業務要件を洗い出す方法は自社管理方式と同じですが、追加して自社の業務のどの範囲までをアウトソースするか、という線引きをする必要はあります。アウトソースの部分をあまりにも増やしてはコストが上がるだけですし、中途半端では結果的に自社管理の場合と変わらない手間になってしまうこともあります。
また、アウトソース先となるマネージドサービスプロバイダーの特徴にも左右されるため、「どこまで」行うかという範囲を次の観点で整理し、委託先について「何が強みか」という点を合わせて比較検討することが必要です。
「どのレベルまで」という点は、「どこまで標準化したいか」という内容に関連しますので、これは自社管理と同様です。最も重視すべきは採用する、ひいてはシステムとして一蓮托生となるMSPの選定です。
中小企業なら得意な業種・業務分野に注目してMSPを選ぶとよいでしょう。これは、自社が所属する業界のベストプラクティスをMSPが把握しているだけでなく、将来のサービス強化や変更、撤退の際、自分たちが利用するサービスが残りやすいかどうか、という経営リスクの判断に使えます。
また、物理的な場所についても、災害対策などを考慮して遠隔地を選ぶケースもありますが、あまりにも遠地だと日々の運用負担が大きくなってしまいます。社員の生活環境を考慮して現実的に利用できる地域、例えば、「公共交通機関で2時間以内」といった目安を決めて選ぶと、選定時間の大幅な節約につながりますので重要です。
大企業では業種・業務知識はもとより、自社内である程度運用できる体制を保有していることが前提となります。そのためMSPを検討する場合は、提供可能なサービスの範囲とその「柔軟性」が最も重要になります。ここで言う「柔軟性」は、「サービスについて取捨選択ができる」「オプションが豊富」という点です。あまりにもカスタマイズしてしまうとむしろ効率が悪くなりますが、大企業に存在する多数のシステムをカバーするには、ある程度のオプションがなければ「帯に短し、たすきに長し」という委託内容になってしまいかねません。
こういった点を考慮した上でMSPを選定後、サービスを取捨選択していきます。とはいえ、この方式の場合に取り得る構成はMSPが提供する構成に限られますので、いったん方針とMSPを決めてしまえば、あとはシステム構成に制約がある分、比較的短期に管理方式が確定していくでしょう。
次回は、企業規模の観点からユーザー企業がどうMSPへアプローチしていくのかについて説明します。
ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。
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