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» 2014年11月19日 10時00分 UPDATE

Computer Weekly:HPの分社化をアナリストたちが総攻撃「HPは5年以内に立ち行かなくなる」

米HPが2社に分社化すると発表した。この施策は、これまで同社の企業再生計画の中で明言されていたものではなく、企業やコンシュ―マーがITを購入する方法が変わってきたことに対する、より現実的な対応だ。

[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 メグ・ホイットマン氏がHPのCEOに就任したのは2011年。当時の同氏は、前任者のレオ・アポテカー氏が提案していた(分社化の)方向に同社を導く決断を結局自ら下すことになるとは、予測していなかっただろう。

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 アポテカー氏は、HPはPC事業から撤退してソフトウェアに注力すると決断した。同氏はその方針に従って70億ポンドを投じ、エンタープライズ向けのデータ解析サービスを所有していた英Autonomyを買収したことによって、CEOを解任された。それが3年前のことだ。そして今、ホイットマン氏がHPの分社化を実現しようとしている。

 2014年10月、HPは同社の既存事業を2社に分社化すると発表した。Hewlett-Packard Enterpriseは企業のITニーズに適応した、基盤となるテクノロジー、ソフトウェア、サービスのポートフォリオを提供する。一方HP Inc.は、個人向けシステムおよびプリンタ事業を展開する。

 これはリスクの高い戦略だ。2014年第2四半期、HPの個人向けシステム部門の売り上げは12%増だった。これに対してサービス部門は、アウトソーシング事業の売上額が35億ドルで前年比8%減、アプリケーションおよびビジネスサービス事業の売上額が21億ドルで前年比4%減だった。

 HPのソフトウェアおよびサービス部門は、PC部門に比べて苦戦している。それでもHPは今なお、世界的なトップメーカーであることは事実だ。PCマーケットシェアに関するGartnerの最新の調査結果によると、HPはヨーロッパのPC市場では20.5%のシェアを持つトップメーカーだ。また調査対象の四半期の売り上げも好調で、461万台を出荷した。

 「現在ハイテク業界では、顧客の世代交代によって多くの変化が起こっている。特にHPのように、従来ハードウェアと保守業務に注力した莫大なポートフォリオを抱えた企業では、この変化が顕著に現れる」と、米調査会社Forrester Researchでリサーチディレクターを務めるピーター・バリス氏は語る。「これからの企業は、業務で利用するテクノロジーを進化させるソフトウェアで、他社との差別化を図らなければならない」(バリス氏)

HPが抱える厳しい現実

 米調査会社のGartnerは、2013年のベンダー評価リポートで、HPについて次のように指摘していた。「HPの売り上げは、今もハードウェアのそれに頼るところが大きい。近年参入した分野の売り上げは、現時点ではさほど上がっていないため、HP全体としては業績回復や規模拡大に至っていない。さらに、米Cisco、米VMware、米Apple、米Microsoftといったベンダーが、HPの基幹事業であったサーバ、デスクトップPC、ノートPCなどの分野に参入し、その影響が現れている。その上HPは、クラウド、タブレット端末、モバイル対応などの主要セグメントで、タイミング良く効果的なイノベーションを市場に投入できなかったために、苦境に立っている」

 HPが抱えている多くの課題の中でGartnerが特に指摘しているのは、顧客のポートフォリオの合理化やモダナイゼーションの施策をHPがサポートすると、売り上げの伸びや収益目標の達成が危うくなることだ。言い換えると、サーバの統合や仮想化、クラウドコンピューティングの普及によって、顧客がITインフラに支払うコストは下がり続けている。この風潮によって、従来アプリケーションのアウトソーシング事業から得ていたHPの売り上げが浸食されている。

 金融関連のWebサイト「Seeking Alpha」 において、アナリストのカート・アヴァード氏は「HPのPC事業はまずまず堅調だ」と記している。ただし同氏は続けて次のように指摘している。「一方、(分社後の)Hewlett-Packard Enterpriseは苦しい局面に立たされるだろう。業績が思わしくない部門のやりくりに現在でも苦戦しているところからみて、5年以内にこの企業が立ち行かなくなる可能性は50%以上だ。仮に設立直後の数年はどうにかやり過ごせたとしても、経営が長く継続できる可能性は極めて小さい」

一貫性を欠くクラウド戦略

 2014年9月、HPはハイブリッドクラウドのプロバイダー、米Eucalyptus Systems(以下「Eucalyptus」)を1億ドルで買収し、EucalyptusのCEOだったマルテン・ミコス氏をHPに迎え入れた。ミコス氏はかつてMySQL社(現在はOracleが所有)を設立した経歴を持つ。当時、ホイットマン氏は次のように語った。「マルテンが加われば、当社のクラウド部門はこの分野で世界最高クラスのチームとなる。われわれが3年以上の時間をかけて取り組んできた(クラウドの)戦略が、強化され加速されるだろう。すなわち当社は引き続き、オープンソースのハイブリッドクラウドを顧客が構築し利用し管理するのを支援する」

 だが、EucalyptusはそもそもAmazon Web Services(AWS)との統合をセールスポイントにしていた。これを考えると、HPがEucalyptusを買収する値打ちはあったのかと疑問を投げかけているのは、Forrester Researchのアナリストであるローレン・ネルソン氏だ。HPはOpenStackを熱心に支持しているからだ。同社のHelion OpenStackは、プライベート、パブリック、ハイブリッドと、全ての形態のクラウドに共通して適用できるアーキテクチャとして位置付けられている。

