クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証するWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年08月15日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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サービス全体ではIBMがAWSを抑えてシェアトップ

 企業向けクラウドサービスベンダーの勢力図の前に、まず市場の推移を見ておこう。図2は、総務省が先頃公表した「平成28年度版 情報通信白書」に記されていた米調査会社IHS Technologyによる「世界のクラウドサービス市場の売上高推移」である。IHSによると、2015年で931億ドルだったのが、2019年には2420億ドルに拡大すると予測。その内訳であるIaaS、PaaS、CaaS(Cloud as a Service)、SaaSとも大きくなると見ている。

Photo 図2 世界のクラウドサービス市場の売上高推移(出典:平成28年度版 情報通信白書)

 この中でCaaSはあまり耳慣れない言葉だが、情報通信白書によると「クラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型のサービス」のことだという。また、IaaSだけを見ると、先述したIDCの数値と違いがあるが、これは恐らく、IHSの調査データにはホステッドプライベートクラウドサービスなども含まれているからだろう。いずれにしてもIHSでも2019年には2015年の2.6倍に市場が大きく膨れ上がると予測している。

 そして、図3が図2と同じく情報通信白書に記されていたIHSによる「世界のクラウドサービス市場におけるベンダー上位20社の市場シェア(2015年)」である。これがつまりは、現時点での企業向けクラウドサービスベンダーの勢力図といえるだろう。

Photo 図3 世界のクラウドサービス市場におけるベンダー上位20社の市場シェア(2015年)(出典:平成28年度版 情報通信白書)

 ちなみにIHSのリポートでSaaS市場だけのシェアを見ると、米IBMが19%で他を大きくリードし、米Salesforce.comが8%、Microsoftが6%、米Oracleが3%、独SAPが2%で続いている。一方、IaaS市場だけのシェアでは、AWSが17%、Microsoftが9%、米Googleが5%となっている。ただ、先述したようにSaaSがクラウドサービス市場の5割を占めていることから、全体では図3のような結果となっている。

 この勢力図に今後大きな変化があるとすれば、既にオンプレミスで確固たる実績を持つOracleとSAPがPaaSやSaaSのシェアを伸ばし、上位に食い込んでくる可能性が高いことだ。ただ、現状を見て最も印象強いのは、やはり「IBMはしたたか」ということだ。

 もう1つ現状を見て印象強いのは、IBMをはじめとして米国ベンダーの市場独占ぶりである。IHSによると、2015年では上位5位までに位置する米国ベンダーで市場の約35%を占めており、市場全体で見てもおおよそ半分が米国勢で、「今後も引き続き米国ベンダーが主導するだろう」としている。

 なんとか日本のベンダーにも奮起してもらいたいところである。とりわけ図1に名を連ねている富士通とNTTコミュニケーションズには、両社とも自ら世界市場に積極的に打って出ることを明言しているだけに、図3で上位に食い込むためのチャレンジを果敢に行ってもらいたい。

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