第27回 ガンダムの「ミノフスキー粒子」がもたらす世界とサイバーセキュリティの共通点日本型セキュリティの現実と理想(1/3 ページ)

以前に「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツから「セキュリティ戦略」を解説して好評をいただいたが、再びガンダムの世界観を支える「ミノフスキー粒子」を題材に現状を説明してみたい。一見、全く関係のないガンダムとセキュリティだが、現実の世界とは異次元のサイバー空間の攻撃の本質を理解する一助になれば幸いである。

» 2016年07月21日 08時00分 公開
[武田一城ITmedia]

人型ロボット兵器の欠点

 ロボットアニメにおける常識のほとんどは、基本的にファンタジーの世界でしか通用しない。例えば、よく登場する人型ロボットは、そもそもその形状が戦闘には向いていない。陸上戦闘では銃砲やレーザー、ミサイルなどの兵器が主力であり、現代の常識なら、兵器は戦車のような地面に這う形状になる。なぜなら、遠方から発射される飛び道具型の兵器に被弾する割合は、投影面積に比例するからだ。

 また、戦車のような縦深型の形状は装甲を厚くしやすいのに対し、人型では難しい。よほど装甲の材質が違わない限り、人型は圧倒的に不利である。二足歩行というスタイルも、スピード面で、ひどく不利だ。「機動戦士ガンダム」におけるモビルスーツのスピードは、決して速くはない。「ザク」や「グフ」は全速力で走っても時速100キロに満たず、日本の「10式戦車」が70キロであることを考えると、「ザク」や「グフ」の移動性能は、現代の戦車とそう大きくは変わらない。

 「ドム」は浮上して移動できるため、地上を走るより高速だ。しかし、それでも最高時速は280キロに過ぎず、東海道新幹線のN700A型の285キロにも及ばない。無重力かつ抵抗の少ない宇宙空間での物体の移動スピードは、音速などでは済まないだろう。単純に比較できないが、少なくとも宇宙も飛翔するモビルスーツは、スピードに恵まれているとはいえない。

 決定的なのは、1台当たりのコストだ。人型ロボットは、どうみても戦車のような形状より手足の動きや関節などの稼働部品点数が多い。共通部品化やユニット化、その他の技術革新を考えても、人型ロボットの製造コストは桁違いに高いと予想でき、同じ重量の戦車などの方がはるかにお安いだろう。

人型ロボット兵器の不利な点

 このように、人型のロボット兵器は“男の夢”だが、現実的に兵器としてはひどく不利だ。ただし現代も「宇宙世紀」の世界も、大規模な戦争においては、国家の経済力で争うことに変わりはないだろうから、その中で人型ロボット兵器の不利な点は隠しようがない。

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