セキュリティ対策は「文理融合」で臨め──東大の新プロジェクトが始動Weekly Memo(1/2 ページ)

高度なセキュリティ対策には「文理融合」で臨むべきだ──。東京大学がこんな理念のもと、新プロジェクトを始動させた。この取り組み姿勢は、企業にも当てはまりそうだ。

» 2015年08月24日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

マイナンバーや東京五輪のセキュリティ対策も提言

 東京大学が先頃、サイバーセキュリティ対策に関する新プロジェクトとして、4月1日に同大学院情報学環内に設置した寄付講座「セキュア情報化社会研究(SISOC-TOKYO)」グループの活動を本格的に開始したと発表した。

photo 東大の新プロジェクト始動の発表会見

 この活動では、セキュリティをはじめとするサイバー空間に関する課題について、大局的見地から学際的研究や人材育成、政策提言を行っていくことを主眼としている。特に産官学の協力のもとに広く人材を募り、実際に生じている社会的かつ国際的な課題に対して、自然科学的なアプローチのみならず社会科学的なアプローチも取り入れて調査研究を行い、その検討結果を広く情報発信していく構えだ。

 ちなみに、寄付講座とは民間企業などからの寄付金によって大学に開設される講座のことだ。今回のSISOC-TOKYOは、生体認証機器メーカーであるディー・ディー・エス社長の三吉野健滋氏が個人で寄付した約3億円を資金とし、2020年3月末までの5年間設置される。

 同講座のグループ長には東大大学院情報学環教授の須藤修氏、副グループ長には東大名誉教授で東京電機大学特命教授の安田浩氏が就任。発表会見には両氏とともに、東大大学院情報学環 学環長の佐倉統教授、および同講座の教官陣が登壇した。

 活動内容については、安田氏が「研究方針」「人材育成」「情報発信と政策提言」といった点から、次のように説明した。


photo 東京大学の安田浩名誉教授

 まず、研究方針では、喫緊の課題であるサイバーセキュリティ問題を解決するためだけではなく、情報通信分野に横たわる広範なサイバー空間に関する研究課題を発掘・検討・再定義する。また、産官学の協力によって、技術と制度設計にまたがる境界領域を対象に、情報通信工学による自然科学的アプローチのみならず、経済学・法律学・行政学・社会学などの社会科学的アプローチを取り入れた幅広い学際的研究を推進する。

 具体的な研究対象としては、セキュリティインシデント発生後の企業価値に与える影響など社会科学的な研究や、ID管理と生体認証技術など自然科学的な研究を推し進める。

 人材育成では、産官学連携のもとに高度なセキュリティ専門家の養成を行う。とくにハッキング攻撃に向けた演習用設備を整備し、実地訓練による人材育成とともにハッキング防御技術やセキュリティ耐性の評価を行う。

 情報発信と政策提言では、グローバルなセキュリティインシデントの調査分析に基づいて定期的な情報発信を行い、併せて国に対して政策提言を行っていく。また、大きなトピックであるマイナンバー制度と東京オリンピックについても適切なセキュリティ管理体制などを提言する。

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