「一般論としては“情シスは衰退していくのがいい”と思ってるんです」――。そんな刺激的な言葉を口にしたのがハンズラボの情シス、長谷川さんだ。情シス自らが“情シス不要論”を唱える真意とは。
「情シス」と聞くと、「上から降ってきた無茶振りを粛々とこなす人」「安定した社内環境を維持するための縁の下の力持ち」といった、受け身で地味なイメージがついて回ります。しかし、本来、ITで会社を支える情報システム部門はスーパースター的な存在であり、米トップ企業の情報システム部門は「攻める」「改革する」という旗印のもと活躍しています。
日本にもっと、“攻める情シス”を――。そんな思いから生まれたのが、新たなアプローチで企業を変えようとしている「情シス“ニュータイプ“」に話を聞く本連載です。攻めに転じたきっかけ、それにまつわる失敗、成功に結びつけるための取り組み、業務現場との接点の持ち方などのストーリーが情シスの方々の参考になれば幸いです。
「八面六臂の活躍」――。ハンズラボを率いる長谷川秀樹さんは、そんな言葉がぴったりの人物だ。2008年にコンサル業界から東急ハンズに転職した当初は、情報システムと物流の担当として同社の変革に貢献。その後はECも兼任するようになり、2013年にはシステムの外販も手がけるIT子会社「ハンズラボ」を立ち上げた。
「情シス」の領域では、店舗のスタッフを異動させてシステム開発の内製化を実現したり、POSレジの自社開発を行ったりと、新しい取り組みに果敢にチャレンジし、結果を出している。そんな長谷川さんに、「これからの情シス」について聞いた。
―― ECを担当するようになって、Web業界の文化に刺激を受けたそうですね
長谷川: Web業界の人たちは勉強会が大好きで、「ミートアップ」と称して酒を飲みながら頻繁に情報交換してますよね。ECとソーシャルメディアを手がけるようになって、そういう文化を知りました。
エンタープライズ系の情シスは、あまり他社の人との交流がありません。そうなってしまう背景には、自社の売上に直結する仕事ではないため、「どんどんよくしなきゃ」という危機感を持ちにくいこととか、「自社のことを他人にしゃべってはいけない」という「妄想」があるのだと思います。
別に他の会社の人としゃべっても大丈夫なんですけどね。それで会社の競争力が落ちるなんてことは、ほとんどないですよ。本来はみんな勉強したり交流したりというのは好きなはずなので、もっとやればいいと思います。
それと、エンタープライズ系だと要件定義、プログラム、インフラ、テスト……といったように担当業務が細分化しており、他人の領域には入っていかない。それも世界を狭める理由じゃないかと思います。一方のWeb業界の人は、「1人で何でもやる」という文化が根付いている。こうしたノリはぜひ取り入れたい文化ですね。
今、AWS(Amazon Web Services)を積極的に活用しようとしていますが、AWSはエンタープライズ系とWeb系の交差点になっているような印象を受けます。そこからスーツ(情シス)とTシャツ(Web文化の人)がだんだん交わっていくといいな、と思ってます。
―― 情シスが変わっていくためには、どうしたらいいでしょうか?
長谷川: 一般論としては「情シスは衰退していくのがいい」と思ってるんです。
人はそう簡単に変われないですから。会社が倒産するとか大災害があるとか、よほどのことがない限り、いくら「危機感を持て」「変われ」「攻めろ」と言ってもね……。
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