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» 2014年07月11日 12時35分 UPDATE

Lead Initiative 2014レポート:ノエビアが実現した「持たざるプライベートクラウド」への2年3か月

インターネットイニシアティブ(IIJ)は2014年7月10日、東京コンファレンスセンター・品川にて、プライベートイベント「Lead Initiative 2014」を開催した。「クラウドが切り開く企業システムの近未来−新たなステージの幕開け−」と題し、先進的なユーザーの事例講演を含め、大小25のセッションが展開された。本稿では、「クラウドファースト」で「持たざる経営」を実践したノエビアの事例講演を紹介しよう。

[廣瀬治郎,ITmedia]

他社の2〜4倍のITコスト、事業効率性とBCPも大きな課題に

濱口氏写真 ノエビアホールディングス 情報システム部長 兼 経理部担当 上席執行役員 濱口雅之氏

 「クラウドファーストで実現した全社システムリニューアル - ノエビアの決断 -」と題した本セッションでは、ノエビアホールディングスで情報システム部長 兼 経理部担当 上席執行役員を務める濱口雅之氏が登壇し、「IIJ GIO」を活用して情報系・業務系・基幹系の全てをクラウドへ移行し、TCOの削減とセキュリティ/可用性の向上を実現した事例について紹介した。

 2014年に創業50周年を迎えたノエビアは、現会長 大倉昊氏が創業した化粧品メーカーである。2002年には医薬品・健康食品の常盤薬品を子会社化。持株会社のノエビアホールディングスは2011年に設立している。

 ノエビアでは、1984年にオフコンからメインフレームに移行、2006年からオープン化を進め、170台のサーバーを保有するに至った。ノエビアと常盤薬品工業では流通が異なるため、共通基盤を除く工場系・研究所系・流通管理など多数のシステムを、それぞれ個別に保有していた。それらのほとんどを、2011年末から2年3カ月をかけてクラウド(IIJ GIO)へ移行したのが、今回のシステムリニューアルである。

 このきっかけとなったのは、まずITコストが非常に大きいことだった。事業収入に対するIT費用比率は、製造業平均の4倍強、全業種平均の2倍に達していた。また、総資産を減らして“持たざる経営”を目指しているにもかかわらず、ROA/ROEなどの効率性を示す数字が、2008年ころから低下していったことも挙げられる。さらに、各拠点からは神戸本社を通らないとシステムへアクセスできないネットワーク構成になっていたため、BCPがおろそかになっていた点も課題となっていた。

断念しかけたところに新提案、資産を持たないプライベートクラウドへ

 濱口氏が現在のポストに着いたのは2011年3月、東日本大震災の10日後のことだった。次期システムへの情報収集等は7月ごろから取り掛かったが、それを指示されたのも着任後、大わらわな半年間だったという。

 「“持たざる経営”を目指して、クラウド活用を前提に情報を収集し始めました。もともとECサイトはIIJのデータセンターにハウジングしていたため、セキュリティに関する懸念はそれほどなく、抵抗も特に感じなかった」(濱口氏)

 濱口氏は、IIJのほか、通信事業者2社、メーカー2社にシステムの提案を依頼した。彼らの提案は、大きく2つに分かれた。メーカー2社の提案は、まずサーバー統合・仮想化し、その後にクラウドへ移行するという2ステップ型。IIJと通信事業者の提案は、1ステップで一気にクラウド化するというものだった。しかし当初の提案では、IIJを含めて導入・運用のトータルコストが見合わず、クラウドへの移行検討を中断せざるを得なかったという。

 濱口氏らは、いったんオンプレミスでの構築も含め、より良い解決策を求めて、さらなる情報収集・他社訪問などを行った。濱口氏によれば、こうした近隣企業へのヒアリングは、経営層を説得する有効な材料になったと強調した。

 そうこうしているうちに、大震災後の計画停電が本格化することが伝えられた。

 「システムが停止した時の影響範囲が把握できていなかったため、全てのSLAを見直すことにしました。さまざまな項目を調査しましたが、システム停止時のマニュアルすら用意されていないのが現状でした。これでは止めるわけにはいきません」(濱口氏)

 そうした調査を続けているとき、濱口氏の下へIIJから新しい提案があった。「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」だ。ハードウェア資産を持たずにプライベートクラウドを構築できるため、ノエビアが目指す“持たざる経営”にフィットした。懸念されたコストも申し分なく、経営層の決済が下り、2012年9月に移行作業が開始された。

マシンルームは一般オフィスへ、総コストを下げつつBCP対応も

 クラウドへの移行は、2013年1月・3月・12月の3回に分けて実施された。第1次にはWebサーバー29台、第2次では一部の基幹系を含む24台を移行したが、大きな障害は全く発生しなかった。これで基幹系も問題ないと判断し、第3次では残る65台のサーバー全てを移行した。

 いくつか移行に適さないシステムが19台残されていたが、これらも全てアウトソーシングすることで、“1台もサーバーを持たない環境”が完成した。神戸本社に27年間設置されていたマシンルームは、2014年3月に完全撤去された。14台のラックが設置されていた部屋は、今では普通のオフィスに生まれ変わったという。

 「当社のコンサルタントによれば、IIJから提案されたた1ステップ移行は、リスクもコストも高いという評価でした。しかしIIJ GIOへの1ステップ移行は、コストは小さくないものの、“リスクはまったく高くない”という印象を受けました」(濱口氏)

 ノエビアは今回のリニューアルによって、ハードウェア/ソフトウェアの償却費はほぼゼロに、クラウドサービス費用の増加分も、データベースの整理やテレビ会議システム料金の見直しなど、その他の取り組みによる削減で補うことができたという。ネットワークも、IIJ GIOを含めたマルチクラウド化によって、神戸本社のシステムに依存しない構成を採ることができ、BCPや事業効率化を図りつつ、ITコストを大幅に削減することに成功した。

 最後に濱口氏は、クラウド導入を検討する情報システム担当者に向けて、次のようなメッセージを送り、講演をまとめた。

 「情報システム部門の常識は、会社の常識ではありません。経営陣は、クラウド技術を知らず、スペックやツールなどに興味はありません。専門用語を使わず、コストやBCPの実現といったメリット、考え得るリスク、事業戦略との整合性など、本質を分かりやすく説明することが重要です」

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