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» 2015年05月08日 08時00分 UPDATE

テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」:第12回 「ベンダーロックイン」の誤解

欧米で売れているコンバージドインフラだが、日本では「ベンダーロックインだ」という声が上がり、SIer潰しだなどとの比喩の表現も見かける。「ベンダーロックイン」しているのは誰か、日本に「ベンダーロックインとコンバージドインフラに関わる誤解」があるのはなぜか。冷静に解説する。

[小川大地(日本HP),ITmedia]
photo

 日本のIT系メディアやジャーナリストの方々は、コンバージド・インフラストラクチャ(コンバージドインフラ)のことを日本語で「垂直統合型システム」「統合型アプライアンス」と記すことがあります。しかし、後者はともかく前者は欧米人に全く伝わりません。“Vertical-Integration System”と言っても「?」と返されるでしょう。日本では捻じ曲がった訳語が根付いてしまいました。

 これが原因か定かではありませんが、日本の中でコンバージド・インフラストラクチャについての誤解は広がる一方です。その筆頭である「ベンダーロックイン」について考えてみましょう。


コンバージドインフラに「ベンダーロックイン」はない

 いきなりですが、ベンダーロックインって何でしょうか?

 ベンダーロックインとは「特定ベンダーの独自技術・サービスへの依存が強いために、他社への“乗り換え”が困難になる現象」のことです。例えば、人事システムとしてあるベンダーの製品を導入した場合、同システムの次回更改についても同社製品を選択せざるを得ず、囲い込まれてしまっている状況を指します。

 注意すべき点ではありますが、“垂直統合”と訳されるコンバージドインフラにベンダーロックはあるのでしょうか?

 具体的な例で考えてみましょう。仮想化基盤のハードウェアとして、A社のコンバージドインフラを採用したとします。ソフトウェアはVMware vSphereを採用しました。5年後、老朽化のためこの基盤を更改しましょうとなりました。この場合、次期選定にあたってベンダーや製品に縛りはありますでしょうか。

  1. A社のコンバージド・インフラストラクチャを購入しなければならない
  2. A社製ハードウェアであれば何でもよい
  3. 特に制約はない(どこのメーカーのハードウェアでも構わない)

 実際にイメージしてみると分かると思います。答えは(3)です。

 移行元がコンバージドインフラだろうがアラカルト構成だろうか、VMware仮想マシンは新しいハードウェアへ簡単に移行できます。データフォーマットを変換する必要もありませんし、ライブマイグレーション技術を利用した無停止移行も不可能ではありません。

 これは、今日の多くのコンバージドインフラが、どのハードウェアでも平等に動作するオープンな仮想化ソフトウェア(VMwareやHyper-Vなど)を併用しているためです。新システムへ引き継ぐべきデータは“仮想マシン”ですが、そのフォーマットはハードウェアを限定しません。仮想化ソフトウェアが変わらない限り、どこのハードウェアにも乗り換えができます。

photo コンバージドインフラはベンダーロックしない

 「ベンダーロックイン」と聞くと、ハードウェアベンダーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかしながら、実際に乗り換えを阻害するのは“データ”です。ですので、ベンダーロックインの有無はデータフォーマットやエクスポート機能を開発・管理しているソフトウェアベンダーに関わってきます。

 ……まるでソフトウェアベンダーを悪者扱いしているようですが、必ずしもそうではありません。プロプライエタリな独自フォーマットではなく、他社でも扱えるオープン規格なデータフォーマットを採用する製品であればベンダーロックは避けられます。例えば、Microsoft Officeはバージョン2007からOpen XMLファイルフォーマットに切り替えました。「*.docx」など、拡張子の末尾に“x”の付いた新フォーマットのファイルは、他社製品でも読み書きが可能です。

コンバージドインフラとデータベースアプライアンス

 第三者調査機関である米IDCは「Worldwide Quarterly Integrated Infrastructure and Platforms Tracker」(関連リンク参照)という定期リサーチにおいて、統合型システムを2つに分類しています。

 1つはIntegrated infrastructure。これは用途を限定しない“汎用システム”のことで、コンバージドインフラはこちらに該当します。

 もう1つはIntegrated Platform。こちらは特定の用途に最適化されたシステムのことで、Oracle Exadataといった“データベースアプライアンス”などが挙げられます。特定用途に特化しているために、ハードだけでなくソフトにもチューニングが施されていることから、Integrated Platformはミドルウェアを切り離せません。コンバージドインフラと違ってソフトウェアへの依存が強いため「性能が段違い」「ライセンスが優遇される」などのメリットはあるものの、他社への乗り換えが困難。つまり、ベンダーロックインの恐れがあります。

  欧米での呼び名 米IDCでの分類 用途 ベンダーロックイン
汎用の統合システム Converged Infrastructure Integrated infrastructure 仮想化・プライベートクラウド ほぼなし
特殊用途の統合システム xxxx Appliances Integrated Platform データベース・業務アプリ 多い
2種類の統合型システムとベンダーロックイン

 コンバージドインフラは、原則として乗り換えを阻害する(ベンダーロック)といったことはしません。誤解の多くは「コンバージドインフラとミドルウェアアプライアンスと混同している」ことにあるような気がします。みなさんはどのように感じましたでしょうか?

(つづく)

小川大地(おがわ・だいち)

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日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション



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