Office 365は機能の追加よりも使いやすさ重視へ方向転換Computer Weekly

毎日のようにコードが更新されるOffice 365では、ユーザーが新機能を把握し、使いこなすのは困難になっている。この現状は、Office担当ゼネラルマネジャーも把握しているという。

» 2014年12月17日 10時00分 公開
[Cliff Saran,Computer Weekly]
Computer Weekly

 クラウドコンピューティングの普及に伴い、アプリケーションのライセンス体系、開発方式、配布方式などが大きく変わりつつある。米MicrosoftのOffice担当ゼネラルマネジャー、ジュリア・ホワイト氏は先日、そんな変化がユーザーにどう影響を及ぼすかについて語った。

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 かつてオンプレミスのMicrosoft Officeが主流だった時代、Microsoftはバージョンアップのたびに新機能を多数追加した。そして、同社の製品はもはやブロートウェア(肥大化したソフトウェア)だと、ユーザーから非難の声が上がるようになった。製品に含まれる機能の20%しか利用しないユーザーも珍しくなく、(バージョンアップで追加された)新機能を使いこなそうとすると、その学習曲線は急こう配になった。

 ソフトウェアがサービスとして公開される時代を迎えて、状況はさらに悪化した。Microsoft Officeの開発は継続しており、バージョンの更新ファイルを公開する頻度が高くなったからだ。SaaSプロバイダーとしてのMicrosoftの課題は、価格面の競争力を維持しつつ、製品の価値をアピールすることだ。

 SaaSプロバイダーの場合、新機能を適用してくれるユーザーを十分獲得できなければ、結果として価格だけの競争になる。そこでGoogleは、Microsoft Officeユーザーに積極的に狙いを定めて、クラウドベースのコラボレーション、事務処理の生産性向上、電子メールなどを掲げて、エンタープライズ製品の売り込みを仕掛けている。

 Microsoft製品からGoogle製品に乗り換えた企業は、機能が豊富すぎるMicrosoft Officeに比べ、Google製品は十分な機能を備えていて、かつ費用を抑えられるという。無料版を提供しているライバルのGoogleと違って、Office 365は全て(有料の)サブスクリプションが必要だ。

Office 365のセキュリティ

 セキュリティは現在、競合製品との機能競争の最前線となっている。Microsoft Office 365は欧州連合(EU)によって策定された標準契約条項(EUモデル契約条項)やISO 27000規格などに準拠している。Office 365で操作するデータは暗号化されるので、セキュリティは確保される。

 2014年10月にスペインのバルセロナで開催されたMicrosoft主催のカンファレンス「TechEd Europe 2014」で、ジュリア・ホワイト氏は本誌Computer Weeklyのインタビューに応じて、同社がセキュリティと製品の使いやすさとのバランスをどう取っているかについて、次のように語った。

 「これまでの数十年間、(セキュリティといえば)情報へのアクセスを制限するためのテクノロジーを発展させてきた。だが、もはやそれだけではビジネスのニーズを満たせない時代になった。現在は、GmailやDropboxのようなコンシューマー向けのクラウドアプリでも、プロバイダーはセキュリティに配慮するようになっている。当社は根本的な方針として、顧客自身がセキュリティの制御を全面的に実行するための仕掛けを提供したいと考えている。ただし、セキュリティのために顧客の生産性を犠牲にすることは避けたい」

 ホワイト氏によると、ITインフラを一通り配備すると(システムを過信して)セキュリティに対する意識が薄れるユーザー企業が少なくないという。Microsoftは、ユーザーがIT利用のセキュリティ規約に抵触しそうな操作を実行すると、メッセージを表示して注意を促す「ポリシーヒント」機能を製品に組み込んでいる。「企業のIT部門担当者は、デジタル著作権管理(DRM)やホスト側での暗号化など、幅広い分野の規約に対してこの機能を適用することができる」と同氏は話す。

Office 365の操作をより簡単に

 MicrosoftはOffice 365を定期的に更新している。言い換えると、ユーザーには製品にどの機能がいつ追加されるかが分かりにくくなった。

「(サービスとして公開しているOffice 365は)毎日更新しているが、単に新機能を追加しているだけではない。新しいエクスペリエンス(操作感)も少しずつ加えている」とホワイト氏は説明する。

 ここまで製品開発が活発だと、現在利用しているOffice 365にどんな機能があるのか、新しい機能はどのように利用すれば便利なのかをユーザーが把握するのが困難だ。そのことは同氏も認めている。

 「われわれの活動のペースは非常に速く、顧客よりも少しだけ先走っている。だから私が日ごろ一番気に懸けているのは、何を顧客に提供するべきか、顧客を置き去りにしないで新しいエクスペリエンスに誘導するにはどうすればいいのかということだ」とホワイト氏は語る。そのための調査研究に、Microsoftは膨大な時間をかけて取り組んでいると同氏は話す。「われわれはこの分野でイノベーションを実現させようとしている。例えば機械学習エンジンの導入だ。具体例を挙げると、受信トレイにたまった受信メールをユーザーが整理する必要はなくなる。メールを自動的に仕分ける機械学習エンジンを導入した」

 さらに別の例を挙げると、Tell Me機能もある。これは、ユーザーが実行したいタスクの操作が分からなくなったとき、例えば「表の挿入」とTell Meに質問を入力すると、関連するコマンドの一覧を表示する機能だ。「機械学習エンジンが操作したいコマンドに誘導する。ユーザーはそのコマンドがウィンドウのどこにあるのか、探し回る必要はない」とホワイト氏は説明する。この機能は、個々のユーザーにとって使いやすい形式でコマンドを表示するものだと、同氏はさらに付け加える。

 「現在われわれは方向転換を図っている。これまでは機能をたくさん提供してきたが、今後はユーザーが使いたい機能を、必要なときにタイムリーに提供するところに力を入れる」(ホワイト氏)

 Microsoftはクラウド環境と検索エンジンのBingを所有しているので、両者を組み合わせて、ユーザーが実行したい操作を早く的確に把握することができるとホワイト氏は主張する。

 「Office製品のユーザーインタフェースに導入した『リボン』は、コマンドを論理的な順序で表示することについての、最初の試みだった。次のステップは、ユーザーが実行したいタスクを声で質問すれば、適切な操作を実行する機能を組み込むことだ」とホワイト氏は語る。この機能には、Microsoftの音声認識エンジン「Cortana」で活用しているテクノロジーを利用する。

 「将来のユーザーエクスペリエンスは、機械学習を活用したパーソナルライズインテリジェンスがカギを握っていると考えている」とホワイト氏は締めくくった。

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