成田空港の旅客サービスを変えたiPad導入の舞台裏導入事例(1/3 ページ)

成田空港はターミナル内のスタッフにiPadを携行させ、旅客向けの各種案内サービスを強化したという。その取り組みの全貌に迫る。

» 2013年12月13日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 成田空港内のテレビ電話案内システム

 「日本の空の玄関口」として80社以上の航空会社が乗り入れる成田国際空港は、世界的にみてもIT活用に積極的な空港の1つでもある。同空港では2010年に「i-Airportプロジェクト」を立ち上げ、テレビ電話案内システム、大規模デジタルサイネージシステム、無償のWi-Fiネットワークなどを導入して利用者の利便性向上につなげてきた。

 そんな成田空港は2012年6月、インフォメーションセンターのスタッフ業務にiPadを導入し、旅客向け案内サービスを向上させたという。取り組みの背景とその成果について、同空港のIT推進部と旅客ターミナル部の担当者に聞いた。

スタッフ間に生まれていた「情報格差」

photo 成田国際空港の小山千尋さん(事業部門旅客ターミナル部 旅客サービス事業グループ主席)

 成田空港では、第1/第2ターミナルのそれぞれにインフォメーションカウンターを設置し、旅客向けに各種案内サービスを提供している。ターミナル内の大きな「?」マークがその目印で、搭乗手続きの方法を聞いたりするために利用したことがある人も多いだろう。

 そうした案内サービスを支えているのが、空港スタッフが利用する「旅客案内サービスシステム」だ。成田空港は1998年にIBM Notes/Dominoを活用して同システムを構築し、旅客からの各種問い合わせや忘れ物対応、航空会社の連絡先を調べる際などに活用している。

 「従来はさまざまな情報を紙で管理していたため、リアルタイムで情報共有できるシステムの導入でとても便利になりました」と成田国際空港の松本英久さん(経営企画部門IT推進部 情報企画グループ マネージャー)は振り返る。同システムで調べられる情報は、各種業務マニュアルから一般公開されていない最新のフライト情報まで多岐にわたる。システムに対するスタッフの評価は高く、利用開始から約15年たった今でも「使い勝手には満足している」という。

photo インフォメーションカウンター

 一方、使い勝手とは別の点で課題が生まれていた。各ターミナルではインフォメーションカウンターに加え、数人のスタッフが構内を巡回して案内サービスを提供している。しかし同システムはPCからしか利用できず、巡回中のスタッフがシステム内の情報を知るためにはカウンターに電話で問い合わせる必要があったのだ。

 「巡回スタッフがたびたび電話でカウンターに問い合わせていたので、お客様対応の遅れを生んでいたほか、通話相手のスタッフの時間もうばってしまっていました。そして何より、問い合わせいただいたお客様に『このスタッフに聞いて大丈夫だったのだろうか?』と不安を抱かせてしまう問題もありました」と成田国際空港の小山千尋さん(事業部門旅客ターミナル部 旅客サービス事業グループ主席)は振り返る。

 スタッフの持ち場によって生まれていた“情報格差”をいかに解消するか――この課題を解決するため、成田空港は巡回スタッフへのタブレット導入を決めたという。

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