第17回 ツールは邪道、スクラッチこそが価値! ……?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)

日本のITインフラのガラパゴスっぽい部分の1つに「手組み主義」があります。欧米とは何が違うか、「syncは3回」の時代を振り返りながら「手組み vs. ツール論争」の行方を探ります。

» 2015年06月26日 08時00分 公開

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 以前、自分の体験談として「ライブマイグレーション申請書の話」を取り上げました。いかにも日本的な話題ですが、日本のITにはもっと前より指摘されているネタがあります。お客様の今にピッタリなシステムを実現するための「手組み(スクラッチ)」の多用です。

 ITインフラはハードウェアが介在することもあり、アプリ開発と比べるとプロダクト志向の傾向があります。しかし、それでも「手組み vs. ツール論争」は存在するものです。


かつてITインフラでも「手組み」が当たり前だった

 2000年前半、私はストレージ製品のR&D部門におりました。当時担当していたのはデータベース(DBMS)のバックアップやディザスタリカバリ(DR)の方法論確立です。

 バックアップを例に挙げると次のようなものでした。

  1. DBMSに命令を発行し、表領域へのアクセスを一時静止
  2. DBMSとファイルシステムキャッシュをフラッシュ・アンマウント
  3. 同期状態にあるストレージボリュームをスプリット
  4. ファイルシステムを再マウントし、表領域への一時静止を解除
  5. スプリットした片割れをバックアップサーバーにマウントしてテープに保存

 各ステップにおいて、DBMS・OS・クラスタウェア・ストレージ装置など操作対象が多岐に渡ります。バックアップは毎日行うものですので自動化が必須ですが、当時これらの製品間に連携機能やAPIはほとんどなく、設計構築を担うSIベンダーはジョブスケジューラーの力を借りつつ組み上げていました。

 これは言葉どおり、手組み・スクラッチの世界です。「このコマンド、成功しても失敗しても戻り値が0なんですけど!」と激怒されたことも記憶に残っています。そういえば「syncは3回」なんてジンクスもありました。

 UNIXが主流だったこともありますが、手順を含めたスクラッチ開発と保守費用など、当時バックアップシステムの構築相場は1000万〜3000万円、ディザスタリカバリになると“億”を超えることもザラだったと聞いています。

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