便利と安全の両立にどう挑む? 東急リバブルやDeNAが語るモバイル活用とセキュリティ対策の最新事情ITmedia エンタープライズ ソリューションセミナー レポート(1/4 ページ)

企業・組織のスマートデバイス導入では、メールチェックなどから業務システムを使う高度活用ニーズが高まる一方、同時に高まるセキュリティリスクへの対策が大きな課題だ。モバイル活用の先進企業における取り組みや課題解決の最新動向が紹介された。

» 2016年10月12日 08時00分 公開

 いまや多くの企業・組織がスマートフォンやタブレット端末を導入している。しかし、その利用実態はメールやスケジュールチェックといった平易なケースが中心だ。モバイルを業務の効率化や生産性の向上へつなげるには、クラウドサービスや業務システムへのアクセスといった高度な利用が不可欠になってくる。その際には、セキュリティリスクの高まりも懸念される。

 ITmedia エンタープライズ編集部は9月27日、モバイルの高度活用で必須となるセキュリティ対策をテーマにセミナーを開催した。モバイル普及の黎明期から高度活用を進めてきた東急リバブルとディー・エヌ・エーの取り組みと、モバイルのセキュリティ対策を支える最新ソリューションが多数紹介された。

複雑化するモバイル利用に「端末にデータを残さない」対策

基調講演に登壇した東急リバブル 経営管理本部 IT推進部長の島村誠一氏

 基調講演では、東急リバブル 経営管理本部 IT推進部長の島村誠一氏が、モバイル活用の経緯とセキュリティ対策の取り組みについて紹介した。同社のモバイル活用は、2010年に約50台のiPhoneを試験導入して始まり、2016年9月1日時点では約2300台のiPhoneと約2450台のiPadを営業担当者や管理職らに展開している。

 導入当初の目的は、顧客対応の迅速化や情報提供の強化、若手営業担当者のスキルアップにあった。島村氏によれば、例えば不動産仲介などの問い合わせは約7割がインターネット経由で寄せられ、対応の遅れが機会損失につながりかねない。動画やeラーニングがモバイル端末から利用できるようになり、顧客へより充実した情報を提供したり、外出中の営業担当者が空き時間に学習したりといったことが可能になった。

 現在では、全国の店舗で提供する住宅ローンの事前審査申し込みサービスにもiPadを利用。また、iPhoneでの内線通話によるコスト削減や仮想デスクトップ基盤(VDI)の導入による多様な働き方の実現など、より高度なモバイルの活用を推進している状況だ。

 こうした中でセキュリティ対策は、「端末にデータを残さない」ことを前提に取り組んでいるという。例えば、ローン事前審査の申し込みサービスではデータを暗号化し、iPad側に情報を保存しないなどの対策を各所で実施。VDIでも端末はサーバ上のデスクトップ環境を表示するだけで、端末内にはデータが残さないようにしている。

 端末の管理はMDMで行い、パスコード設定や社内システム利用時におけるVPN接続を必須としている。社外システムにデータ保管が可能なアプリやSNS、個人のメールなどが利用できるアプリを禁止対象として、定期的に監視している。

 また、技術的な対策と併せて重視するのが“人の対策”だ。社員のリテラシーを高める研修などを継続的に実施し、ガイドラインやマニュアルも整備している。機種変更ではIT部門によるキッティングは行わず、社員がこうした資料を利用しながらMDMへの登録やセキュリティの設定などを自身で行えるようにしているとのこと。既に全社員が一度は機種変更の対応を経験して慣れているといい、IT部門の負荷は軽減しつつあるようだ。

 島村氏は、端末にデータを残さないセキュリティ対策とすることで、端末の多様化やBYOD導入といったモバイル活用の幅を広げられる可能性があると語り、より高度な利用につなげるための挑戦を続けていると締めくくった。

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