マイクロソフトの新OS「Windows 10」。もう使ったという人も、まだ試していないという人もいると思うが、あらためてそのポイントを“マイクロソフトの人”に解説してもらおう。第6回はOS展開における新機能「プロビジョニング」について。
こんにちは。日本マイクロソフトの武藤健史です。前回まで3回にわたってWindows 10のセキュリティ機能について紹介してきましたが、今回は新しくなったOSの展開方法についてお話しします。
Windows関連の業務において、新OSの展開はIT管理者最大の負担だと考えています。新しいOSを全社員に展開するときには、マスターイメージの作成や、3Gバイトほどある大容量なOSイメージをネットワーク負荷を考慮しながら展開しなくてはなりません。また、業務で多種多様なデバイスを使用する場合には、ドライバなどが異なるため、複数のマスターイメージを作成し、割り当てるデバイスを選定する必要があります。
既存のWindows 7やWindows 8.1からWindows 10へアップグレードする方法については、残念ながら従来の方式と変わらず、以下の2つの方式があります。
通常私たちは、2のインプレースアップグレードを推奨しています。1の「ワイプ&ロード」は非常に手間がかかるためです。
ちなみに今、読者の皆さまはWindows 10の導入を検討しているでしょうか。リース端末の期限切れや古い端末の入れ替えで、新しくWindows 10が内蔵されている端末を導入する計画があるなら、ぜひ“プロビジョニング”を用いてPCを展開してください。Windows 10の端末は、もうワイプ&ロードのような面倒な手法を取らなくてよいのです。
管理者はポリシーやドメインへの参加情報といった、業務端末としての設定を1つのプロビジョニングパッケージとして作成します。ユーザーは新しい端末が配布されたら、自分でこのパッケージを適用すればOK。すぐに業務で使えるPCになるという仕組みです(ただし、どのような端末を構成するかによって使用できるかが変わってきます)。
ドライバなどを残したまま、追加で設定を加えるため、追加でPCを購入した場合やBYODを採用している会社でも、共通したプロビジョニングパッケージを全端末に適用可能です。また、このパッケージは1つではなく、いくつでも端末に適用することができるので、部署や役職などによって、柔軟に端末の設定を変えることができます。
参考までに、プロビジョニングパッケージで設定できる項目をいくつか紹介します。アプリケーションの導入、証明書の配布など、企業で必要とされるような設定を一通り網羅しています。詳細な項目については、こちらを参照してください。
プロビジョニングで設定できること | |
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管理インフラへの参加 | ドメインや資産管理システム、MDMへの参加 |
接続プロファイル | Wi-FiやVPNなどの設定 |
エディションのアップグレード | Windows 10はプロダクトキーのみでアップグレードできるため、プロビジョニングパッケージにKMSクライアントキーを入れれば、Windows 10 ProのPCをEnterpriseエディションにアップグレードできる |
モダンアプリ | Windowsストアからインストールできる「Universal Windows Application」の展開が可能。ビジネス向けWindowsストアからアプリケーションパッケージファイルをダウンロードする |
Win32アプリとスクリプト | デスクトップアプリをインストールするには、スクリプトの用意が必要 |
プロビジョニングパッケージを作成するには、「Windowsイメージングおよび構成デザイナー(Windows ICD)」という無償のツールを使います。Windows 10 ADKをダウンロードして管理者のPCにセットアップしたあと、必要な設定の情報を入れていくことでパッケージを作れるのです。より詳細な作業手順はこちらからどうぞ。あと、実際の適用方法をまとめた動画も用意してみました。
今まで、情シスの皆さんにとってOS展開は“しんどい”作業だったと思います。社員数が多ければ多いほど、手間や時間がかかってしまうケースがほとんどだったはず。しかし、プロビジョニングを利用することでOS展開の負荷を減らし、柔軟にクライアント端末のカスタマイズが可能となります。情シス的には、Windows 10の隠れた“目玉機能”かもしれません。
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