第2回 プリセールスって「コンサルタント」と何が違うの?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」

前回は「プリセールス」という、“レアキャラ(?)”的な職種があること、そしてどんな業務を担当するかを説明した。プリセールスは、いわゆる「ITコンサルタント」と何が違うのだろうか。

» 2015年02月05日 08時00分 公開

 前回紹介した「プリセールス」の業務内容を会社説明会などで話すと、学生から「では、ITコンサルタントとプリセールスは何が違うのですか?」と質問を受けることがあります。今回はこれらの違いを考えてみましょう。

プリセールスとコンサルタントの違い

photo プリセールス? コンサルタント?

 私は、プリセールスとコンサルタントの一番の違いは「お金を取るか取らないか」だと思います。

 コンサルタントは、会社や自分自身が培った知識やノウハウそのものが商品です。顧客はその人の時間に対価を払い、そのノウハウを教えてもらいます。コンサルタントにとって“知識”は売り物ですので、通常は契約するまでさわりくらいしか教えてもらえません。

 これに対して、プリセールスは自分自身が商品というわけではありません。自社の“製品やサービス”こそがプリセールスの商品です。それらの商品を買っていただけるのであれば、自身のノウハウを無償で情報提供したり、システム設計などもある程度までであれば無償で対応します。

 プリセールスの方がタダだし、それならばと感じたかもしれません。実際問題、コンサルタントなら有償となるノウハウが、プリセールスからならタダで聞けてしまう。こんなこともよくあるでしょう。

 しかしながら、コンサルタントは「自分は有償である」という強いプロフェッショナル意識があり、対価を支払う企業、顧客に対しては時間を費やして深く踏み込んでくれるのが最大の特長です。方向性が定まっていないお客様へは「ワークショップ」を行いますし、要求があれば顧客の社内会議に参加したり、社員に代わって手を動かすこともあります。

 欧米では、ITコンサルタント部門のことを「Professional Service」と呼びます。これは、プロスポーツ選手のように自身の能力が商品であり、これで対価を得る“プロ”だからです。

photo (参考)外資ベンダーのさまざまなSE

IT研修の講師も「コンサルタント」

 外部研修の講師である「トレーナー」という職種があります。外資系ベンダーでは、ITトレーナーはコンサルタント部門であるProfessional Serviceに所属します。一方、日本では親会社から切り離された組織に所属することも多く、コンサルタントというと違和感を覚えた人は多いかもしれません。しかしながら、コンサルティングの重要なアクションの1つとしてワークショップがありますし、「対価をいただいてノウハウを提供する」というトレーナーの仕事はコンサルタントの定義そのものと言えます。

 もちろんベンダーによって多少のずれはあるものの、プリセールスの仕事とはこのようなものです。ご理解いただけましたでしょうか。

 次回からは、この仕事で感じている「ここが変だよ」について、いよいよ本格的に紹介いきたいと思います。

小川大地(おがわ・だいち)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション


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