医療や金融など、さまざまなビジネス分野で活躍しているIBMの認知型テクノロジー「Watson」。APIを公開することで、今後は多くの人にWatsonを使ったアプリを開発してもらう狙いがある。IBMがその先に見ているのは、ビジネスに「コグニティブ」が適用されるのが“当たり前”となる世界のようだ。
「ワインって何を買えばいいか分からない」
突然だが、読者の皆さんはこんな思いをしたことはないだろうか。多くの人は、ラベルや材料(産地)を見ただけでは味は分からないだろうし、仮に味の解説があったとしても、主観的な表現であることが多く、参考になるかピンとこない。
店頭や通販で、10〜20ドル前後のワインを試しに買ってみて“失敗した”と思っている人は意外と多い――こう語るのは、ワイン購入支援のiOS向けアプリ「Wine4.Me」を展開しているVineSleuthのCEO、アミー・グロス氏だ。Wine4.Meには、IBMの認知型テクノロジー「Watson」が実装されており、新たなワインの選び方を提案していくという。
人間の話し言葉を理解し、膨大なデータを解釈することで自ら“学習”するWatson。IBMのユーザー向け年次カンファレンス「IBM Insight 2015」では、このWatsonのシステムを使ったさまざまなアプリやソリューションが紹介された。Watsonを使ったアプリケーションは、2014年度のカンファレンスでも発表していたが、今回はIBM以外の企業が作ったものが登場し、その適用範囲もさらに広がっている。
「フルーティーな赤ワインがいい」「ステーキを食べるからメルローがいいな」
こんな文章を入力すると、Wine4.Meはオススメのワインを提示してくれる。Watsonが自分だけのソムリエになってくれるようなイメージだ。Watsonの力を借り、味に対して数学的な分析をしているため、細かな味の評価も表示できる。価格などの条件も入れることができ、各商品に対して評価もできるので、自分だけのワインランキングを作成することも可能だという。
学習機能も備えているため、アプリを使えば使うほど、自分好みの味を提示してくれるようになり、自分が知らなかった新たなワインをオススメしてくれる。さらに選んだワインに合った料理についても提案する機能もある。
「ソムリエのようなエキスパートはどうしてオススメが言えるのか――そんな思いからアプリを開発しました。ユーザーとのエンゲージを高めることで、ワインの購入にもつながります。近くのスーパーで売っているかどうか、といった連携機能も考えていますよ。将来的にはアプリから得た売り上げの予測から、スーパーが在庫をそろえるといったシステムも考えられますね」(グロス氏)
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