もちろん、ベンダー側が誤解のない説明をするよう努めるのも大切ですが、提案の際に自社製品の利点や特徴を強調するのは自然なことも言えます。それをうのみにすることなく、マニュアルの種類やトレーニング内容、コンサルティングサービスの有無などを確認することで、実際にその製品を駆使できるようになるためには、どのような取り組みが必要か十分確認するのがよいと思います。
ベンダー選定の際も、製品で実現できることだけではなく、ユーザーがソフトウェアの価値を最大限引き出すための施策や体制が充実しているかに注目するとよいでしょう。
ユーザー企業の社内で「当たり前」とされているルールがベンダーに共有されておらず、認識違いを招くケースも見逃せません。例えば商用環境でのリリース作業の場合、以下のようなものがあります。あなたの会社ではどうでしょうか。
「え、これって当たり前じゃないの?」と思われた方は要注意。あなたの会社では当たり前のルールであっても、世の中全ての会社がそうしているわけではないからです。反対に、「それはさすがに当たり前だと思わないだろう」と思われた方も、略語や用語など、社内のみで通じる言葉を、社外のベンダーに使っているかもしれません。
ベンダー側も、分からないことや曖昧な言葉は確認すると思いますが、暗黙的に社内に存在するルールを知るのは難しい。リリース直前に例に挙げたような話が出て「それは想定していません」となるわけです。同スキルの作業者が倍必要になれば人件費も倍になりますし、追加の書類を作成するには、人手も時間もかかります。
特にベンダーが外資系の場合、契約書(見積仕様書)に記載した実施内容以外のことは原則契約範囲外ですし、追加費用の請求も想定されます。「外資系の会社は契約書に書いてないことはやってくれないのか」と思われるかもしれませんが、契約書に書かれていない作業をしないことより、本来計画していたことができずに、プロジェクトの進行に影響が出ることの方が大きな問題です。
そうならないためにも、商用環境での作業に必要な前提をあらかじめ明文化し、ベンダーと共有することが必要です。商用環境での作業だけでなく、用語や作法といった社内のルールは、誰も教えてくれない(当たり前のように使っている)こともあるかと思います。社内向けの業務割合が多い方は特に、メディアや社外の人など、外の世界の情報に触れて、社内を客観的に見る目を養うとよいでしょう。
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