富士通研究所、会話音声から相手が満足か、不満なのかを特定する技術を開発

「声の明るさ」を定量化して顧客の満足や不満を感じる部分を特定できるという。コールセンターなどの顧客対応の現場において応対の自動評価が可能になるとしている。

» 2016年10月18日 10時00分 公開
[ITmedia]

 富士通研究所は10月17日、音声から会話相手の満足や不満を感じる部分を特定する音声分析技術を開発したと発表した。コールセンターや銀行窓口など顧客対応業務の改善に役立つことが期待されるという。

 顧客対応現場では、これまで音声認識技術を使って顧客との会話音声を文字に変換し、顧客の満足感を把握する取り組みが行われてきたが、同じ言葉でも話し方によって満足と不満のどちらも表現される場合があるなど、顧客の感情を正確に捉えることが困難だった。また、対応者の教育に顧客へのアンケート調査なども活用されてきたが、総合的な評価にとどまり、具体的な改善点などの把握は困難だった。

 技術開発の中で富士通研究所は、一般的に声のトーンが高く、声のトーンや声量が大きく変化する性質があるという「明るい声」に着目し、独自の研究により明るい声には話し始めや話し終わりの声の高さの変化に特有の性質があることが分かったという。そこで、声の高さの平均や変化の分析に加えて、話し始めや話し終わりといった複数の言葉をまたぐ音声データ中の相対的な位置における特有の変化を捉える手法によって、「声の明るさ」を高精度に定量化することに成功したという。

Photo 声の明るさの定量化

 また、声の印象として知覚される「明るさ」と「満足感」には高い相関関係があるため、独自の調査結果に基づく変換式により、声の明るさから会話中の満足感を定量化した。これと応対評価の結果とを合わせ、機械学習を用いて満足や不満の判定しきい値を学習することで、自動的に会話中の満足・不満箇所を特定する技術を開発した。

Photo 本技術の構成

 富士通と富士通エフサスのコールセンター3拠点でこの技術を活用した実証実験を行った結果、応対者のモニタリング評価やその結果のフィードバックなどの教育にかかる期間を約30%効率化できたという。また、評価の客観性が高まることから、評価者と被評価者双方の納得性が向上することも確認されたとしている。

 同技術を活用することで、コールセンターを含むさまざまな顧客接点の現場において、応対スキル向上のための教育を効率化し、顧客満足感の向上につなげることが期待できるという。

Photo 音声分析を活用した応対者教育

 富士通研究所は今後、この技術を音声対話による自動応答サービスなど、富士通のデジタルソリューションやサービスに組み込むことで、顧客が不満と感じた場合の臨機応変な対応や、商品の中で顧客満足感の高い機能の情報を抽出してマーケティング分析に活用するといった取り組みを進めていくとする。2016年度末より、富士通およびエフサスでのコールセンター関連サービスで商品化予定とのこと。

 また、この技術を富士通の人口知能技術「Human Centric AI Zinrai」の「感性メディア処理技術」を強化する技術として利用し、2018年度には銀行窓口や小売り、医療現場、教育現場など、さまざまな現場での活用に向けて製品化を目指すとしている。

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