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» 2015年01月06日 08時00分 UPDATE

2015年 新春インタビュー特集:「ヒューマンセントリックIoT」推進、IoTビジネスは顧客との共創で──富士通・香川執行役員

身近な家電から、自動運転自動車、社会・公共システムまで。もうすぐ、ヒト・モノ・環境のあらゆる情報がデジタル化され、ネットワークにつながる「IoT」時代が訪れる。企業は何を考え、実行すべきか。富士通のIoTビジネス担当執行役員 香川進吾氏に同社のIoT戦略を聞いた。

[岩城俊介,ITmedia]
photo 富士通 執行役員ネットワークサービス事業本部長の香川進吾氏

―― 自社のビジネスを振り返り、2014年はどのような1年でしたか。

香川氏 私が担当するネットワークビジネスを進める上で着目していた大きな流れが3つありました。

 (1)スマートデバイスが、生活、そしてビジネススタイルに大きな変化をもたらしていること

 (2)顧客を巻き込んだビジネスの成長戦略を、ICTの活用によって描こうとする企業が増えていること

 (3)IoT時代の幕開け

 です。

 従来から、富士通のネットワークビジネスは「人とビジネスをつなぐ」ことによってお客様の事業への貢献することをテーマに展開してきました。2014年は、これらの大きな変化に対応するための新しいネットワークビジネスを開始できた1年ととらえています。

 まずスマートデバイスへの対応という面では、以前から提供しているスマートデバイスから安全に社内にアクセスするサービスを拡充し、スマートデバイスのシンクライアント化を進める商品(FENICS IIユニバーサルコネクト アプリケーションブリッジサービス)、スマートデバイスのアクセス環境の充実を図るため、事務所や建屋内のWi-Fiとネットワーク、クラウドまで一括で提供するサービス(FENICS IIビジネスWi-Fiサービス)の提供をはじめました。

 そしてIoT時代の到来に向けて、富士通のIoTへの進むべき道、取り組みを示した「ヒューマンセントリックIoT」の概念を2014年11月に発表しました。IoTによるデジタル情報を活用した価値のある新しいビジネスは、お客様と一緒に造り出す仕組みがなければ成り立たない。その世界を実現するため、ビジネスパートナーとグローバルなエコシステムを形成した「IoTプラットフォーム」の提供を率先して提言していくというものです。

 富士通のIoTプラットフォームは、アプリケーション開発環境をクラウド上で容易に利用でき、実現性を検証したすでに実績のある「IoTモデル」をもとに、自社のセンサーデバイス、ネットワーク、ミドルウェア、アプリケーションなどを組み合わせることが可能なトータルなシステム環境をつくれます。これにより、お客様がIoTでの新しいビジネスモデルを、簡便かつ低コストで迅速に創出することができるようになります。

―― その活動の中で、特に推進したことは何でしょう。

香川氏 今後のネットワークビジネスの中核と位置付けるIoTビジネスに焦点を当てますと、富士通は以前から機械をネットワークにつなげることで、モノの価値を最大化する「M2Mビジネス」を進めていました。すでに公共、製造、流通など幅広い分野で実績があります。

 それがIoT時代になるとどうなるか。つながるモノは機械だけではなく、人はもちろん、場所や環境そのものもネットワークにつながり、活用用途も爆発的に増えていくことになります。おそらく、みなさんが今想像できないほどの「まったく新しい使われ方」も生まれてくるはずです。

 したがって「IoTで何ができるか」に関する価値の最大化を示すことが重要。それを「ICTでどう具現化するか」が富士通のミッションです。そのIoTへの取り組みを概念としたのが先日発表した「ヒューマンセントリックIoT」です。

―― 「ヒューマンセントリックIoT」は、具体的にはどんなものなのでしょう。

香川氏 富士通は、人々がICTの力を使ってビジネスや社会のイノベーションを起こし、豊かな社会を築くための社会を「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」と名付けています。人を中心とした、人にやさしい社会づくりをしていくという当社のビジョンです。「人を中心に」、ここが富士通らしさだと思います。

 2014年は「IoT元年」として、「より具体的、現実的になってきた」と考えます。ヒューマンセントリックIoTは、そうなるべきという概念とともに、「富士通はそこをリードしていく」という強い思いを込めました。

 その骨子は、

  1. お客様がすぐにIoTを活用した新しいビジネスを始められる環境をIoTプラットフォームとして用意し、お客様と「共創するビジネス」を進めていく
  2. 富士通が中核となって、お客様、ビジネスパートナーと共にIoTのエコシステムを形成していく

 の2つです。

 まず、これら専任で進める組織「IoTビジネス推進室」を立ち上げました。社内の各部門との連携、そしてパートナー様との協業を推進するのが役割です。

 一方で、これまでのM2Mビジネスから続いていることですが、改めて「お客様のビジネスモデル作りの難しさ」にも直面しました。

 例えばICT業界では「保守サービス」がビジネスとして成立していますが、まだ“機械の売り切りモデル”から脱していない業界、業種も多い現状があります。そのようなケースでは、M2MやIoTといった手段の話の前に、いかに保守サービスで費用を回収するかと、M2MやIoTなどでどのような「新たな価値が創出できるか」というお客様の事業改革そのものに踏み込む必要があります。そのため、多くの時間を必要とするケースが多くなっていました。

