第11回 IT管理者不足なのにデータの管理はだれがするべきかデータで戦う企業のためのIT処方箋(1/2 ページ)

前回までデータ管理の視点から世界のITシステムの環境を解説してきました。ここから「社内を生かす」か「社外を生かす」か、という方針の必要性を挙げましたが、実際のデータ管理はだれが行うべきでしょうか。今回はユーザー企業やシステムの規模を軸に、自社管理とアウトソーシングの適切な選択方法について解説します。

» 2016年07月05日 08時00分 公開
[森本雅之ITmedia]

 システムの規模が小さく、管理するモノが少ない中小企業と、複数のシステムを持ち、ある程度の管理体制を必要とする中堅・大手企業では、それぞれで採れる対策や最適な手法が異なります。具体的な運用方針を策定する前に、日本企業特有のITインフラ管理と、それを取り巻く環境について少し振り返りたいと思います。

ITインフラ管理の限界

 海外、特に米国を中心に、クラウドコンピューティングやIoTの発展と合わせて、実際のビジネスの現場を理解する業務部門の現場担当者自身や、現場に近い位置にITスキルを持つ人材を配置する企業が増えてきました。これまで以上に動的に、かつ、すばやくIT活用を前提とした業務サービスの開発と展開を行うようになっています。

これは「マイクロサービス」と呼ばれます。業界の垣根が低くなり、地域内にとどまらず地域間での競合も一般的になってきた現在において、競争力の維持だけでなく、新しい価値の創造を目的としています。IT技術者であれば、「アジャイル的な開発手法を事業企画や展開に適用した」と説明すると、分かりやすいかもしれません。

 一方、日本国内ではIT人材の不足が盛んに議論されるようになりました。直近の公式データとしては、6月10日に経済産業省が公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果のとりまとめ」(関連リンク)があります。それによれば、2015年時点で既に約17万人が不足しており、2020年には約37万人も不足すると見込まれています。より詳しく見ると、ITベンダーやSIerなどのIT関連企業だけで約13万人(2020年で約30万人)が不足する上に、ユーザー企業でも約4万人(同約7万人)が不足するという結果になっています。日本全体で何らかの対策を取ったとしても、この需給状況はすぐに改善するものではありません。

 以前から、特にユーザー企業内のIT担当部門では人数が基本的に変わらず、増員も現実的に見込めないという声をよく聞きます。そもそもIT業界以外のユーザー企業からすれば、IT部門は自身の事業分野と異なる間接部門になりますから、経営層からすれば、「あまり人員を割きたくない」と考えるでしょう。

 また、新卒一括採用を前提とした日本の企業環境ではIT管理者として募集されることはほとんどなく、その企業で働きたいと思った理系(場合によっては文系)社員がIT部門に配属されることとなります。こうなると本人がその企業に入った理由や目的から外れるだけでなく、その後の他部署への異動も一般に難しくなることから、出世コースから外れてしまうこともIT担当者が十分に増やせない原因の一つとなっています。

 最近ではeコマース企業や大手製造業において海外と同様に、IT担当部門以外の業務部門でIT活用ができる人材を積極的に求めるケースがみられつつありますが、いまだ少数派の状況が続いています。

 このような日本独特の企業IT環境に合わせて、普段であればベンダーやSIer側から新製品の紹介やシステム更改や改善の提案があって、それを受けたユーザー企業内部で検討をするなり外部に任せるなどして対応を行うところなのですが、中小企業向けを中心にSIerも技術者不足で回り切れていないように見受けられます。

 つまるところ、現在でもユーザー企業のIT担当者にとって非常に厳しい状況ではありますが、この状況は少なくとも短期では改善されず、より深刻になりつつあると言えます。とはいえシステムの更新や増強はビジネス上必要です。

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