「攻めのIT」「提案する情シス」を“目指す”と失敗する――ハンズラボの長谷川氏情シス“ニュータイプ“の時代(1/2 ページ)

「攻めのIT」「提案する情シス」を“目指す”と失敗する――。ハンズラボのCEO、長谷川さんの言葉には、情シスの今後を考える上でのヒントが隠されている。「まずは飲め」と檄を飛ばす長谷川さんの真意とは。

» 2015年08月07日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

連載:情シス“ニュータイプ“の時代

「情シス」と聞くと、「上から降ってきた無茶振りを粛々とこなす人」「安定した社内環境を維持するための縁の下の力持ち」といった、受け身で地味なイメージがついて回ります。しかし、本来、ITで会社を支える情報システム部門はスーパースター的な存在であり、米トップ企業の情報システム部門は「攻める」「改革する」という旗印のもと活躍しています。

 日本にもっと、“攻める情シス”を――。そんな思いから生まれたのが、新たなアプローチで企業を変えようとしている「情シス“ニュータイプ“」に話を聞く本連載です。攻めに転じたきっかけ、それにまつわる失敗、成功に結びつけるための取り組み、業務現場との接点の持ち方などのストーリーが情シスの方々の参考になれば幸いです。


 「情シスは変われない」――。ハンズラボを率いる長谷川秀樹氏からバッサリ切り捨てられてしまった本記事の前編。それでも変えていこうと行動を起こす人や、「第2情シス」的な立場の人たちが結果を出すにはどうしたらいいのか? 後半は、長谷川さんがそのために意識しているポイントを聞いた。

「攻めのIT」「提案する情シス」を“目指す”と失敗する

――「これからの情シスは“攻めの姿勢”で臨むべき」という論調をどう捉えていますか?

Photo ハンズラボ CEOの長谷川秀樹氏。本記事の前編では「一般論としては“情シスは衰退していくのがいい”と思ってるんです」という刺激的な発言が飛び出した

長谷川: そういう話はよく出るけど、“何を攻めてるのか”がよく分からないことが多いですね。例えば、「営業支援システムを作ったから売上が上がる」ということは、なかなかないですよね。売れるかどうかは営業マンの良し悪しの方が大きいから。

 Webサービスは、人を介さないから原因や結果が分かりやすいわけです。システムの努力が売上に直結しやすいんですね。だから、ECがあるところは、(Webサービスと親和性が高く、努力の結果が見えやすい)ECをがんばればいいと思いますよ。

 それ以外の業務システムで、「キーボードでインプットして画面にアウトプットする」――という仕組みの上では、「攻めのIT」は土台無理。イノベーションがあるとしたら、それはPCの外側であって、IoTやAI的なところで何かするときの話でしょうね。

――“ITで何が提案できるか”を考えるには、情シスが業務の現場に出て行くべきという意見もありますね。

長谷川: 僕の考える「無理だからやめたほうがいいこと」の1つに、「IT部門発の提案」があります。

 そもそも、“情シスが提案しなければ”という会社は、情シスと事業部門の間に距離があって、日常的なコミュニケーションがないのでしょうね。情シスは何をやったらいいのか分からないし、事業部門も情シスに伝える方法を知らないから、何も言わない。だから無理に「提案しよう」ということになる。

 でも、相手が「欲しい」と言ってない提案をいくら持って行っても、現場の心はつかめないですよ。

 うちには、どんどん要望がきます。多すぎてさばききれないけれど、中には「クソ要件」もあるから(笑)それくらいがいい。10くらい要望があるうちの、3つ4つやって、6、7割は無視するくらいがちょうどいいんです。

――現場のニーズを汲み取るために、情シスが営業に同行したりして、「業務現場と接点をつくる」というのはどうでしょう?

長谷川: それはありですね。ただ、やり方には気をつけた方がいい。なぜかというと、真の現場のニーズは、“ちゃんとした話し合いのルート”からは、なかなか出てこないんですよ。それは例えると、「ITよろず相談所」みたいな掲示板を作っても、一部の書きたがる人の意見ばかりになっちゃったり、ユーザーのヒアリングをしようと会議室で向き合っても何も出てこなかったりするようなイメージですね。

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