 ヒューマンセントリックIoTのポイントは、「価値の見える化」を示すため、PoC(Proof Of Concept:新しい技術や概念が実現可能かどうか、試作やデモンストレーションで試す、確認すること)とPoB(Proof Of Business)を事業推進プロセスに組み込んでいます。

―― 「IoT」は範囲が広い。自社のビジネスとしてなかなかイメージしにくいという声もあります。

香川氏 スマートデバイスやSNSの普及によって、利用者/コンシューマーがパワーを持ち始めていますよね。自分が開発した、あるいはメーカーが定義した商品とコンシューマーとのミスマッチが生じることが増えています。商品の価値はずっと同じではなく、どんどん移り変わる。パワーを持ったコンシューマーが変えていっているわけです。だから、自社の商品がどう評価されて、どう使われていって、どういう風にすべきなのかという考察は「平均値を取っても、もうだめ」なのです。その瞬間、その時という、タイムリーにどんどん情報を集めて、それに合うようにしていくことをしなければならない時代が来ています。

 そんな時代の中でも、企業はいろいろな商品を出していかなければなりません。ただ、それを出す時にはコモディティ化して、差別化できない課題が生まれるかもしれません。差別化ができないならば、その人がどういう価値をもって、どういう風に使っているかということを瞬時に知り、それを理解した上で、利用しながら新たな価値をつくっていくことが必要。つまり、それを実現するプラットフォームが必要となってきます。それがIoTであると考えるのはいかがでしょう。

 それは1社ではできません。他業種でも、こんな情報があればいいな、こんなデータがあればこうできるかもしれないと思うお客さんもいます。そのデータを持っている人とか、その実現する技術を持っている企業とか、それを表現するためのさまざま表現方法を持つ方々が集まって「ビジネスのエコシステム」を作らないと実現できないのではないでしょうか。

 「商品を出せばいい、ではなくて、出してどんどん変革していかなくてはいけない」。場合によっては、自分が出したものを否定するまでにならなければならない。そうならないと、新しい、もっと価値のあるものを出せないと思います。

―― それが「共創」の意図でしょうか。

photo 「富士通は、IoTで御社のイノベーションを一緒に起していくためのパートナー。これからはお客様の商品やビジネスの価値向上に寄与していく活動を推進する」(香川氏)

香川氏 富士通としては、このIoTプラットフォームを軸にいろいろなメジャープレーヤーやお客様、パートナーから共感をいただきエコシステムの形成を目指しています。

 つまり「富士通に相談してくれれば、いろいろな人たちと一緒に、新しいものを創り上げられます。富士通は、御社のイノベーションを起こすパートナーです」ということですね。いわゆるコンサルティングとは違い、本当に価値を作ってかなければならないのはとても難しいが、業界を率先してリードする勢いで取り組みたいと思います。

 2015年から「企業のIoT化」の検討はいっそう進むはずです。今、PoC、PoBを検討されているお客様がすでに多く存在します。それを事例にしながら紹介することによって、「自分たちも取り組まないといけない」という機運になっていくと思います。

―― 2015年の事業目標は。

香川氏 基本的には、IoTの大きな流れに対応したネットワークビジネスを事業化していくことが方針です。

 その中でも、IoT時代に対応した利用者の価値を創造する活動を推し進めていきます。今までのシステムインテグレータ(SI)は主に業務システムの価値向上に努めてきました。これからはお客様の商品やビジネスの価値向上に寄与していく活動に変わっていきつつあります。

 その実現のためには、IoTを中心とするつながりのシステムと、従来からある業務システムの双方からお客様のイノベーションを共創していく動きが重要であると考えます。そのための重要なキーファクターとして「IoT」を位置付け、業界をリードしていきます。

―― 最後に、企業の情シス部門がこれからどう考えていくべきかアドバイスを下さい。

香川氏 情シス部門の方々は、我々のようなSIerと一緒になって、これまでもICTをいかに活用して効率化、生産性向上をやられてきていたと思います。

 これからは、我々も変わっていく必要があるので、情シスの方々も「自分達のお客様が誰」であり、「お客様がどういう考えを持っている」ことを理解し、そのために「自分達の持っている商品の価値をどう変えたらいいか、どう強化していくか」ということを「一緒」に考えていけるような位置付けになっていく必要があります。商品を企画開発する部門の人たちは「どういうふうにしたらいいのか」を悩まれている。その悩まれている人、社内のよきパートナーになっていってほしいと思います。そこのマッチングをうまくできれば、ICTを武器にして商品を強くすることができます。

 つまり、我々と向く方向は同じではないかなと思います。「共創」、富士通はそこにきちんと応えていきますが、これは情シス部門も一緒に考えていかなければならなりません。一体になって取り組んでいきたいですね。

(撮影:市原達也)

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