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» 2016年09月24日 08時00分 UPDATE

顔認識技術のダークサイド (1/3)

顔認証は便利でいいことづく目のように思いがちですが、もちろんリスクもあります。これは顔認証だけに限りませんが、顔認証には具体的にどんな“ダークサイド”があるのでしょうか?

[Kaspersky Daily]

この記事はカスペルスキーが運営するブログ「Kaspersky Daily」からの転載です。一部編集しています。


 名前なら改名したり偽名を使ったりできます。SNSアカウントなら編集や削除が可能です。しかし、顔はそう簡単に変えられません。顔認識技術は多くの問題の解決に役立ちますが、同時に新しい問題を数多く作り出します。今回の記事では、顔認識システムの世界的な普及に伴う脅威について考察します。

1.世界規模でプライバシー権が失われていく

 FBIは民事訴訟、刑事訴訟で訴えられた人や有罪判決を受けた人の写真を格納するデータベース、Next Generation Identification-Interstate Photo System(NGI-IPS)の保有を公的に認めています。これ自体に問題はなさそうです。

 ところが、全くそうではないのです。5月に米国会計検査院がFBIに対して監査を実施したところ、4億1200万人分のデータベースに、捜査対象になったことがない人々の写真が含まれていることが判明しました(英語資料PDF)。FBIには、顔認識技術を担当する独立部門、Facial Analysis, Comparison, and Evaluation(FACE) Servicesまで設置されています(リンク先は英語記事)。

 その後、FBIが一部の州と取り決めを交わして、運転免許証、パスポートやビザの申請書の写真、犯罪容疑者や有罪判決を受けた人々の画像を入手していたことが判明しました。さらに、外国籍の人々の写真もデータベースに含まれていたことがわかっており、その数およそ1億人分と考えられています。

 FBIは捜査の過程で、顔認識技術を積極的に活用しています。こうしたアプローチがどのように実を結んでいるかについては、当ブログでも取り上げました。しかし、状況はもっと複雑です。顔認識は開発されてから日が浅く、完璧な技術とは言えません。FBIのシステムも例外ではなく、人種に関する偏りがあり、精度は良い時で80%〜85%程度です(リンク先はいずれも英語記事)。それでいてFBIは、プライバシー影響評価の要件に反して、顔認識技術を広範囲に使用していることを意図的に隠していました(英語記事)。

 他方で注目に値するのは、モスクワ市議会とロシア法執行当局が、顔認識関連技術の最新情報を収集し、FaceN技術(FaceNの開発者は、写真を使って第三者を検索できるサービスFindFaceのコードの提供元でもある)の導入準備を進めていることです。これらの新システムは、モスクワ市内の膨大な数の監視カメラに接続されることになります。

 ロシアのニュースサイトMeduzaは、「世界のどの都市にも、これに似たシステムはない。このシステムのアルゴリズムでは、通行人の顔と犯罪者データベースを照らし合わせることができるが、それだけではない。モスクワのどこであれ、個人を検知してその顔画像とSNSアカウントを照合することができる。SNSアカウントには、大量の個人情報が含まれているのが普通だ」と報じています(ロシア語記事)。

 また、2016年の初め、ロシア上院がロシアの裁判所に対して写真や動画を法的証拠と見なすよう命じたことも目を向けるべきでしょう。それ以前は、証拠と見なすかどうかは裁判所の裁量に任されていました。

2.法執行機関による濫用

 顔認識では間違いが起こります。このシステムを使う側の人々が濫用することも、よく知られた事実です。例えば8月に、New York Timesが報じたところによると(英語記事)、サンディエゴ警察が有罪の人と無罪の人の顔画像を本人の許可なく収集していました。

 サンディエゴ在住の27歳のアフリカ系米国人、アーロン・ハーヴェイ(Aaron Harvey)氏は、警察に差別的な扱いを受けたと主張しました。ハーヴェイ氏が住んでいるのはサンディエゴ市内でも特に治安の悪いエリアです。おそらくそのことが理由で、警察に50回以上も呼び止められ、ギャングの一味との疑いがあると言われました。ハーヴェイ氏が写真撮影を拒否すると、警察官は拒否しようがしまいが写真を撮影できると自慢気に言ったといいます。

 「警察官は『合法であれ非合法であれ、写真を撮る』と言って、私を車から引きずり出しました」とハーヴェイ氏は事件の様子をNew York Timesに語っています。

 それより前の2013年にも、ボストンの当局が顔認識システムをテストしたことがありました(英語記事)。そのシステムは、コンサートなどの屋外イベントの開催時に人々の顔を隠し撮りする監視カメラに接続されていました。テスト期間の終了後、倫理上の理由でプロジェクトは取りやめになりました。しかしボストンのプロジェクトと、顔認識の世界的な普及は全く別の話です。顔認識システムは今や広く政府機関で使用されるようになっています。

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