ID統合にインフラ強化、サイバーエージェントが挑んだ情報システム改革スピード経営の足かせになるな!(1/2 ページ)

成長し続ける企業であるために、組織変更や人事異動を頻繁に行う。これがサイバーエージェントの競争力の源泉といえる。一方で、そうした事業環境に情報システムを追従させていくのは並大抵のことではない。このたび同社が取り組んだ大規模なシステム刷新について佐藤CTOが語る。

» 2014年04月22日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 約2年前からサイバーエージェントが子会社を含めたグループ全体のシステム基盤を大規模に刷新している。バラバラだった社内の情報/基幹系システムのIDを統合して社員の利便性を高めるとともに、ネットワークの強化などスピード経営のボトルネックにならないシステム基盤を構築する。

 同社がコアコンピタンスとして目指しているのが、永続的に成長を続ける強固な組織であり、そのために組織改編と人事異動を頻繁に行っている。常に組織を変容させながら最適な姿を模索していくことを強みとする一方で、そうした急激な経営変革に対して情報システムが追いついていないという状況があった。

 また、相次ぐスマートフォン向けサービスの開発によって、社内無線LANのトラフィックが急増。ネットワークが不安定になり、サービス開発が遅れるだけでなく、日常業務に影響を及ぼすようなこともあったのだという。

 そうした中、サイバーエージェント 執行役員で最高技術責任者(CTO)を務める佐藤真人氏の指揮の下、約2年前から全社システム基盤の再構築に取り掛かることになった。

 「当時のサイバーエージェントの大きな課題は、システムがスピード経営の足かせになっていたこと。これを解消できるシステム基盤を用意することで、子会社のサービスをすぐに立ち上げられるなど、ビジネスメリットを創出することが可能だと考えた」と佐藤氏は振り返る。

Suicaなどを社員IDカード代わりに

 では、どのようにシステム基盤を整備したのだろうか。主要な部分を具体的にひも解いていこう。

サイバーエージェント 執行役員 全社システム本部 最高技術責任者の佐藤真人氏 サイバーエージェント 執行役員 全社システム本部 最高技術責任者の佐藤真人氏

 まずはIDの統合だ。同社では、グループウェアや人事データベース、社内メーリングリスト(ML)のアカウントなど、それぞれのシステムごとにIDとパスワードが付与されていた。これによって、社員は複数のID、パスワードを管理する必要があり、IT管理者もシステムごとにメンテナンスしなければならなかった。

 そうした煩わしさから抜け出すために、サイバーエージェントではID管理システムを導入。これによって、社員番号を共通のアカウントにして、パスワードを一元化した。「IDのプロビジョニングを行い、さまざまなシステムを有機的にひもづけできるようにした」と佐藤氏は話す。

 そのほかIDにかかわるシステム刷新の効果として、社員が執務室などに入退出する際にドアロックを解除する社員カードが不要になり、「Suica」などの非接触型ICカードでID認証が可能となった。「IDがひもづけられていれば、社員個人の携帯に搭載されているモバイルSuicaなどでも認証できる」と佐藤氏は説明する。

 ID管理システムによる一元化に取り組んだ背景には、セキュリティ強化という面もあった。今や多くの企業では、社内システムとはひもづかない、Facebookのような独自IDを持つWebサービスをビジネスに使うケースが増えている。例えば、社内のプロジェクトでFacebookのグループページを利用した場合、もしメンバーが退職したとしても、そのIDの消し込み作業を行わなければ、ビジネス上の重要な情報が退職者に漏えいしてしまう可能性もある。こうしたリスクを想定し、サイバーエージェントでは、ID管理システムにFacebookやSkypeなどの個人IDもひもづけたことで、正確に入社/退職者の管理が可能になった。

頻繁な人事異動に追いつくシステム

 次に、頻繁な組織変更へのシステム対応に関してである。人事異動が多いことによるビジネス現場の不満として、どの社員がどこへいるのか分からず、コミュニケーションが取りづらいということがあった。そこで、社員の顔写真、社員番号、座席位置などの人事データを基に座席管理システムを構築。システム画面にはフロアごとに座席がマッピングされていて、そこから社員の座席位置、内線番号、社員番号を直感的に追跡できるようにした。再び組織変更があっても新たな座席表を簡単に作成することができた。

 「これまでも座席管理は行っていたものの、それぞれの拠点の社員が情報を毎回パワーポイントに入力していて、メールで共有していた。その座席表を自動生成し、オンラインで閲覧できるようになったのは、大きな工数削減につながった」と佐藤氏は述べる。

 さらに、新たなメールシステムとして導入した「Google Apps」も人事データベースと連携させた。これによるメリットとして、例えば、ある社員がAmeba部門から広告部門に異動になったとき、これまでは人事部門がメールで異動を報告し、サービスデスクが手動でAmeba部門のMLから該当する社員を外し、広告部門のMLに付け替えていた。ただし、手作業であるが故に、登録が漏れていることもしばしばあったという。新システムは人事データベースとひもづいているので、人事側で異動辞令のメールだけを出せば、組織図に則ってMLの登録者も自動で更新されるようになった。

 「複数の部門の兼務といった例外対応はあるが、組織変更に伴う作業を極力自動化した。またビジネス部門も自らMLなどに登録できるようになったことで、サービスデスクの負荷が低減した」(佐藤氏)

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