楽天のドローン配送「そら楽」、安全性を高めるポイントは?(1/2 ページ)

楽天がドローンによる荷物配送サービス「そら楽」を開始。物流の姿を一変させる可能性を秘める一方で、安全性の検証が普及のカギになるのは明白だ。ドローンの仕様やビジネス展開の計画からも、日本における安全性を重視する同社の姿勢が見て取れる。

» 2016年04月26日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「空に渋滞はない。ドローンによる配達が普及すれば、物流の効率は爆発的に上がるだろう――」

 既報の通り、楽天はドローンによる荷物配送サービス「そら楽」を、2016年5月9日に始めると発表した。第一弾として、ゴルフ場でスマートフォンからゴルフ用品や軽食、飲み物を注文すると、ドローンがコース内に商品を届けるサービスを提供する。

 4月25日に行われた記者発表会では、楽天の三木谷浩史社長が新サービスの概要や意気込みを語った。三木谷氏は「道路は1次元だが、空は3次元。ドローンが物流の効率を高める」と話すなど、ドローンがビジネスに与えるインパクトやイノベーションに期待を寄せている。

photo ドローンによる荷物配送サービス「そら楽」。独自開発のドローン「天空」を使う。黒だと威圧的に見えるため、ピンクを基調としたカラーリングになったという

規制対策がしやすい「ゴルフ場」で安全性を確認

photo 楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏

 三木谷氏によると、サービス展開にゴルフ場を選んだのは「広大な開けた空間であり、ユーザーニーズが明確であること、そして私有地かつ非人口密集地のため規制対策が比較的容易だったため」という。また、ゴルフ場は全国で3000カ所以上あるため、ビジネスチャンスは多いとしている。

 実証実験ではなく、商用サービスとして展開するのは「恐らく世界で初めて」(三木谷氏)とのことで、技術や運用ノウハウを蓄積し、他のシチュエーションへの応用を模索するようだ。将来的には一般のECや過疎地・山岳地への配送、災害時の活用も視野に入れているという。

 日本では規制が先行しがちなドローンビジネスだが、ネックとなっているのは安全性だ。サービス開始から1カ月は、千葉県御宿町のゴルフ場「キャメルゴルフリゾート」のみで運用するが、これは安全性の検証を行うためだ。規制クリアのポイントも安全性にあるという。

 「今回は自律運転可能な独自開発のドローン『天空』を2機使ってサービスを展開する。風に強く、安定した飛行を特長とし、着陸地点の画像を認識することで、正確な着陸を実現した。いざというときは人力での制御に切り替えることも可能だ。今後は、動作が止まったときにパラシュートを開くようにするといった改良も考えている」(同社 新サービス開発室 PMO課 課長 向井秀明氏)

photo 着陸地点の画像(Rの文字)を認識することで、安定した着陸が行える。ただし、1回の充電(約2時間)で10分ももたない点は課題といえるだろう

 フライトコントローラー(オートパイロットシステム)は、3月に同社が出資した千葉大学発ベンチャーの「自律制御システム研究所(ACSL)」が主に開発している。風が吹いたときの姿勢安定に使う電力を一般的な産業用ドローンよりも高くしているという。バッテリーの消費は激しくなるが、地上に落ちるなどのアクシデントを減らすことを優先した仕様だ。

 また、ゴルフ場内の配送センターに常駐するスタッフが、ドローンの飛行速度や位置情報、バッテリー残量などをタブレットで監視できるシステムも構築。「高度な要求に対して細かな対応ができるのも、国産かつ自前でシステムを開発しているACSLだからこそ」と向井氏。細かい操作が求められる山間部や、風が強い海沿いの町が多い、日本に根差した仕様といえる。

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