MEMS事業を「第4の成長の矢」に 生き残りを賭けるCATV会社の挑戦3カ月でシステムを構築(1/3 ページ)

東京23区初の都市型ケーブル会社として誕生した東京ケーブルネットワーク。基幹ビジネスの放送や通信との相乗効果で加入者拡大を図るべく、クラウドを活用した電力供給サービスへ参入する。

» 2014年08月25日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 東京都千代田区・文京区・荒川区でケーブルテレビ(CATV)やインターネット接続、電話事業を手掛ける東京ケーブルネットワーク(TCN)は、2014年4月に経済産業省の補助事業を推進する環境供創イニシアチブからMEMS(マンション向けエネルギー管理システム)アグリゲータの採択を受け、「高圧一括受電」による集合住宅向け電力供給サービスへの参入を表明した。従来の放送や通信とは異なる分野への進出を可能にしたのがクラウドサービスなどの活用だ。

本業に危機感

東京23区初の都市型CATV局の東京ケーブルネットワーク

 TCNの事業エリアである3つの区には合計で約25万世帯数がある。テレビ放送加入は約9万世帯で、うち有料多チャンネル放送の契約は約3万3000世帯。インターネット接続が約1万1000世帯、電話が約7000世帯という状況である。しかし、地上デジタル放送の普及などを背景に有料多チャンネル放送の契約はピーク時の約3万8000世帯から5000世帯ほど純減。インターネット接続や電話の利用世帯は純増を続けているものの、伸び悩んでいるという。

 CATV事業部次長兼法人営業グループ長の磯山秀俊氏は、「放送サービスのビジネスが頭打ちになる中で、インターネットや電話ビジネスの成長も鈍化し、新しいサービスを見出さないといけない状況にあります。当社の事業エリアは集合住宅が多いものの、加入世帯の多くは戸建住宅であり、集合住宅向けの営業を強化したいと考えていました」とMEMS参入の理由を語る。

 2011年の東日本大震災以降、国内では大手電力各社による電気料金の値上げが続くこうした状況を改善する取り組みの1つとして注目されるのが、MEMSアグリゲータだ。

 MEMSアグリゲータとは、マンションへのMEMSの導入とクラウドなどによる集中管理システムの設置を通じ、年間10%以上の節電を目標に、補助事業者に対してエネルギー管理支援サービス(電力消費量を把握して節電を支援するコンサルティング)を行うエネルギー利用情報管理運営者として、環境供創イニシアチブに登録を受けた事業者を指す。

 TCNが手掛ける高圧一括受電による電力供給サービスは、東京電力からマンションに引き込まれる高圧電力をTCNが一括購入し、マンション内に設置する変電設備で低圧に変換して管理組合などが管轄する共有部や各世帯に供給する。地域の電力会社から一括購入とすることで電気を安価に調達でき、管理組合や各世帯が支払う電気料金の低廉化につながる。常務執行役員CATV事業部担当兼CATV事業部長の津滝義仁氏によると、TCNでは当面、東京電力よりも数%安価な電気料金を設定する予定だという。

電力供給サービスの全体イメージ(TCNより)

 磯山氏が話すように、電力供給サービスは集合住宅の加入率アップへの貢献が期待される。集合住宅の中には放送サービスのみしか提供できない建物もあるといい、従来のままでは提供サービスを広げられないという課題があるため、安価な電力サービスを切り口に放送・通信サービスを含む加入増につながる可能性が高まるからだ。

 TCNにとって電力供給ビジネスは、CATVとインターネット、電話に続く第4の成長の矢であると同時に、従来の3つの基幹ビジネスの基盤を強化するための戦略でもある。

 CATV会社によるMEMS参入は、業界最大手のジュピターテレコム(J:COM)が先行し、環境供創イニシアチブの2013年のアグリゲータ公募(第1次)で採択された。TCNが採択された第2次公募ではベイ・コミュニケーションズ(大阪市)もアグリゲータに採択され、CATV業界から3社がMEMSへ参入している(アグリゲータは全29社)。

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