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» 2014年10月07日 08時00分 UPDATE

情シスの横顔:IT主導で東急グループのビジネスを拡大する 東急電鉄・小原さん

新システムの大型導入プロジェクトを成功させるべく、世界中の開発拠点を飛び回り、エンジニアたちと日夜議論を交わしているのが、東急電鉄の小原さんだ。

[伏見学,ITmedia]

企業のIT部門で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー

 1922年9月に創業した目黒蒲田電鉄を前身とし、1942年5月に現在の商号となった東京急行電鉄(東急電鉄)は、東急グループの中核企業として、渋谷ならびにそこから郊外に延びる沿線エリアの発展に貢献してきた。2013年度の輸送人員は11億1663万人、1日当たり平均306万人と、全国の私鉄の中で断トツの数を誇る。

東京急行電鉄 生活サービス事業部 ICTメディア戦略部の小原裕弥さん 東京急行電鉄 生活サービス事業部 ICTメディア戦略部の小原裕弥さん

 その東急電鉄に2009年に入社し、現在は大規模なITシステム開発プロジェクトを成功させるべく世界中を飛び回っているのが、生活サービス事業部 ICTメディア戦略部の小原裕弥さんだ。

 東急電鉄の新入社員は、他社に比べて比較的長期の研修を受けることになる。一般的なビジネスマナーを学ぶほか、数カ月にわたって、東急カードや東急ストア、ホテル事業などグループの中でB2C向けサービスを手掛ける子会社で実業務を経験する。小原さんはセルリアンタワー東急ホテルで研修したそうである。さらに東急線の駅に勤務して、現場の駅員とともにアナウンス業務などを行った。

 研修終了後、情報システム部門に配属となる。大学時代は文系専攻で、ITに対する専門的な知識はなかったので、基礎から一つ一つ学んでいった。配属されてすぐに担当したのが、グループウェア刷新プロジェクトである。これまで利用していたIBM NotesからMicrosoft SharePointへ移行するというプロジェクトの中で、数百ある社内データベースの仕様確認や、SIベンダーへ開発、設計の指示などを行った。

 「いきなりプロジェクトに放り込まれたため苦労は多かった」と小原さん。例えば、ミーティングで飛び交う専門用語が分からないので、すべて議事録をとり、分からない点は調べたり、先輩に尋ねたりして、知識を身に付けていった。

 また、エンドユーザーとのやり取りにも気を配った。「システムの観点で話してもユーザーからは理解を得られません。一方で、ユーザーはやりたいことをどんどん要求してきます。お互いの妥協点を見つけるのが大変でした」と小原さんは振り返る。そこで、ユーザーは何をしたいのか、問題の本質は何かという点を丁寧にヒアリングして、システム開発に落とし込むことを意識したという。

海外ベンダーとの交渉術を学ぶ

 その後、小原さんは2011年からは子会社であるイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)のITビジネス事業部にも籍を置き、主に顧客/請求管理を行うビリングCRMシステムの導入を担当している。

 2年ほど携わっているこのシステム導入プロジェクトにおいて、半年間はPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)としてベンダー管理やスケジュール管理などを行い、現在は開発のプロジェクトリーダーを務めている。

 社内外で150人ほどを動員する大型プロジェクト、さらにはカナダを拠点とする海外ベンダーのCRMシステムなので、開発拠点はポルトガル、インド、スペインと世界中に分散している。「最初は言葉の壁、文化の壁に苦しみました」と小原さんは話す。

 特に文化面での課題が大きかった。海外ベンダーは日本のように“あうんの呼吸”は通用せず、要件定義などはとことん詳細まで詰めないといけない。また、日本のベンダーの場合、例えば、ケーブルテレビの加入ケースを作ってほしいと依頼すると、解約ケースも必要だという提案がある。海外ベンダーの場合、基本的に要望として伝えたことしか作業しない。実際、「これくらい言わなくても分かるでしょう」というスタンスで開発を進めていたら、最終的にベンダーから上がってきたのが、小原さんが意図するものとまったく異なっていたという反省があったそうである。

 システムテストの実施率についても価値観の違いがあった。日本では100%を目指すのが当然だが、海外だと95%まで実施して、残り5%は手動でやるということがざらにあるという。

 「先方の見解だと、一回顧客に請求を出し間違えても次回で訂正すれば問題ないというようです。しかし、日本の場合、一度でも間違った請求を出すと確実に顧客からの信頼を失います。こういった認識や価値観の違いを理解してもらうのに苦労しました」(小原さん)

 では、理解を得るためにはどうすればいいのか。小原さんは「直接対面でとことん話し合うのが大切」だと感じている。当初は週に何度かテレビ会議でディスカッションしていたが、それではうまく行かないケースが多数あったようだ。逆に直接出会い、根を詰めてやることですんなりと解決することが多かったという。イッツコムとしても海外ベンダーのシステムを採用するのはまだ2回目だったため、会社としてもこのプロジェクトを通じて知見を得るとともに、交渉術などを学ぶことができたそうだ。

東急グループのITを担う存在に

 今後のキャリアについて、小原さんは「東急グループのITを担っていきたい」と意気込む。実は小原さんがイッツコムのIT部門を兼務するのも、将来的にはグループ全体のITを統括していきたいという部署の戦略がある。現に東急電鉄のICT戦略部から東急百貨店、東急エージェンシーなどへ続々と人材が出向、兼務しているそうだ。

 東急グループの経営層は、新しい事業や戦略を起こす上でITは不可欠だという考えを持っている。その部分をサポートする組織としてIT部門に対する期待も大きい。IT投資も積極的で、コスト削減よりも攻めの姿勢を持っているそうだ。新入社員も毎年のようにICT戦略部に配属となっているため、計15人の所帯は若手が多く、大いに勢いがある。

 元々は街作りに興味を持って東急電鉄に入社した小原さん。いつの日かITを駆使するような都市計画プロジェクトにかかわるチャンスを心待ちにしている。

IT部門は会社の事業を支えるという役割もありますが、攻めの部門としてITをベースにどう事業化していくかという点も考えていくべきでしょう IT部門は会社の事業を支えるという役割もありますが、攻めの部門としてITをベースにどう事業化していくかという点も考えていくべきでしょう

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