第11回 相性問題なんて「SIerが把握」してるでしょ?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)

機器相性なんて、SIerがなんとかしてくれるよ──。そこに落とし穴がある。相性問題に遭遇して陥る“最悪パターン”を避け、慢性的な人不足にある日本のITインフラの現場にも適する考え方を示そう。

» 2015年04月24日 08時00分 公開

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 以前、レストランでのオーダーを例に挙げ、「アラカルトで選ぶ自信はありますか?」と問いかけさせていただきました。しかしながら、日本にはSIベンダー(SIer)という強力な味方がいます。次のように思われた方もいらっしゃったかもしれません。

  • 「うちはいつもSIerが提案してくるソリューションを選んでるし」
  • 「SIerはプロなのだから、機器相性なんて潰して持ってくるでしょ?」

 確かにSIerはその道のプロですので、明らかにNGな組合せなどは把握しています。「似たような機器構成では実績があるけれど、今回の機種は分からない」とか、「今回のファームウェアバージョンだと分からない」といったグレーなケースもありますが、こういった場合はPoC(Proof of Concept)と呼ぶ事前検証を行ったうえでお客様に最終提案を行います。待たされるかもしれませんが、その分安心できるでしょう。実際、メーカーには年間500件以上のPoCの相談があり、検証センターや検証用貸出機を準備しています。

 ですので、よほど準備不足なSIerでない限り「安定しないのでカットオーバーに間に合いません」などといったミスはないはずです。

機器相性は運用フェーズでやってくる

 実は、冒頭の2つのコメントには落とし穴をあえて設けました。「SIerが提案してくる」「持ってくる」といった言葉です。SIerは強い味方ですが、運用に関する契約をしない限り、無事カットオーバーし、検収が終わると去ってしまいます。

 これはつまり、提案時の組み合わせであればSIerによって相性保証されているものの、運用開始後にOSに大きな修正を加えたり、デバイスドライバやファームウェアのバージョンをアップデートした場合の保証はない、ということです。

 ファミコン時代がよい例です。昔はバグがあっても、直す手段もなく、そのままでした。しかし、現在は(ゲームにせよ、スマホにせよ、PCにせよ)出荷したら終わりということはありません。Windowsなどの「月例パッチ」という言葉からも分かる通り、不具合や脆弱性対策、互換性向上、対応機器の追加など、さまざまな理由でハードもソフトも独自にアップデートを繰り返します。ユーザー側も何かしらのパーツを更新する機会があるでしょう。

photo ジェンガ』(タカラトミーマーケティング)(Amazon.co.jpより)

 ITインフラにおけるアップデートの実施は“ジェンガ”のようなものです。SIerにきれいに積み上げてもらったブロックを引き抜くような作業であり、せっかくの相性バランスを崩しかねません。インフラチームが“塩漬けする”と決めていても、アプリ側の要求によりアップデートを実施せざるを得ないこともあるでしょう。「ここだけ更新すれば……」と思いがちですが、多くは“芋づる式”となっており、得てして大掛かりな作業となります。場合によっては検証機を用意することになるかもしれません。

 実際に相性問題に遭遇した時を考えてみてください。もう返金はされません。マルチベンダーで構成されたシステムの場合などは最悪で、「うちには○○さんの機器はありませんし、これ以上は分かりません」と“たらい回し”にされてしまいます。メーカーまでもがさじを投げたトラブル、自身で早急に解決できますでしょうか。……ムリですよね。

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