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» 2014年03月04日 08時00分 UPDATE

クラウドを駆使:“脱”LANを目指せ――働き方から変えた企業の挑戦 (1/2)

メールセキュリティなどを手掛けるITベンダーのHDEは、LANに縛られないワークスタイルを実現しようとしている。きっかけは東日本震災による事業継続だが、オフィスのLANに縛られない働き方という壮大な挑戦になった。

[國谷武史,ITmedia]

震災とベンチャーがきっかけに

 NetBIOSやTCP/IPといった従来のLANと、現代のスタートアップベンチャーが業務システムで使うネットワークは違うようだ――メールセキュリティ事業などを手掛けるHDEは、2011年からオフィスのLANに縛られない環境作りを進めている。代表取締役社長の小椋一宏氏は、“脱LAN”に挑むようになった背景をこのように話す。

 そもそも、HDEが脱LANに向かうきっかけになったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。「オフィスが大きく揺れてコンピュータや什器が壊れ、さらには交通網の大混乱で社員が出社できなくなり、計画停電にも迫られた。事業を続けるために、3日程度で在宅勤務規定を作り、Google Appsも急いで導入した。この時、これからはオフィスに縛られない働き方にシフトしていくと悟った」と小椋氏は語る。

hde01.jpg 脱LANに挑戦中のHDEの天野氏、小椋社長、上杉氏(左から)

 東日本大震災の直後、同社のように事業継続の必要に迫られ、急いで在宅勤務やテレワークのような仕組みを導入したところは多い。その後、モバイル機器の普及も手伝い、オフィス環境に捉われない働き方が脚光を浴びるようになった。ところが、新たな働き方の導入でボトルネックになるのが、旧来の業務システムやネットワークの環境であったり、人事や労務といった制度面だろう。

 小椋氏は、旧来の業務システムやネットワークの環境が、社内LANを前提にしたものだと話す。モバイルワークなどでオフィスの外からアクセスする際、基本的にはVPN経由で社内LANにアクセスする。社内のコミュニケーションもLANを介してやりとりすることが多い。一方、新興企業は社員同士がインターネット上でつながるような形だという。ビジネスをいち早く立ち上げる必要性から、システムやコミュニケーションはクラウドがベースになり、そこにインターネットで接続する。

 小椋氏とともに脱LANに取り組む執行役員 社長室長兼内部監査室長の天野治夫氏も、「コワーキングのような環境で非常に高い生産性を実現している新興企業を幾つもみていると、当社とはだいぶ違なということを感じていた」と話す。震災を契機に、スタートアップベンチャーにおけるネットワークの新たな利用スタイルが刺激になった。小椋氏が打ち出した脱LANの方針は、トップダウンでスタートする。

 「既にあったクラウドやブロードバンド、モバイルなどの要素技術を組み合わせれば、オフィスという『箱』に来ない働き方を実現できる。むしろオフィスは、一緒に顔を合わせなければできない仕事をする場所という考え方に転換し、オフィスを中心とする考え方から脱却しないと、ITの恩恵は享受できない」(小椋氏)

はじめの一歩

 脱LANに向けた最初の取り組みはペーパレス化だった。社員が作成するドキュメントは、なるべく共有フォルダに置く。印刷をしないことを前提としており、会議などで配布資料として紙には印刷せず、各自の端末からファイルにアクセスして参照するようにした。できる限りクラウド上で仕事が完結するスタイルに変えたことで、「ファイルの置き場に対する重要性は必然的に低下していった」(小椋氏)という。

 震災直後は必要に迫られて導入したスタイルだったが、自宅やオフィスの外からでも仕事ができるメリットは次第に社内へ浸透していく。

hde02.jpg 開発業務はほとんどがクラウド化してしまい、社内のサーバルームはもの寂しい感じだ(同社提供)

 社内でまずスムーズに広がったのが開発部門だ。ドキュメントの利用はもちろん、開発業務の環境もクラウドが中心になっている。ソースコードの開発や管理、進捗管理、チケットなどの機能はGitHub、サーバ環境はAmazon Web Servicesを活用している。開発業務の環境移行は徐々に進められ、現在社内のサーバルームでは少数のブレードサーバが稼働しているだけになった。

 しかし、社内の抵抗は少なからずあったようだ。管理部長の上杉篤子氏は、「経理や人事といった管理部門の業務は紙のドキュメントで仕事をしていくスタイルだったので、クラウドでも仕事は回るのか、セキュリティは大丈夫なのかといった不安を感じた」と語る。

 ただ、震災直後の混乱で実際に社員が出社できない状況に直面すると、仕事のスタイルが変わっていくことに異論を唱える余裕は無かったとも話す。「Google Appsが使いづらい点ばかりということはなく無く、気になる点は社内の技術者が解決してくれた。今振り返ると、あまり抵抗感を覚えることは少なかったかもしれない」(上杉氏)。震災直後には年配社員へiPadも支給し、Webメールを利用しやすいように改善したという。

 上杉氏によれば、震災当時と現在では印刷される紙の量が3〜4割程度減り、プリンタのトナーは半分に減少した。このようにペーパレス化からスタートしたクラウド中心の働き方は、着実に進んでいる。旧来の社内のファイルサーバに残されたファイルは、期限を設けて段階的にクラウドへ移行させた。2月28日にはファイルサーバの個人フォルダを廃止し、ファイルサーバ自体も2015年春を目途に廃止したいという。

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