富士通とOracle、データベースのクラウドサービスを国内拠点で展開

Oracleのクラウドサービス環境を富士通のデータセンター内に構築し、データベースや人材管理の機能を提供する。

» 2016年07月06日 13時37分 公開
[國谷武史ITmedia]

 富士通と米Oracleは7月6日、新たにクラウド事業で戦略的に提携すると発表した。富士通の国内データセンターにOracleのクラウド環境を構え、2017年3月までのOracle Databaseと人材管理(HCM)のクラウドサービスを国内向けに提供する。

会見する富士通の山本正已会長

 今回の提携は、Oracle Databaseなどを利用している企業システムのオンプレミス環境からクラウド環境への移行を促すのが狙い。企業ではITシステムのクラウド化が徐々に進むものの、セキュリティ面などの制約から業務データなどを海外のデータセンターから提供されるクラウドサービスに展開できないケースが多く、普及の足かせになっている。2社では富士通の国内データセンターをサービス拠点にすることで、クラウド移行を検討している企業ニーズを獲得したい考えだ。

 記者会見した富士通の山本正已会長は、「1年前から今回の提携について話を進めてきた。クラウド時代はベンダー1社でサービスをまかなうのが不可能であり、30年以上にわたるOracleとの関係を昇華させることで、顧客の需要に応えたい」と語った。

衛星中継で登場したOracleのラリー・エリソン会長

 Oracleのラリー・エリソン会長は、米国から衛星中継で記者会見に参加し、「クラウドはOracleの中でも急成長を遂げている分野。富士通との新しい関係に期待している」とコメントした。

 富士通のデータセンターから提供されるOracleのクラウドサービスは、大きく2つの形態を予定する。データベースの「Oracle Cloud Database」については、富士通のクラウドサービス「K5」のオプションメニューとして、富士通が販売からサポートまでのサービスを一括で提供する。K5のユーザー企業はポータルからデータベースのサービスを契約する形だ。もう1つの形態では、Oracleが日本の企業顧客に「Oracle Cloud」のサービスを販売・提供するが、サービス基盤の構築や運用の一部を富士通が手掛ける。

基幹システムのクラウド化ではOracle Databaseがボトルネックの1つとされるが、国内向けクラウドサービスになったことで解消される見通しだという

 富士通 デジタルサービス部門長兼最高技術責任者の香川進吾常務は、「安心・安全なクラウドサービスを柔軟かつスピーディーに利用できるのが特徴。一般的な企業ならシステム運用コストを35%削減でき、その分を新規事業などの戦略的な投資に充当できるようになるだろう」と説明した。

 HCMサービスについては富士通が国内販売を手掛けると同時に、自社でも導入を計画。富士通グループ内での適用を通じて得たノウハウを外部企業への販売に活用する。

 また、K5は2015年12月のサービス開始から6カ月で約1000件の商談があり、同サービスを利用して稼働するシステムは180ほど。山本会長はK5の利用がまだ少ない状況にあるとの見方を示した。

 富士通は今回の提携により、関連サービスを含め2017年からの3年間で500億円の売り上げを見込んでいる。

提携の第一弾サービスはDatabaseとHCMから。エリソン会長によれば、北米市場でHCMのクラウドサービスがよく売れていることから、日本でもこれを皮切りにSaaS展開を拡充していくという

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