ESET最新版が発表、未知の脅威を早期検知する新たな仕組みも

キヤノンITソリューションズがESETの統合セキュリティ製品最新版を発表した。未知の攻撃を早期検知するクラウドサービスの強化などを図った。

» 2015年12月08日 14時54分 公開
[國谷武史ITmedia]

 セキュリティ企業ESETと国内総販売元のキヤノンITソリューションズは12月8日、個人および中小法人向け統合セキュリティ製品の最新版「ESET Smart Security V9.0」と中小法人向けウイルス対策ソフトの最新版「ESET NOD32 アンチウイルス V9.0」を発表した。2016年2月に発売する。

 最新版はネットワークおよびクラウドベースのボットネット対策(ボットネットプロテクション)機能が強化されるともに、ネットバンキング利用者を保護する新機能が搭載される。

ネットワークベースの攻撃を検知する仕組み

 ボットネットプロテクションではPCと外部の通信の状態を監視して不審な通信上の振る舞いを検知すると、「ネットワークシグネチャ」という脅威検出のためのデータを作成。これを利用することで、ネットワーク経由の新手の攻撃を数時間以内に検知、遮断できるようになるという。

 また、クラウドベースの不正プログラム解析サービスも「Cloud Malware Protection System(CMPS)」として強化し、同社のデータセンター上のサンドボックス環境で不審なファイルの振る舞いを解析する仕組みを加えた。

Cloud Malware Protection System

 ユーザーのコンピュータに保存されるファイルに不審さが認められる場合、そのバイナリファイルをESETのクラウド環境に送信、サンドボックス環境で解析して悪質なものかを特定し、検出のためのシグネチャをユーザーに再配信する。CMPSを利用することで、特に出現から数時間の範囲における不正プログラムの検出精度を5%程度向上させる。

出現まもない脅威の検出率向上につながるという(画像内グラフの赤色の部分)

 ネットバンキング保護機能ではInternet Explorer 8以上、Firefox 24以上、Chrome 30以上で利用できる。ユーザーが事前に登録したネットバンキングサイトにアクセスすると、同機能が有効になり、Webブラウザで入力した情報を自動的に暗号化して保護する。これにより、キーローガーなどの情報搾取型マルウェアの攻撃からユーザーの情報を守る。

インターネットバンキング保護機能

 法人向け製品の価格は、ESET Smart Security(ESET オフィスセキュリティ)が年間6800円(PC1台とモバイル端末1台での利用時)、ESET NOD32 アンチウイルスが同4800円(Windows/Mac対応のPC1台利用時)などとなっている。

金銭搾取の脅威がまん延

 2015年にESETが日本で検出した脅威について最高リサーチ責任者のユライ・マルホ氏は、個人・法人ともダウンローダー型のマルウェアが目立つと説明した。

 国内ユーザーを狙うサイバー攻撃では異なるマルウェアをいくつも組み合わせて実行する手口の複雑化が読み取れる。法人ユーザーの間では2008年に大流行したConfickerワームもいまだ検出されており、マルウェア感染の被害が長期わたって続く状況にあると解説。日本のユーザーは米国、インドネシア、オーストラリアのユーザーと比較すると、セキュリティ事故が少ないという。しかし、個人と法人でみると、日本とオーストラリアでは個人より法人の被害が多い傾向にある。

 マルホ氏は、日本で象徴的なマルウェア攻撃としてトロイの木馬「Win32/Brolux.A」によるフィッシングを挙げる。Win32/Brolux.Aは、イタリア企業Hacking Teamでの情報漏えいで発覚したFlash Playerの脆弱性やInternet Explorerの脆弱性を突いて感染。国内88のネットバンキングサイトの利用者を標的に情報を盗み取る。フィッシングの手口では金融庁や検察庁を模倣した偽サイトで情報を盗み取ろうとしていた。

 同社の解析でWin32/Brolux.Aには、中国で開発されたとみられる特徴や、韓国の銀行を標的にしたマルウェア「w32/Venik」と似たモジュールが使われていることも判明。マルホ氏は、新手のマルウェアであっても、過去に開発されたマルウェアの要素が再利用されるなど既知のマルウェアの痕跡が“DNA”として存在すると解説。セキュリティソフトの最新版にも、こうした“DNA”から新手のマルウェアで早期検知ができる技術を応用していると述べた。

国内シェア3位が視野に

 ESET製品の事業動向についてキヤノンITソリューションズ プロダクト企画センター長の山本昇氏は、過去5年間の売上が業界平均の約103%(富士キメラ総研調べ)を上回る110%で推移したと話し、好調ぶりをアピールした。国内シェアは15%を超えて第4位の座(IDC調べ)にある。

 ESET アジア地区担当営業・マーケティング ディレクターのパーヴィンダー・ワリア氏は、「ニュージランドや香港ではシェア2位を獲得し、日本でも早々に3位へステップアップした。キヤノンITソリューションズは当社最大のパートナーであり、10年以上の関係がこの成功につながっている」と述べた。

最新版を発表したキヤノンITソリューションズの山本昇氏、ESETのユライ・マルホ氏、パーヴィンダー・ワリア氏(左から)

 特に法人向けビジネスではAmazon Web Services(AWS)やニフティクラウド向けにウイルス対策を提供するほか、データ暗号化ソフト「DESlock」をラインアップに追加。今後はクラウドベースのクライアント管理サービスのリリースなどを計画している。

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