お堅い行政会議もタブレットで変わった――議事録に代わる新手法「グラフィックレコーディング」とは(2/2 ページ)

» 2014年09月30日 08時00分 公開
[宮本裕人,ITmedia]
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 ただし、手応えと同時に課題も残った。グラフィックレコーディングでは「発言と発言のつながり」を俯瞰できる反面、発言内容を時系列に沿ってテキストで記録する従来の議事録に比べて“正確性”が劣るという。また、全ての発言を記録するわけではないので、作り手の“恣意的な視点”が生じる可能性もある。

 富田氏は「1つ1つの発言を正確にくみ取りながら、議論全体の流れを見てストーリーにするのは難しい」と話す。ただ「複数人の共同作業によってグラフィックレコーディングを行えば、自分と他者のまとめ方の違いに気付き、恣意的な表現の回避にもつながるかもしれない」という。

グラフィックレコーディングがコミュニティを活性化させる

 このように一部で課題は残るものの、「複数人で話し合うようなシーンならどのような場でも活用できるだろう」と富田氏は言う。実際、最近ではプロのグラフィックレコーダーが活躍する場も増えつつあり、「TOKYO WORK DESIGN WEEK」や「未来メディアプロジェクト」をはじめ、さまざまなイベントやワークショップでこの新たな手法が導入され始めているという。

 富田氏の目標は、デザインのスキルや経験を持たない人でも議論の視覚化を実践できるようにすることだ。例えば、コミュニティを中心とした新商品/サービスづくりや地域の課題解決の場にグラフィックレコーディングを取り入れれば、対話の結果を可視化し、会議の外に発信して「コミュニティの活性化」が期待できるという。

 「今後はグラフィックレコーディングの手法を体系化して手順書を作り、ピクトグラムやデザインのテンプレートを用意し、さまざまなイベントや会議を参加者自身が視覚化できるようにしたい」(富田氏)――グラフィックレコーディングは今後、ビジネスの場や社会を活性化させる議事録の新たなスタンダードになるかもしれない。

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