Microsoftを追い詰めるApple−IBM連合の脅威Computer Weekly

IBMはAppleと提携することで、業界に特化した統合アプリケーションを「iOS」向けに開発するとみられている。この無視できない事態に、Microsoftは対応を迫られている。

» 2014年09月03日 10時00分 公開
[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 米AppleのiOSは米Googleの「Android」に市場シェアを奪われつつある。また、以前Computer Weeklyが報告したように、ハイエンドタブレットやスマートフォンの市場も頭打ち状態だ。米IBMは、モバイルデバイス管理の米Fiberlinkとクラウド管理の米SoftLayerを買収し、開発者向けクラウドの「Bluemix」をリリースした。そのIBMと提携することで、AppleにはエンタープライズITへの道筋が開けた。

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 一方、エンタープライズITは米Microsoftが「Enterprise Mobility Suite」のターゲットに定めようとしている分野だ。同社CEOのサトヤ・ナデラ氏はその戦略について、デバイスの多様性を軸に説明した。ここでMicrosoftとApple+IBM陣営が衝突することになる。

 「AppleとIBMの提携は、Microsoft AzureとNokiaを戦略の中心に据えるMicrosoftにとって脅威となる」と話すのは英Warwick Business Schoolのマーク・スキルトン教授だ。「Microsoftは、モバイル分野とクラウド分野の両方に挑んでいるが、コンシューマー市場でもエンタープライズ市場でも優位には立てないだろう。先日、米Amazonは電子書籍リーダーに続き独自のモバイルデバイスをリリースした。しかし、米Facebookがモバイル参入に失敗したように、これらの企業にとっての課題はコンシューマー市場だけでなくエンタープライズ市場向けにも優れたサービスやコンテンツを作成できるかどうかだ」

 これまでMicrosoftのCEOは、デバイスとクラウドコンピューティングに全面的に特化しているエンタープライズIT企業はないという考えに基づき、新生Microsoftの構想を打ち出した。MicrosoftにはIBMへの対応策が必要なのは間違いない。

 ナデラ氏は、Worldwide Partner Conference(WPC)2014で自社のクラウド戦略に関する見解を示した。また、MicrosoftはNokiaをMicrosoft製品ファミリーに統合する方法も模索している。

 デバイス面では、NokiaのAndroidフォンをWindowsフォンに変える。これについて、ナデラ氏は次のように話している。「洗練されたNokia X製品のデザインをWindows PhoneのLumia製品に移し変えることを予定している」

今後を担うクラウド

 ナデラ氏はWPCで、「デバイスとサービスの企業」の次の段階として、クラウドコンピューティングを重視する方針を述べた。

 WPCの基調講演で同氏は次のように語った。「大きなチャンスが到来している。全世界の地理的/政治的な実情や規制制度に対応した上、ハイパースケールの経済効果を提供するエンタープライズ級のインフラストラクチャを構築するのはMicrosoftしかない。プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドなど、企業の複雑なコンピューティングニーズ全てに対してデータセンターバックプレーンを提供できるのがMicrosoftだ」

 これは大規模な組織改革に結び付き、今後12カ月で1万8000人の人員削減が行われる。ナデラ氏はMicrosoftのエンジニアリングプロセスの近代化と、管理階層の数を減らすことを望んでいるようだ。

 同氏はさらに次のように続けた。「今Microsoftがあるのは、好機の判断や次期プラットフォームの構想に成功したからだけではなく、Microsoft自体が変化したからでもある。当社は、根本的な組織の在り方、働き方、顧客に提供する価値などを変えてきた。これは本当に骨が折れる作業だが、企業文化の変化は大胆に推し進めなければならない。当社がこの取り組みを成功させ、顧客を獲得するには、1回限りの変化ではなく、継続的な刷新を重ねる必要がある」

 また、インフラストラクチャバックプレーンの考え方についても「このエコシステムが市場にもたらす最大のメリットの1つ」と語った。

 Microsoftは1990年代、Windows上に独自の製品を作成できる共通のプログラミングモデルをサードパーティー開発者、PCメーカー、サービスプロバイダーに提供することで、Windowsエコシステムを成長させてきた。

次のデスクトップWindows

 現在、オンプレミス、プライベートクラウドやパブリッククラウドの展開全般にわたってMicrosoftの新しいサーバサイドコンピューティングエコシステムの土台となっているのがMicrosoft Azureだ。MicrosoftはデスクトップOSの開発に取り組んではいるが、デバイス多様性戦略においてはデスクトップWindowsの重要性は小さくなっている。

 米Dell、米HP、台湾Acer、中国Lenovoなどの主要ハードウェアパートナーがWindowsタブレット、ノートPC、ハイブリッドPCなどを販売しながら同時にAndroidタブレットも販売していることから、Windowsはかつてのような金のなる木ではないとMicrosoftも認めているようだ。

 ナデラ氏は次のように話した。「包括的なエンドユーザーインフラストラクチャを構築する予定もある。デバイス管理、ID管理、データセキュリティをまとめたEnterprise Mobility Suiteは、素晴らしいテクノロジーで作られたこれ以上ないソリューションだ。ITが複雑だからこそ、この分野でMicrosoftが真価を発揮する」

 デバイス数は増加する。全ての企業デバイスを、デバイスに依存しないクラウドベースの「Microsoft Active Directory」で認証する必要があるならば、各デバイスにクライアントアクセスライセンス(CAL)が必要になる。

 英Creative Intellect Consultingの主席アナリスト、クライブ・ハワード氏は次のように話す。「Microsoftの経営陣には確固たる考えがある。彼らは、Windowsではなくクラウドをプラットフォームと捉え、OSは他のサービスを利用するためのユーザーインタフェース(UI)だと認識している。『Office 365』の仕組みは、そのようなMicrosoftの考えを表している」

 Active DirectoryとOffice 365には、かつてのWindowsとOfficeのように、ユーザーを囲い込む専有テクノロジーになるだけの潜在能力がある。

 最近、米Forresterのアナリスト、テッド・シャドラー氏は次のように指摘した。「サトヤ・ナデラ氏は、Microsoftの注力分野を、常に優れた成果を出している2つの分野にあらためて設定するという大きな行動に出ている。1つがカスタムアプリケーションの構築とホスト用のソフトウェアプラットフォームで、もう1つが全世界で何十億人ものユーザーが仕事に使用する生産性ツールキットとプラットフォームだ。先日のプラットフォームと生産性を重視した人員と製品についてのナデラ氏の発表は、広範な目標を実現するためにはリスクを負い、事業を断念することを厭わない同氏の意欲が表れている」

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