Webサイトをシングルページデザイン化したBloomberg、その効果は?Computer Weekly

米BloombergがWebサイトをリニューアル。スクロールすると次の記事が表示されるシングルページデザインを採用した。次に表示する記事をどうやって決定しているのか? SEOはどうやっているのか?

» 2015年06月17日 10時00分 公開
[Clare McDonaldComputer Weekly]
Computer Weekly

 経済および金融専門の情報サービス企業である米Bloombergが、シングルページ設計(画面1ページだけで完結する構造)のWebサイトを開設した。読みたい記事を画面にロードするまでの待ち時間を減らし、見たいコンテンツにすぐにアクセスできるようにすることで、読者体験の向上を狙ったものだ。

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 同社にはジャーナリストのみならず、開発者も数千人在籍している。これだけの開発力があれば、同社メディア担当CEOのジャスティン・スミス氏が、読者のニーズを満たすために同社の「デジタルコンテンツを丸ごとリセットしたい」と考えたのも不思議ではない。

 「今回われわれが目指したのは、従来のページベースのWebサイトから脱却することだ」と語るのは、BloombergでWeb関連の責任者を務めるダニエル・ハラク氏だ。

 同社は手始めに、全世界のモバイルユーザーを対象としたサイト「Bloomberg Business Europe」を開設した。その際同社が採用したのは、カスタマーテクノロジープラットフォームの「Brisket」だった。これはオープンソースのシングルページWebアプリフレームワークで、GitHubから入手できる。Brisketを使ってシングルページデザインのWebサイトを作り、(Webサイトをブラウズしているのに)ほとんどアプリのように見える操作感を実現した。

 ページをスクロールすると、ユーザーのWebサイト閲覧傾向の分析から導き出した別の記事が表示される。別の記事のタイトルをクリックして新しいページをロードするような操作は不要だ。

 シングルページサイトの課題はSEOだ。この種のサイトは(見かけはアプリ風でも)ブラウザ上のみで動作する。Googleなどの検索エンジンはこうしたサイトを空のページと解釈する。

 この問題を解決するため、Bloombergは(サイトと)同型のJavaScriptフレームワークを利用してコードをサーバに送信できるようにした。その一方でブラウザの表示では、操作感優先のコンテンツを継続した。

 「これで開発の作業スピードも向上したし、ユーザーの体感的なサイトの操作速度も上がった」とハラク氏は話す。

 サイトデザインリニューアルの真の目的には、オーディエンスにとってより親しみやすいコンテンツを提示し、オーディエンスがそのページにとどまる時間を伸ばしたいという点も含まれていた。

 その実現のため、Bloombergのサイトはブラウザのクッキーを参照して、ユーザーがサイト内のどこに滞在しているのか、また過去のサイト閲覧履歴を分析する。さらに似たような閲覧傾向を持つ別のユーザーは他にどんなページを閲覧しているかも分析する。その結果から、ページをスクロールすると前に読んでいた記事と関連の深そうなコンテンツを選んで表示し、連続的な購読体験を実現している。

 Bloombergは毎日平均5000本以上の記事を配信し、ヨーロッパ全土で900万人強の読者を獲得しているが、このシングルページサイトも同社サイトのページビュー増に貢献している。

 「ユーザーが当社サイトにアクセスしてくる理由の中で多いのは、より的確な意思決定を下すための参考にしたい、というものだ」とハラク氏は分析する。また「(参照したサイトに)提示される情報が多すぎると、ユーザーはかえって混乱して選べなくなる」と同氏は付け加える。

 シングルページサイトでは、1本1本の記事(ストーリー)が、どれもトップページであるかのような外観で表示される。1つのストーリーに関連するコンテンツは、ユーザーがそのストーリーをスクロールしたときに表示されるように配置される。

 「Bloomberg Business Europe」サイトの編集者ネイサン・ランソン氏は次のように説明する。「一般的に、人々はどこかのソーシャルメディアで見かけた記事を選ぶ傾向がある。だからコンテンツは、そんな読者の意向になるべく沿う形で配置しておかなければならない。これは大事なポイントだ。現状では、Webサイト閲覧者の大多数は、そのサイトのトップページをあまり見ていない。その中でトップページへと視聴者を誘導するのはハードルが高い」

 Bloombergは現在、世界各地の拠点で勤務するスタッフを登用して、全世界対象の雑誌を3誌発刊する計画を進めている。世界中のどんな場所でも、同社スタッフから生のローカル情報が得られる体制を整えている同社の強みを存分に生かせる。

 「当社のグローバルチームは、ビジネス専門ジャーナリストとアナリストで合計2500人を数え、70以上の国で活動している。他社の追随を許さないチームの力を結集して、一貫したアプローチで進めていく」とランソン氏は意気込みを語る。

 「今のビジネスジャーナリズムに対して、大胆で斬新なアプローチで切り込んでいく。ヨーロッパ全土を中心に据えて、完全にクロスプラットフォームで展開するのは当然だ」(ランソン氏)

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