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» 2015年04月24日 08時00分 UPDATE

テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」:第11回 相性問題なんて「SIerが把握」してるでしょ?

機器相性なんて、SIerがなんとかしてくれるよ──。そこに落とし穴がある。相性問題に遭遇して陥る“最悪パターン”を避け、慢性的な人不足にある日本のITインフラの現場にも適する考え方を示そう。

[小川大地(日本HP),ITmedia]
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 以前、レストランでのオーダーを例に挙げ、「アラカルトで選ぶ自信はありますか?」と問いかけさせていただきました。しかしながら、日本にはSIベンダー(SIer)という強力な味方がいます。次のように思われた方もいらっしゃったかもしれません。

  • 「うちはいつもSIerが提案してくるソリューションを選んでるし」
  • 「SIerはプロなのだから、機器相性なんて潰して持ってくるでしょ?」

 確かにSIerはその道のプロですので、明らかにNGな組合せなどは把握しています。「似たような機器構成では実績があるけれど、今回の機種は分からない」とか、「今回のファームウェアバージョンだと分からない」といったグレーなケースもありますが、こういった場合はPoC(Proof of Concept)と呼ぶ事前検証を行ったうえでお客様に最終提案を行います。待たされるかもしれませんが、その分安心できるでしょう。実際、メーカーには年間500件以上のPoCの相談があり、検証センターや検証用貸出機を準備しています。

 ですので、よほど準備不足なSIerでない限り「安定しないのでカットオーバーに間に合いません」などといったミスはないはずです。

機器相性は運用フェーズでやってくる

 実は、冒頭の2つのコメントには落とし穴をあえて設けました。「SIerが提案してくる」「持ってくる」といった言葉です。SIerは強い味方ですが、運用に関する契約をしない限り、無事カットオーバーし、検収が終わると去ってしまいます。

 これはつまり、提案時の組み合わせであればSIerによって相性保証されているものの、運用開始後にOSに大きな修正を加えたり、デバイスドライバやファームウェアのバージョンをアップデートした場合の保証はない、ということです。

 ファミコン時代がよい例です。昔はバグがあっても、直す手段もなく、そのままでした。しかし、現在は(ゲームにせよ、スマホにせよ、PCにせよ)出荷したら終わりということはありません。Windowsなどの「月例パッチ」という言葉からも分かる通り、不具合や脆弱性対策、互換性向上、対応機器の追加など、さまざまな理由でハードもソフトも独自にアップデートを繰り返します。ユーザー側も何かしらのパーツを更新する機会があるでしょう。

photo ジェンガ』(タカラトミーマーケティング)(Amazon.co.jpより)

 ITインフラにおけるアップデートの実施は“ジェンガ”のようなものです。SIerにきれいに積み上げてもらったブロックを引き抜くような作業であり、せっかくの相性バランスを崩しかねません。インフラチームが“塩漬けする”と決めていても、アプリ側の要求によりアップデートを実施せざるを得ないこともあるでしょう。「ここだけ更新すれば……」と思いがちですが、多くは“芋づる式”となっており、得てして大掛かりな作業となります。場合によっては検証機を用意することになるかもしれません。

 実際に相性問題に遭遇した時を考えてみてください。もう返金はされません。マルチベンダーで構成されたシステムの場合などは最悪で、「うちには○○さんの機器はありませんし、これ以上は分かりません」と“たらい回し”にされてしまいます。メーカーまでもがさじを投げたトラブル、自身で早急に解決できますでしょうか。……ムリですよね。

味方のいない運用フェーズは、日本も欧米も状況は一緒

 味方(SIer)のいない運用フェーズは、日本も欧米も状況は一緒と言えます。だからこそ、欧米で人気のコンバージド・インフラストラクチャによるお墨付きは日本にも適していると思うのです。

 このお墨付きは、機種やモデルだけではありません。デバイスドライバやファームウェアバージョンまでもが対象であり、メーカー自身で結合テスト・総合テストを通過した「お墨付きバージョン一覧」が定期的に提供されます。

 ここも大きな違いといえます。運用フェーズにおいて、現場の担当者が恐る恐る“ジェンガ”をしなくてもよいのです。地道な作業が嫌いで効率を重視する欧米人にいかにもウケそうでな話ですが、慢性的な人不足にある日本のITインフラの現場にも適するはずです。もちろん、運用をアウトソースしたり、SIerに費用を支払って再検証いただく、といった方法も選択肢の1つになります。

photo 「面倒は避けたい」これが欧米で人気の理由かもしれません

 相性という言葉は、CPU、メモリ、マザーボード、グラフィックスカードなど、パーツを好きに選んで構成する「自作PC」の世界でも使われています。自作PCは趣味の世界ですのでリスク覚悟かもしれませんが、24時間運転のITインフラはそうはいきません。

 いかにもメーカーが話しそうな、聞こえのよい話に感じた方はいるでしょう。「ベンダーロックイン」という言葉も飛んできそうですね。次回はこの実態について考えてみたいと思います。

小川大地(おがわ・だいち)

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日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション



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