AIが“エンタープライズIT”を再定義する

50年以上研究されてきた人工知能、今なぜブームに?AIの「今」を知る【前編】(1/3 ページ)

ここ最近「AI」という言葉を耳にする機会が増えているが、そもそもAIとは何か? そして、今なぜAIブームが起きているのか。AIの専門家に解説してもらった。

» 2016年03月01日 07時15分 公開
[やつづかえりITmedia]

 囲碁の対戦でコンピュータが人間のプロ棋士を負かした――2016年1月に米Googleが発表したニュースは、人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術がますます進化していることを世間に印象づけた。これに限らず、ここ最近「AI」という言葉を耳にする機会が増えている。

 そもそもAIとは何か? そして、今なぜAIブームが起きているのか、『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』などの著書を出した、KDDI総研リサーチフェローの小林雅一氏に聞いた。

「何がAIか?」は時代とともに移り変わる

photo KDDI総研 リサーチフェローの小林雅一氏

 AIとは何か、と聞かれて自信を持って答えられる人は多くはないだろう。一般的には、見聞きしたものを認識すること、会話をすること、推論すること、複数の事象から何らかのパターンを発見することなど、「人間ならではのさまざまな知的能力」を、コンピュータをはじめ自動車や家電など、いろいろな機械の上で実現するための技術を指す。

 しかし、その厳密な定義はないと小林氏は言う。

 「今から何十年も前に、印刷した活字をスキャンして文字を読み取るためのOCR(Optical Character Reader:光学式文字読取機)が出てきたとき、あれも一種の人工知能だと言われたんです。でも、今どきの人はOCRをAIだなんて言わないですよね。

 同じように、今はAIの一種だと捉えられている音声認識技術もそろそろ当たり前になってきて、あと何年かしたらAIとは言わなくなるんじゃないですか。その時々で最も先を行っている技術がAIと呼ばれるという面があるんです。自動運転車だって、今後実用化されてみんなが乗るようになったら、AIとは呼ばなくなるかもしれませんよ」(小林氏)

 マジックの“タネ”が明かされれば、それはもうAIではない――。確かに検索エンジンのレコメンド機能なども、時代が違えばAIと呼ばれていたかもしれない。「AIとは何か?」の答えは時代とともに移り変わるのだ。

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