顔は外人、でも「どさんこ」なMS新社長平野氏 社長交代の狙いと舞台ウラ“若返り”で変革を加速

日本マイクロソフトの社長が50代後半の樋口氏から、40代半ばの平野氏に交代する。「世代交代で変革を加速させる」という外資企業らしい攻めの姿勢がありつつも、数年前から社長人事を計画していたという、非常に“日本企業らしい”一面もあった。

» 2015年03月03日 07時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

 「マイクロソフトはCEOにサティア・ナデラが就任して変革を加速させている。日本マイクロソフトも世代交代が必要なタイミングだ――」

 既報の通り、日本マイクロソフトは3月2日、7月1日付で代表執行役社長の樋口泰行氏が代表執行役 会長に、執行役 専務 マーケティング&オペレーションズ担当の平野拓也氏が代表執行役 社長に就任する人事を発表。同日行われた記者会見で、社長交代の理由について樋口氏はこのように述べた。

 2015年3月末で樋口氏が社長に就任してから丸7年となる。新社長となる平野氏は44歳。現在57歳を迎える樋口氏と比べると10歳以上も“若返る”ことになる。樋口氏は「人格的にも実力的にも、そして熱意やグローバル経験といった点でも、新しいリーダーにふさわしい人材。フレッシュなリーダーシップで、さらに変革を進めてもらいたい」と平野氏に期待を寄せる。

photo 左から代表執行役社長の樋口泰行氏、代表執行役副社長の平野拓也氏、マイクロソフト インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ クルトワ氏

社長交代は「入念な計画があった」

photo 日本マイクロソフト社長の樋口泰行氏。約7年社長を務め、次の世代にバトンタッチする

 今回の人事を平野氏に伝えたのは「2〜3週間ほど前」(樋口氏)とのことだが、次期社長に平野氏を選ぶ構想は数年前からあったという。

 発表会では、樋口氏が「外資系の企業は、突然トップがいなくなったり、空位で続けるといったケースも散見されるが、当社は入念に社長交代の準備を進めてきた」とアピール。平野氏は2005年8月にマイクロソフトに入社後、執行役 常務 エンタープライズサービス担当やエンタープライズビジネス担当、執行役 専務 マーケティング&オペレーションズ担当、東ヨーロッパ地区のゼネラルマネージャーなどの要職を務めてきた。

 マイクロソフト インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ クルトワ氏も「マーケティングオペレーション、エンタープライズ、多国間ビジネスなど、海外事業も含めて主要なビジネスを一通り経験させてきた。彼ならモバイルファースト、クラウドファーストを進め、日本マイクロソフトの素晴らしい実績を続けられるだろう」と太鼓判を押した。

 会長職になる樋口氏は今後、対外活動を中心に動き社長を補佐するという。「古川氏が会長に就いていた時期もあったが、最近は長いこと空位だった。1人で社内外すべての業務を行うのは大変だ。特に日本はクライアントとの関係性が重要になる国。今後はトップ営業や財界、政府への影響力向上に努め、オリンピックなど社会貢献事業を進める予定だ」(樋口氏)

「臆することなく改革を進めていく」

photo 日本マイクロソフト次期社長の平野拓也氏。「よく『外見と名前が一致しませんね』と言われる」と話して会場の笑いを誘った

 樋口氏から“たすき”を受け取る平野氏は「樋口が社長に着任してから、事業や社名変更、社員の働きがい向上、クラウドの推進など数多くの変革を行い、会社は大きく成長した。その後を継ぐのは重責で、身が引きしまる思い」としながらも、さらなる改革を進めるという強い意志を見せた。

 「マイクロソフト全体として、クラウドやデバイスの面でチャレンジャーである部分は多々ある。今後はこの施策に注力していく。日本マイクロソフトとしては『使いたくなる製品』『お客様に愛される会社』『先手を打っていく会社』を目指し、臆することなく改革を進めていくつもりだ」(平野氏)

 具体的なビジョンや経営方針については、正式就任となる7月1日まで樋口氏の協力を得ながら策定していくとのことで、詳細な言及は避けたものの、社会の変化に合わせた新たな提案をしていく目標を語った。

 「社会はモビリティやクラウドの世界に急ピッチで移行しており、デバイスや場所にとらわれない働き方やライフスタイルが強く求められている。今後はクラウドを中心にワクワクする提案をいろいろな分野で積極的に展開していきたい。社員に対してもやりがいのある、チャレンジャー精神に富んだ職場を作っていきたい」(平野氏)

 平野氏は父が日本人、母がアメリカ人のハーフだ。会見では「よく『外見と名前が一致しませんね』と言われる」と話したが、北海道で生まれ育った生粋の“どさんこ”でもある。「自分のベースは、やはり“日本”だと思う」と語る平野氏は、樋口氏が目指してきた“日本に根付き、信頼される会社”というスローガンには強く共感しているという。

 「マイクロソフトに入社して以来、パートナー企業やお客様と密に働くということを意識してきた。お客様の満足のため、良い製品だけでなく、適切なコミュニケーションやタイムリーな対応に注力した思い出がある。新たなビジョンや経営方針をこれから考えるが、『日本に根付き、信頼される会社』という方針は必ず踏襲する」(平野氏)

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