「山田錦」の安定調達にクラウドを活用 旭酒造と富士通

日本酒の原料である「山田錦」の生産量アップを図るため、旭酒造は富士通の農業向けクラウドサービスを導入した。

» 2014年08月04日 16時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日本酒ブランド「獺祭(だっさい)」を製造する旭酒造と富士通は8月4日、農業向けクラウド活用に関する記者説明会を開催した。両社は酒造好適米の栽培工程にITを導入することで、さらなる生産性向上を図っていく。

旭酒造の桜井博志社長(左)と富士通 執行役員の廣野充俊氏 旭酒造の桜井博志社長(左)と富士通 執行役員の廣野充俊氏

 旭酒造では現在、獺祭の原料である酒造好適米「山田錦」を兵庫県や山口県などの契約農家から調達している。しかしながら、近年になって農家の高齢化や担い手不足、栽培が技術的に難しいため新規生産者が増えにくいことなどの理由から、8万俵という必要量に対し調達量が4万俵にとどまっている。一方で、獺祭の売り上げは国内外で伸びているため、「最終的には60万俵の山田錦を安定的に調達したい」と同社 桜井博志社長は目標を掲げる。

 そうした中で旭酒造が目を付けたのが、富士通の食・農クラウドサービス「Akisai(秋彩)」だ。Akisaiは、農地での作業データや気象などの環境データ、生育データなどを収集し、それらを経営、生産、品質などの軸で分析して農業経営に活用するサービス。2012年10月にリリースし、既に100社以上に導入されているという。「Akisaiを利用することで、山田錦の栽培実績データを記録しベストプラクティスを蓄積するとともに、それを契約農家間で共有できるようになる」と桜井氏は採用の意義を説明する。

 2014年4月、山口県内の契約農家2軒でAkisaiをテスト的に導入。日々の作業実績や生育の様子を生産者が記録するほか、農地に設置されたセンサシステムによって気温、湿度、土壌温度、土壌水分、EC(電気伝導度)値を1時間ごとに取得したり、定点カメラで生育画像を毎日撮影したりする。こうしたデータは富士通のクラウドデータセンターに蓄積され、担当者が分析作業を行う。「具体的な成果はこれから」(富士通 イノベーションビジネス本部 Akisai ビジネス部 シニアディレクターの山崎富弘氏)とするが、山田錦の品質、収量の向上に役立つはずだという。

 旭酒造では2015年以降、この取り組みに参加する生産者を増やし、地域特性に応じた山田錦の栽培方法の質向上を目指す。

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