いま一度考えたいSNSの使い方とセキュリティ萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/2 ページ)

» 2015年01月30日 07時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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SNSを利用するときは……

 SNSにおけるセキュリティは、まだ“甘い”といえるだろう。サービスそのものだけではなく、利用者の側面も相まって、攻撃者からすれば本当に“甘い”ものだ。

 SNSへの登録は最低でも次の点を徹底した方がいいだろう。

  • 情報は限りなく少なく、必須の入力項目以外は書かない
  • 設定で公開する情報を制限する。ただし「友達」に対して制御すると、リアルな関係が気まずくなることもあるので慎重に(これで失敗した学生がいた)
  • 自分からの「友達リクエスト」は極力控える(ゼロにはできないが)
  • もし「友達リクエスト」が届いたら上述の通り、必ずリアルの世界で別の通信手段を用いて確認する。確認できない「全くの新規の方」なら、被害の大きさを考慮して承認しない

 これまで様々なSNSから、数億件以上もの情報が漏えいされてきた。サービス自体のセキュリティが危ないだけでなく、設定も危険、外部から「悪意のある友達リクエスト」もくる、本人と友達の個人情報を丸ごと盗んでしまう悪性アプリの台頭、ユーザーの過失もしくは不注意などなど、とてもリスクが高い。目には見えない「情報」であるだけに、人の関心が薄いという状況もよく考えるべきだろう。この連載でも指摘してきたが、SNSの利用を軽く見ては絶対にいけないのだ。

 注意すべきことは、自分が登録した情報だけではない。会話やつぶやきの内容は、10年後もそのままインターネット上に残る。年をとり、就職や子育て、進学、会社での付き合いなど、人生のあらゆるシーンに不安を与えかねない要素になってしまうということだ。また、日本人は匿名性を好む。ある統計によれば米国、フランス、英国などでのTwitterの匿名率は全て10%台だったものの、日本だけは30%台だったという。その理由は「匿名だから安心」という考えからだ。

 しかしその匿名は、ビッグデータ分析をしなくても、ちょっと検索のうまい人の手にかかれば数分で実名が暴かれてしまう。ネットと現実の世界で全く異なる人間のように徹底して振る舞える人は、この世に何人いるだろうか。たぶん、皆無だ。例えば、Twitterで「でもさ、●●くんが言うことは極端じゃねえか」とつぶやく。これで相手が必死に匿名化していても、「●●」くんだと分かってしまう。

 よって、筆者はSNSに登録しても、これを個人的に、積極的に活用することは避けている。SNSで友達になることをリクエストするより、まずメールで相互に意見を交換したいと考えているためでもある(講演会などの場ではアドレスを公開している)。こう記しても、「プライバシーなんて気にしない」と話している人は、その怖さをリアルで体感し、実損を被らないと理解できないかもしれない。説明しても理解しない人は怖い。

 こう記載すると、子どもくらいの方から「もう還暦に近いおじいさんだから、こういう発想をするんでしょ」と言われるだろう。それでも筆者としては、人生を歩んできた“老婆心”でのつもりでいる。人類はまだこうした便利なツールをうまく使いこなすことに慣れていない。多分20年後の方々からすれば、「昔はこんな記事で注意しなきゃいけない状況だったのね」」となるに違いない。

 米国の一部の専門家は、Facebookは後10年もせずに消滅するかもしれないと指摘している。Twitterへの画像投稿は、ほとんど単なる自己満足に過ぎないともいう。そこまで極端ではないが、「いいね!」の数が自分を満足させるバロメーターの1つになっている人は多い。朝食の画像にランチの画像、夜は洒落た居酒屋の料理――それらに心から興味を持つ人はほとんどいない。たぶん、「押さないとマズイ」という強迫観念で押しているだけかもしれない。

 そういう方は自分では気が付かないものだ。せめて時々は、手作りの料理や隠れ家的な場所を発見したとかであれば、まだ寒くならないのだが……。グルメレポーターになりたいなら構わないが、ご自身の情報が「友達」にとって問題になる可能性があることも、ぜひ理解してほしいのである。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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