成田空港の旅客サービスを変えたiPad導入の舞台裏導入事例(2/3 ページ)

» 2013年12月13日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

既存のNotes/Dominoを生かして約3カ月でモバイル版を構築

 成田空港がタブレット端末の導入に乗り出したのは初代iPadが発売された2010年のこと。まずはテスト端末を導入してインターネット接続環境を用意したが、「インターネット上に公開されている情報はお客様自身も見ることができるため、それだけでは期待していたような効果が得られなかった」(小山さん)という。

photo 成田国際空港の松本英久さん(経営企画部門IT推進部 情報企画グループ マネージャー)

 そこで同空港は本格的なタブレット活用に向け、これまでPCでしか使えなかった旅客案内サービスシステムのiPad対応版の開発に着手。システム構築作業自体は、Notes/DominoのWebアプリケーション開発機能を活用することで3カ月程度で完了したという。新システムは2012年6月に本格稼働を開始し、スタッフがどこにいてもiPadのWebブラウザ経由で旅客案内サービスシステムにアクセスできるようになった。

 新システムの効果はすでに現れているという。「空港の案内業務では1分1秒のスピードが重要です。新システムではお客様に聞かれたその場ですぐに情報を調べて対応できるようになりました」と小山さん。さらに、スタッフが構内で問題箇所を見つけた際などにiPadの内蔵カメラで写真を撮り、旅客案内サービスシステムに投稿する――といった一歩進んだ使い方も行われているという。

 iPad利用時のセキュリティ対策としては、端末紛失時などにデータを遠隔消去するiPadのリモートワイプ機能のほか、旅客案内サービスシステムに一定時間アクセスしなかった際に自動でログアウトする仕組みを採用。また、スタッフ専用Wi-Fiのネットワーク層でもセキュリティ対策を図っているという。

一般向け無料アプリもフル活用

 成田空港のiPad活用は旅客案内サービスシステムの利用だけにとどまらない。App Storeで一般ユーザー向けに公開されている無料アプリも必要に応じてインストールし、旅客向けの案内業務に役立てている。

photo 成田国際空港の旅客案内スタッフが活用しているiPadアプリの一例(クリックで拡大)

 例えば、旅客に交通情報を聞かれた際にはヤフーの交通情報アプリ「Yahoo!乗換案内」を活用。さらに、筆談用アプリを使って聴覚障害を持つ旅客に案内サービスを提供したり、成田空港が一般向けに提供している翻訳アプリ「NariTra」を使って外国人旅客にサービスを提供するなど、ITシステムの手助けが必要となるシーンに応じてさまざまな無料アプリを使い分けている。

 「使えるものは全て使おうという方針です」と松本さん。タブレット端末を活用する上で必要となる全てのツールを独自に用意しようとするとコストがかさみ、社内で予算を得るのも難しくなる。成田空港では、既存のNotes/Dominoを生かしつつ無料アプリを活用することで、IT推進部の通常予算内でiPad導入を完了できたという。

 また、iPadの利用開始に当たってスタッフ向けレクチャーなどは特に必要なかったという。「案内スタッフには若い女性が多く、もともとスマートフォンなどの使い方に慣れている人が多かったようです」と小山さんは話す。

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