 ネルソン氏は「Quick Take: HP Acquires Eucalyptus Systems」(素早い実行:HPがEucalyptus Systemsを買収)と題したリポートで、次のように主張している。「OpenStackベースのパブリッククラウドを支持する有力企業(例えばHPや米IBM)が増えて、AWS、Google、Microsoft Azureに対抗する勢力となりつつある。その一団は、大規模組織向けのプライベートクラウドに関しては、OpenStack APIをサポートしている点でAWS APIをサポートする企業よりもより優位にある。そんなHPが、AWSとの互換性が充実したクラウドプラットフォームの企業を買収したのだから、今後の業界での立場を顧客に対して明確に示す必要がある」

IT業界の大転換

 2013年、IT業界では大手企業が大規模な変革を断行する例が目立った。米Dellの創設者マイケル・デル氏は、同社の株式を買い取り非公開化した。短期で利益を上げることを要求してくる株主からあれこれ探られることなく、デル氏が主導権を握って戦略転換を推進するためだ。

 また、IBMはx86サーバ事業をLenovoに売却し米SoftLayerを買収して、クラウドコンピューティングの分野で競争力を強化した。これによって同社は、自然言語処理を行うエキスパートシステム「Watson」などの開発について、当初展開していた医療分野の調査研究をサポートするスーパーコンピュータの市場からより多様な市場へスケールアウトすることが可能になった。

 そして今度はHPの番だ。HPは、今の自社の強みがどこにあるかを見極める必要がある。今はどの企業も、コモディティ化したx86ベースのPCやサーバ機に高い料金を払ってはくれない。Lenovoがエンタープライズ市場に進出してきた状況では、なおさらのことだ。

 HPのProliantサーバ事業について、Gartnerのアナリスト、エロル・ラシット氏は次のように語る。「Proliantは実質上、同社で最大の売り上げを計上している稼ぎ頭だ。HPは今でもサーバ機の分野ではトップの売り上げを誇るベンダーだ。なぜならx86ラインのProliantは、幅広い分野のすみずみまでインストールベースが普及している」

 ただしHPの将来へのカギを握っているのは、サーバ事業の一環としてハイパースケールの顧客に対するカスタムエンジニアリングに注力している、ハイパースケールグループだと同氏は付け加える。ハイパースケールグループは、新製品であるMoonshotサーバの市場展開を担当する。

 「ハイパースケール形式のコンピューティングは、Webスケール(webscale)ITとも呼ばれる。企業のサーバ購入のコモディティ化が進むと、ハイパースケールはHPにとっての脅威となる。従ってHPの課題は、現在同社の主流である顧客層にとって有益であり、かつHP自身も利益が得られるやり方で、ハイパースケールから得た知識を顧客に対するサービスに還元することだ」とラシット氏は説明する。

 HPがハイエンド領域向けにここ数年取り組んでいるOdysseyプログラムについてラシット氏は、HPのx86サーバ機の競争力を強化し、ひいては他社との差別化要因になると期待する。Odysseyプログラムから生まれた最初の製品は、「Integrity Superdome 2」だ。これは実質的にx86ベースのHP Superdomeサーバで、スケールアップした独SAPのSAP HANAワークロードを稼働させるために構築されている。

 特にLenovoがサーバ市場に進出してきたとなると、HPが他社との差別化を図るために注力しなければならないのはこの分野だとラシット氏は考えている。

 振り返ると2000年に、当時のCEOカーリー・フィオリーナ氏は、HPの事業再生計画はネットビジネス、情報端末、無停止インターネット基盤を中心に据えて展開すると語っていた。これは、2008年に139億ドルで米Electronic Data Systems(EDS)を買収するよりもずっと前の話だ。このEDS(現在の名称は「HP Enterprise Services」)は、今は厳しい状況にあるように見える。また、2011年に117億ドルを投じたAutonomyの買収は、今なお議論の的である。HPは時計の針を14年前に戻して、呼び方は今とは違うが、2000年当時に想定した方向で事業を立て直す必要があることははっきりしている。

 ユーザー企業のCIOたちの間では、HPが分社化という変革に踏み切ったことについて、首をかしげる者が多い。まず顧客にとっては、HP Inc.とHP Enterpriseに分かれたことで、以前からの関係をそのまま継続するわけにはいかなくなった。特に事業戦略に関する提携関係を結んでいた顧客には、大きく影響する。

 実際CIOにとって、HPのテクノロジーを組み込んだ今後の戦略を立案することは難しくなる。分社化によって、HPは同社の事業の先行きが不透明になって競合他社につけ込まれるリスクを負ったことになる。他方、新たに誕生した2社は既存の顧客を粗末に扱ってはいけないと語るのは、HPのユーザーグループ(HPUG)の事務局長であるレオナード・クレノー氏だ。

 「こういう変革を実行したときには、多少の失敗も伴うのが世の常だ。ただし巨大な企業を分社化することには、大きなメリットもある。ある分野に特化して、全社を挙げて注力することができる」と同氏は話す。「新会社となった2社は、事業を詳細に見直した上で、顧客を何よりも尊重する対応ができるかどうかで将来が分かれる」

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