSではなく、「チームワーク・プラットフォーム」と位置付けている。

 その背景については、2013年7月22日掲載の本コラム「国産PaaSの挑戦」で解説しているので参照いただくとして、ここでは青野氏が中長期を見据えてとりわけ注力しているkintoneのグローバル市場も含めた事業展開に注目したい。

 PaaS市場においては国内外とも状況は同じで、salesforce.com、Microsoft、Googleが先行しているとみられる。今後はそこに、OracleやSAPも絡んでくるだろう。そうした外資勢にサイボウズが挑む構図となっている。一方で、サイボウズもチームワーク・プラットフォームをコンセプトとしたkintoneはグローバルでも通用するとみており、虎視眈々と世界進出を狙っている。

 今後ますます激戦区となるであろうPaaS市場のサバイバル競争を勝ち抜くための勝負どころはどこにあるのか。事情通などの話を集約すると、いかに強力なエコシステムを形成できるかが重要なポイントになりそうだ。

 確かに、salesforce.com、Microsoft、Googleともエコシステムづくりには相当なエネルギーを費やしている。また、OracleやSAPもエンタープライズ系ソフトウェアで培ってきた巨大なエコシステムがある。さらにはAmazon.comがIaaS型サービスでリードしているのも、増殖的にエコシステムが拡大しているところがあるからだ。

 サイボウズもその点は踏まえており、2013年および2014年の事業方針に「エコシステムの推進」を挙げている。具体的には、kintoneを他のシステムと連携させるためのAPIの強化やカスタマイズ機能の拡充を図ることにより、販売パートナーだけでなく、アプリケーション開発会社やシステムインテグレータなど、多様なパートナーとの連携を進めている。青野氏によると、他社製品とのkintone連携ソリューションは50を超えたという。さらに今後はクラウドインテグレータとの協業も進めていく構えだ。

 だが、サイボウズにとって今後大きな課題となってくるのは、グローバル市場でもそうしたエコシステムを形成できるかどうかだ。それは、kintoneのコンセプトを基にそれぞれの国・地域の文化や習慣をどう取り込んでいくかということだろう。とはいえ、人間社会である限り、チームワークづくりは必ず求められるはずだ。やりがいのある仕事だと思う。ぜひ、果敢にチャレンジしてもらいたい。

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