米食品メーカーはデータアナリティクスを応用し、適切なリソース(人員)を適切な場所に配置できるようになった。不要になった残業手当の金額は?
Fortune 500にも選ばれる食品メーカー米ConAgra Foods(以下「ConAgra」)は、データアナリティクステクノロジーの導入により従業員の配置効率を高めることができた。同社は年間500万ドルの経費削減効果を期待している。
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ビーフジャーキーのSlim Jim、ピーナツバターのPeter Panなどのブランドを所有する同社は、アナリティクステクノロジーの利用によって2万8000人超の全従業員について財務部門のデータと人事(HR)部門のデータを1カ所に集め、給与と残業代を明確に把握できるようになった。
同社は年商170億ドル規模だが、このアナリティクスを導入したことで、従業員を雇用する時期やコンティンジェンシープラン(緊急時対応策)の立案に関する意思決定プロセスが改善された。例えばコンティンジェンシープランは、リソースのニーズ(が発生するタイミング)に山や谷があることを前提としたものになった。こう話すのは、同社のHR部門マネジャーでタレントアナリティクスを担当するティム・サセク氏だ。
「当社は人員配置の効率を高めて、適切なリソースを適切な場所に配置することでコストを削減できた。仮に残業手当の支払いを5%減らしたとすると、1年で500万〜1000万ドルもの経費削減になる」と、本誌Computer Weeklyのインタビューで語った。
ConAgraがアナリティクスソフトウェアへの投資を決めたきっかけは、2013年に別の食品メーカー、米Ralcorpを買収したことだった。これによって1万人の従業員が一気に増え、給与支払いなどの社内システムも対応させなければならなくなった。
同社はRalcorpの元従業員を迎えて組織を統合するに当たって、できるだけ早急に各人のスキルや能力を特定し、買収後も彼らがConAgraにとどまるかどうかを確認したいと考えた。また、新しい組織でどれだけ経費が必要になるのか、正確な評価をする必要にも迫られていた。
そこで同社は、社内で「非公式」プロジェクトを立ち上げて実験的にアナリティクスツールを導入し、各従業員に関するより詳細なデータをHRのマネジャーたちに提示した。
買収完了後はこのプロジェクトを加速させて、広範囲な評価のアナリティクスやデータビジュアライゼーションテクノロジーの導入も実施した。その結果、HRアナリティクスに特化したカナダの企業、Visierの製品を採用することを決めた。
Visierのテクノロジーには組み込みのメトリクスと、設定済みのデータビジュアライゼーションが含まれていたので、こうした機能を自作する手間を省くことができた。
「Visierは新興企業で、幹部は全員ビジネスインテリジェンス(BI)に詳しく、製品のアーキテクチャもよく理解している。Visierがイノベーションを実現する速さに、われわれは感銘を受けた。彼らは四半期ごとに新機能を追加してくれた」とサセク氏は明かす。
ConAgraがVisierと契約を結んだのは2013年2月で、翌月にはVisier(製品を組み込んだ社内)システムへのデータ入力を開始。同年5月にはシステムの運用を開始した。さらに同年8月にはクラウドソフトウェアの本格稼働に踏み切った。このときConAgraは、それまで利用していたPeopleSoft Human Resources SystemからVisierにデータを統合した。これで、全従業員を対象に700を超えるメトリクスを使った分析が可能になった。
「かつてはリポート作成ツールを自作していたので、データの内容はわれわれ自身がよく知っているし、どの形式で処理するのが適切かという点も具体的な考えがあった。だからデータの統合を短期間でスムーズに進めることができた」とサセク氏は胸を張る。
PeopleSoftからVisierへのデータ転送処理は、毎日夜間に実行したが、その際ConAgraはデータウェアハウスを活用した。同社は現在、SAPベースの財務システムからVisierへのデータ転送の自動化に取り組んでいて、この作業はあと3〜4カ月で完了する見込みだという。
このテクノロジーを導入したことで、ConAgraは臨時雇用のスタッフの傾向を可視化し、データを共有できるようになった。このデータを使って、残業に関して問題が発生している部署を特定している。
「われわれは、今あるべき組織構造はどんなものなのか、より深く理解しようと努力している。適切なタイミングで適切な役割を設定し、適切な人選を行って適切な場所に配置していることを確認するためだ。また、どこまで事業を効率的に進められるのかも確かめたい」とサセク氏は話す。
食品メーカーは利益率の低い事業なので、人件費を少しでも節約できれば会社の収益に大きく影響する。
「当社の収益に影響することは間違いないだろう。アナリティクスで少しずつでも経費を節約できれば、このテクノロジーの効果があったといえる。そもそも人件費は額が大きいから」と同氏は話す。
Visierを社内展開する上での最大の課題は、技術的なことではなく、HR部門のスタッフに新しいシステムを活用するように促すことだという。
「重要なことは、HRスタッフにデータを信用してもらい、このテクノロジーに慣れてもらうことだ。仕方なく無理やり使っているスタッフも一部にいるようだから」とサセク氏は語る。
ConAgraは現在、税金の支払いや福利厚生費を含めた、従業員に対して発生する費用の総計をVisierでモニターする計画を立てている。この計画の狙いは、異なる部門間で、雇用した従業員のROI(投資収益率)を比較することだ。
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