こうした複雑なWindows 10のサポート ライフサイクルによるWaaSは難解であり、その点はMicrosoftも把握しているようだ。できるだけ決まったスケジュールで機能更新プログラムを提供しようと考えている。同社は当初、年3、4回のアップグレードを考えていたが、ユーザーからのフィードバックによって年2回のアップグレードに落ち着いたのだろう。2016年のリリースがWindows 10 Anniversary Updateの1回だけだったのは、年2回のアップグレードを提供する体制に変更するためだったとみられる。
WaaSの別の特徴としては、毎月提供されるセキュリティアップデートが個別にではなく、品質更新プログラムとして1つのアップデートプログラムにまとまった形で提供されている点だ。これは、Windows 10以前のOSでは個々のモジュールとしてセキュリティアップデートが提供され、企業によっては特定のパッチだけをインストールしているからだ。セキュリティアップデートを長く提供していると、OSが細分化してしまう。そこで、セキュリティパッチを“一つの塊”として提供することにより、OSが細分化してしまうのを抑止するのが狙いだ。
Windows 10ではこのセキュリティパッチの“一つの塊”が「品質更新プログラム」として提供されるが、Microsoftはこの方法をWindows 7や8.1にも広げていく予定だ。これでWindows 7/8.1も細分化しないようにしていく。
IT管理者にとってWindows 10のWaaSは、アップグレードに伴うテストなどを、これまでより短期間でしなければならなくなる。その頻度も年2回と、以前に比べて信じられないほどの頻度だ。そのためMicrosoftでは、Windows 10におけるアプリケーション互換性を非常に高くし、Windows 7/8.1とデスクトップアプリケーションの99%は動作するようになっている。Webブラウザは、後方互換性を確保するためにInternet Explorer 11がEdgeとは別に用意されている。
さらに、アップグレード時のトラブルを事前に分析できるよう「Windows Upgrade Analytics」というサービスも用意している。このサービスを利用すれば、事前にどのデバイスで問題が起こるのかなどをチェックできる。
また、「Windows Update for Business」(WUB)を使用すれば、社内でアップグレードするマシンの順番をグループピングできる。これによって例えば、トラブルでビジネスに重大な支障が起きかねない経理部門のPCのアップグレードは期間の最後にするといったコントロールが可能になる。
WaaSのコンセプトは、企業にとって分かりにくいかもしれない。しかし、年2回のアップグレードに合わせていくには、WaaSのコンセプトを取り入れ、最新のWindows 10に移行し続けることだ。Windows 10は既存のWin32 APIを変更しないよう開発され、アプリケーションの高い互換性を実現しているから、ある程度はMicrosoftを信じていくしかない。もしWindows 10をテストするなら、やはり移行期間中にテストすることになるだろう。そのために、WUBでアップグレードのスケジュールをコントロールできるようになっている。
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