なぜ、IoTはビジネスを“一変させる”のか?企業が取るべき対策を解説(2/3 ページ)

» 2015年11月09日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

“モノ”ではなく“サービス”で食べていく時代

 八子氏はその実例として、ドイツ最大の港であるハンブルク港を管理する「ハンブルグ港湾管理局」での事例を取り上げた。年間1万以上の船が入港する同港では、各入港業者が独自にオペレーションを行っていたため、入港の順番待ちが発生してスムーズな荷降ろしができず、荷物を引き取りに来たトラックの待ち時間も長引き、港までの一般道も渋滞が慢性化していた。

 そこで監理局は、ネットワークとデータの統合で問題の解決にあたった。コンテナトラックのスマートフォンから上がってくる位置情報や各港湾設備の情報、積載物など、あらゆるデータを集約して可視化し、船の入港時刻に合わせてトラックを港内の駐車場に入れるか、郊外の駐車場で待たせるかなど、的確な判断が出せるようにした。

 その結果、TCOを30%削減できたほか、頻発していたクレーンの衝突事故も減ったという。「IoTというのはモノを導入しただけでは意味がありません。複数の課題をくくるサービスを作って初めて意味があるのです。これからはモノで食べていくのではなく、モノから派生したサービスで食べていく。そんな発想の転換が必要になります」(八子氏)

photo ハンブルグ港湾管理局の事例。IoTでさまざまな問題を解決した好例だ

事業ドメインの拡張こそ、IoTの“真価”である

 ビジネスの主役をモノからサービスへと変え、事業の幅を広げていく。これこそがIoTビジネスの“真価”だと八子氏は語る。八子氏はIoTで事業を伸ばしている企業の例としてゼネラル・エレクトリック(GE)を挙げた。

 同社の航空事業は、航空機メーカーへのジェットエンジンの提供や定期メンテナンスのサービスを行っているが、近年はジェットエンジンから習得できるデータ(稼働状況、環境温度の変化、粉じんなど)や飛行機の飛行データをもとに、オーバーホール(分解点検)の時期を最適化し、コストの大幅な削減に成功している。

 さらに、エンジンの生産ラインで生成されるデータも収集、分析できるようになったことで、航空会社に対して予防保全のメンテナンスサービスを提供できるようになり、さらに空港に対して、航空機材の配置を最適化するコンサルティングサービスも展開するようになった。ビジネスにIoTを取り入れたことで、サービスの提供相手が広がっているのだ。

photo エンジンの生産ラインで生成されるデータも収集、分析できるようになったことで、GEの事業は大きく広がった

 「将来的には、航空機材の配置からフライトプランを最適化し、混雑解消につなげるといったサービスを空港に提供にできるようになるかもしれません。IoTは単にセンサーから集めたデータをどう生かすという視点ではなく、自社のビジネスを変える、さらには事業ドメインを拡張できるという視点で考え、取り組まなければいけません」(八子氏)

 このほか、八子氏は製造業における事業ドメイン拡張の事例も紹介。生産に関するデータやノウハウをデジタル化し、他の工場に展開するほか、社外へ向けてソリューションやコンサルティングサービスとして提供した例を示し、「この領域こそがイノベーションであり、スマートファクトリーが目指すべき領域」とアピールした。

photophoto 製造業における事業ドメイン拡張の事例(左)。スマートファクトリーの発展可能性(右)

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