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» 2014年06月23日 08時00分 UPDATE

クラウドの本流を狙うHPの思惑

ベンダー各社のクラウド訴求が一段と活発になる昨今、HPは競合とやや一線を画した展開を推進しているようだ。「クラウドのブレークは2、3年後」と語る米HP クラウド テクノロジスト グループの真壁技術担当部長に真意を聞いた。

[國谷武史,ITmedia]

 「企業がクラウド型システムを利用するようになったといわれるが、現時点では5%程度。本格的な普及フェーズとなる10%に達するまでには、あと2、3年ほどかかるだろう」――米HP クラウド テクノロジスト グループ技術担当部長の真壁徹氏は、現在のクラウド市場をこう俯瞰する。同氏にHPのクラウド戦略を聞いた。

 同社は、5月に「HP Helion」という新ブランドを含めた新たなクラウド戦略を表明した。オンプレミス型システムやプライベート/パブリッククラウドを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」が中心になるという従来の見方は変えていないが、そこに至る道筋として以下の主要な施策を展開し、今後2年間に10億ドル(約1000億円)以上を投じる計画だ。

  • OpenStackのディストリビューション「HP Helion OpenStack」(無償版/有償版)のリリース
  • OpenStackOpenStackプロフェッショナルサービスの提供
  • HPによるクラウドサービスのグローバル展開
  • Cloud FoundryをベースとするPaaS基盤「HP Helion Development Platform」の提供
  • 「HP Helion Network アライアンスプログラム」の設立
hpcld01.jpg 米HP クラウド テクノロジスト グループ技術担当部長の真壁徹氏

 HP Helion OpenStackでは、4月にリリースされたOpenStackの最新バージョン(Icehouse)と次期バージョンの一部機能を取り入れた無償のコミュニティ版を既に提供しており、商用版も6月中にプレビュー、8月に正式版を提供する。コミュニティ版は6週間単位で更新され、物理サーバ30台までの規模でOpenStackを検証したいという企業に適しているという。商用版は同1000台規模にまで対応し、大企業やクラウド事業者のデータセンターでの利用が想定されている。HPでは年間800〜1400ドル(物理サーバ1台あたり、日本での価格は未定)の有償サービスも提供するという。

 HPの提供するクラウドサービスは、今後1年半以内に提供拠点を、東京を含む世界20カ所以上に拡大する。現在のIaaSとマネージドサービスにPaaSも加わる予定。オープンソースのCloud FoundryをベースとするHP Helion Development Platformは、同社のPaaSサービスとソフトウェア製品としても提供する。プレビューは近く公開され、2014年後半に正式版をリリースする予定。また、プロフェッショナルサービスは顧客企業がOpenStackなどをベースとするシステム環境の導入や運用を専任技術者が支援するもので、近く詳細を発表するとしている。

 アライアンスプログラムでは、HP Helion OpenStackを採用するクラウド事業者やISV、SaaSプロバイダー、SIer、リセーラーなどによる広範なエコシステムを形成していく。真壁氏によれば、国内外で提携交渉を進めており、初期メンバーには米AT&Tや英BT、Hong Kong Telecomらが名を連ねる。

OpenStackの意味するところ

 2013年から大手ITベンダーではOpenStackを顧客企業に訴求する動きが活発化している。OpenStackを基盤に据えたパブリッククラウドサービスの展開やOpenStackへの対応をうたう製品の相次ぐリリースなどが代表的である。

 現時点でユーザー企業の多くは、社内の業務サーバを仮想化してこれからどのように共通化・標準化を図っていくかというフェーズにあり、クラウドの利用はWebシステムなど既にクラウド環境に適したものや、ビッグデータ活用などの新規システムが中心だ。

 つまり、新規システムよりビジネス上のリスクが大きい基幹システムのクラウド対応はこれからが本番であり、ベンダー各社のメッセージは、まずは新規システムでクラウドを活用し、OpenStackベースのサービスであれば将来のハイブリッド化も図りやすいといったものになっている。HPの戦略でもOpenStackを共通基盤に据える点は似ているが、「製品先行か、サービス先行か」というより、両方を同時に展開していくことでハイブリッドクラウドニーズに対応していくいう点が競合他社とは異なる。

 国内では仮想化された社内システムと外部のクラウドサービスを接続してハイブリッドクラウドを構成している例が見受けられるが、インフラレベルまで共通化されているというケースばかりではない。真壁氏は、「こうした場合において不幸なのはアプリケーションの開発者とそれを運用する人々だ」と指摘する。

 異なる基盤のシステムを連携させようとなると、開発者はアプリケーションをそれぞれの基盤に合わせて開発しなければならず、その運用も同様になる。複数の基盤を用いる“ダブルスタンダード”では人的な負担が増えるだけなく、コストメリットも生みにくい。

 「HPとしてはオープンスタンダードなOpenStackを使い、ユーザーはそれに合わせてアプリケーションを開発するだけで社内向けでも社外向けでも展開できる世界を目指している。これがHP Helion OpenStackのキーメッセージとなっている」(真壁氏)

 HPが新戦略で打ち出した施策は製品からサービス、アライアンスと幅広いが、個々の施策に関する具体的な内容は、競合他社に比べると未知の部分が少なくない。競合他社の方が先行しているようにみえるが、真壁氏は焦りを全く感じないという。

 「クラウドに対するHPの取り組みは、これまで事業部門がそれぞれに手掛けてきたが、2013年末に組織を一本化して他社を追撃できる体制になった。その意味では遅れたかもしれないが、ユーザー企業における多様なクラウドへの取り組みはこれからが本番。そのために必要な準備も整い、ユーザー企業にハイブリッドクラウドへのしっかりとした道筋と手段を提示できる」

 上述したOpenStack関連の製品やサービスなどで、まずはIaaS領域における明確な施策を打ち出したHPだが、最近ではPaaSやSaaS領域でベンダー各社の大型連携などの新たな施策が次々に発表されている。これらの領域でHPはアライアンスプログラムなどを通じた施策を着々と進めているという。「現時点で明かせないものは多いが、驚くような展開を期待していただきたい」と真壁氏は語る。

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